著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

トウモロコシの一部を置き換える飼料を探る

豚の飼料では、消化しやすく栄養価が安定したトウモロコシが主なエネルギー源です。一方で、トウモロコシは家畜の飼料、人の食料、工業原料として需要が重なっており、地域で手に入る代替飼料への関心が高まっています。

研究チームが注目したのは、甘味種のソルガム(モロコシ)であるスイートソルガムです。成長が速く、糖分が多く、乾燥や塩分にも強い作物です。穂を付けたまま植物体全体を刻み、乳酸菌などを加えて密封・発酵させた「丸ごとサイレージ」にすると、一年中使える保存飼料になります。このサイレージはトウモロコシに比べて水分や繊維が多く、繊維の一部は小腸で消化されずに大腸側で腸内細菌の発酵に使われます。

そこで著者らは、体重の大きい肥育後期の豚で、飼料中のトウモロコシの一部をこのサイレージに置き換えた場合に、成長、枝肉(食肉として処理した体)、肉質、小腸の形、盲腸の細菌の構成がどう変わるかを調べました。なお論文は、この実験が腸や細菌の変化が肉質に影響する仕組みを検証するように設計されたものではないと明記しています。

どのような実験をしたか

実験には、開始時の平均体重が約132kgの肥育豚72頭(去勢雄と雌が半数ずつ)を用い、6頭ずつ12の豚房に分けました。半数の豚房にはトウモロコシ主体の通常飼料を与えました。残り半数には、給与時の重量で飼料全体の20%をスイートソルガムの丸ごとサイレージとし、その分だけトウモロコシの配合割合を20ポイント減らした飼料を与えました。7日間の慣らし期間の後、30日間、自由に食べられる条件で飼育しました。

成長の成績は豚房ごとに、1日あたりの増体量、1日あたりの採食量、1kg増えるのに必要な飼料量(飼料要求率)で評価しました。試験の終わりには各豚房から1頭ずつ選び、背中の脂肪の厚さ、ロース芯(背中の主要な筋肉の断面)の面積、霜降りの評価点、肉の酸性度(pH)や色、肉から出る水分の量(ドリップロス)、うま味に関わる成分として知られるイノシン酸、アミノ酸組成を測りました。あわせて、小腸の中ほど(空腸)の組織を顕微鏡で観察し、栄養を吸収する突起である絨毛の高さなどを測定し、盲腸の内容物の細菌を遺伝子解析で調べました。

また、サイレージにする前後の成分を比べたところ、乾物あたりで脂質は増え、繊維(中性デタージェント繊維)と灰分は減ったと報告されています。

主な結果:成長は低下し、肉と腸に変化

サイレージを含む飼料を与えた豚では、通常飼料の豚に比べて1日あたりの増体量と採食量が減り、飼料要求率は高くなりました。つまり、成長と飼料効率はこの試験条件では低下しました。

一方で、枝肉では背脂肪が薄くなり、ロース芯の面積と霜降りの評価点が高くなりました。肉質では、ロース(胸最長筋)で死後24時間のpHと赤みが高まり、48時間のドリップロスが減りました。ヒレ(大腰筋)でも48時間のドリップロスが減り、たんぱく質の割合が増えました。さらに両方の筋肉でイノシン酸と、グルタミン酸・アスパラギン酸・チロシンの濃度が高くなりました。ただし論文は、これは肉の化学組成の変化であり、風味やうま味が向上したことを示すものではないと述べています。測ったアミノ酸は分解処理後の総量で、味に直接関わる遊離アミノ酸や官能評価は調べていないためです。

小腸では、絨毛が高くなり、絨毛の高さと根元のくぼみ(陰窩)の深さの比も大きくなりましたが、陰窩の深さ自体は変わりませんでした。著者らはこれを腸の形の適応と位置づけ、吸収やバリア機能が良くなった証拠ではないとしています。盲腸の細菌では、種類の豊かさや群集全体の構成に統計的な差は見られませんでした。探索的な解析では、飼料によって相対的な量が異なる細菌グループが17見つかりましたが、論文はこれを仮説づくりのための手がかりと位置づけています。

この研究が示すこと

この研究は、肥育後期の豚でトウモロコシの一部をスイートソルガムの丸ごとサイレージに置き換えた飼料が、成長の低下と同時に、背脂肪や霜降り、ドリップロス、筋肉の成分、小腸の形、一部の盲腸細菌の変化と結びついていたことを報告しています。

ただし、二つの飼料は水分、エネルギー、たんぱく質などがそろえられていなかったため、結果はサイレージそのものの効果ではなく、飼料全体の違いへの反応として示されています。腸の変化が肉に影響するという経路も、論文では検証されていない仮説とされています。代替飼料の利用を考えるうえで、成長と肉や腸の特徴が別々の方向に変わりうることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Shaoyang Shi(College of Biosystems Engineering and Food Science, Zhejiang University; Key Laboratory of Efficient Utilization of Non-Grain Feed Resources (Co-construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Animal Science and Technology, Shandong Agricultural University)、Jiandong Wei(Qingdao Huanshan Biotechnology Co., Ltd., Qingdao, China)、Yonggang Zhang(Qingdao Huanshan Biotechnology Co., Ltd., Qingdao, China)、Xuejun Yuan(College of Life Sciences, Shandong Agricultural University)、Xianglan Shang(Jiangji Town Animal Husbandry Station, Ningyang, Shandong, China)、Xiao Li(Zhongcheng Feed Technology Co., Ltd., Feicheng, China)、Huajie Zhou(Zhongcheng Feed Technology Co., Ltd., Feicheng, China)、Yanping Jiang(Zhongcheng Feed Technology Co., Ltd., Feicheng, China)、Weiren Yang(Key Laboratory of Efficient Utilization of Non-Grain Feed Resources (Co-construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Animal Science and Technology, Shandong Agricultural University)、Min Zhou(College of Agricultural Science and Technology, Shandong Agriculture and Engineering University; Key Laboratory of Efficient Utilization of Non-Grain Feed Resources (Co-construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Animal Science and Technology, Shandong Agricultural University)、Shuzhen Jiang(Key Laboratory of Efficient Utilization of Non-Grain Feed Resources (Co-construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Animal Science and Technology, Shandong Agricultural University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shaoyang Shi, Jiandong Wei, Yonggang Zhang, et al. Dietary whole sweet sorghum silage alters jejunal morphology, selected cecal bacterial taxa, and meat quality in heavy finishing pigs. Frontiers in Microbiology 2026-10-14. DOI: 10.3389/fmicb.2026.1971504. 原著ライセンス:CC BY.