著者の所属・活動拠点の国は、インド、アメリカです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の背景と目的

ハムやソーセージなどの食肉加工品には、色を整え、品質を保ち、ボツリヌス菌による毒素の産生を抑える目的で亜硝酸ナトリウムが使われています。一方で、加工肉中の亜硝酸塩はさまざまながんとの関連が指摘されてきました。また、加工や保存の過程で発がん性のあるニトロソ化合物ができる原因になることも知られています。論文は、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が加工肉を「発がん性がある」グループに分類していることや、欧州連合が加工肉への添加上限を150ppmと定めていることも紹介しています。

消費者の間では、合成添加物を使わない「クリーンラベル」食品や「亜硝酸塩不使用」表示を求める声も高まっています。こうした背景から、インドなどの研究チームは、植物由来の素材を組み合わせた配合物を開発しました。そして、これが亜硝酸ナトリウムの代わりにどこまで働くかを、鶏肉ソーセージで確かめました。

配合物の作り方と調べたこと

研究チームは、ローゼル(ハイビスカスの一種)の花の粉末、モリンガの花の粉末、シナモン精油を混ぜ合わせ、三通りの比率を比べました。抗菌作用が最も高い組み合わせのうち、風味の面で好ましいシナモン精油の少ない比率(重量比5.5対4対0.5)を選び、以後の実験に用いました。この配合物は酸性(pH約3.3)で、配合物自体からは亜硝酸塩が検出されませんでした。

続いて、試験管内でいくつかの性質を調べました。まず、物質の酸化を防ぐ力(抗酸化作用)を測りました。次に、食中毒の原因となる代表的な細菌への抗菌作用を調べ、ボツリヌス菌の仲間に対する作用も代わりの菌を使って確かめました。熱や酸に対する安定性も評価しました。安全性の面では、羊の赤血球を壊さないか、サルの腎臓由来の培養細胞に毒性を示さないか、腸内の乳酸菌の増殖を妨げないかを検討しました。

最後に、5種類の鶏肉ソーセージを作り、4℃前後で20日間冷蔵保存しながら品質を比べました。内訳は、亜硝酸ナトリウムも配合物も加えないもの、従来どおり亜硝酸ナトリウムを150ppm加えたもの、亜硝酸ナトリウムを75ppmに減らして配合物を0.25%加えたもの、50ppmに減らして0.5%加えたもの、亜硝酸ナトリウムを使わず配合物を1%加えたものです。脂質の酸化の程度、残留する亜硝酸塩の量、加工肉特有の赤い色素の量、硬さ、微生物の数、10人の評価者による色・風味・食感・ジューシーさ・総合的な好ましさを調べました。

主な結果

論文によると、選ばれた配合物は優れた抗酸化作用と、ボツリヌス菌の仲間を含む幅広い細菌への抗菌作用を示しました。抗菌作用は37℃・70℃・100℃の加熱後やpH2〜6の酸性条件でも保たれ、冷蔵で30日間安定していました。赤血球や培養細胞への毒性は見られず、腸内の乳酸菌への悪影響もないか、ごくわずかだったと報告されています。

ソーセージの保存試験では、配合物を加えたすべての区で、20日目の脂質の酸化の指標が、亜硝酸ナトリウム150ppmの区より低く抑えられました。残留亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウムを減らした区で従来の区より有意に少なく、亜硝酸ナトリウムを使わなかった区では検出されませんでした。

一方で、加工肉らしい赤い色を生む色素の量は亜硝酸ナトリウムの量に応じて減りました。亜硝酸ナトリウムを使わず配合物だけを加えた区では、何も加えない区と同程度でした。官能評価でも、配合物は全体としてソーセージの好ましさを損ないませんでしたが、配合物だけを1%加えた区では通常と異なる色が見られました。

研究が示すこと

著者らは、亜硝酸ナトリウムの一部(150ppmのうち75〜100ppm分)をこの植物由来の配合物に置き換えても、ソーセージの品質、安全性、保存性が保たれたとまとめています。亜硝酸ナトリウムを完全になくすと色の面で課題が残る一方、量を減らしたうえで植物素材を組み合わせれば、合成添加物を減らした食肉加工品づくりに役立つ可能性がある。この研究はそのことを示しています。

原著論文の著者・所属:Annada Das(Department of Livestock Products Technology, Faculty of Veterinary and Animal Sciences, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, 37 Belgachia Road, Kolkata 700037, West Bengal, India)、Subhasish Biswas(Department of Livestock Products Technology, Faculty of Veterinary and Animal Sciences, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, 37 Belgachia Road, Kolkata 700037, West Bengal, India)、Kaushik Satyaprakash(Faculty of Veterinary and Animal Sciences, Banaras Hindu University, Rajiv Gandhi South Campus, Mirzapur 231001, Uttar Pradesh, India)、Dipanwita Bhattacharya(Faculty of Veterinary and Animal Sciences, Banaras Hindu University, Rajiv Gandhi South Campus, Mirzapur 231001, Uttar Pradesh, India)、Pramod K. Nanda(Eastern Regional Station, Indian Council of Agricultural Research-Indian Veterinary Research Institute, 37 Belgachia Road, Kolkata 700037, West Bengal, India)、Gopal Patra(Department of Livestock Products Technology, Faculty of Veterinary and Animal Sciences, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, 37 Belgachia Road, Kolkata 700037, West Bengal, India)、Arun K. Bhunia(Molecular Food Microbiology Laboratory, Department of Food Science, Purdue University, West Lafayette, IN 47907, USA)、Arun K. Das(Eastern Regional Station, Indian Council of Agricultural Research-Indian Veterinary Research Institute, 37 Belgachia Road, Kolkata 700037, West Bengal, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Annada Das, Subhasish Biswas, Kaushik Satyaprakash, et al. An Innovative Blend of Cinnamon Essential Oil, Roselle, and Moringa Flower Powders as a Natural Alternative to Sodium Nitrite in Chicken Sausage Processing. Foods 2026-09-27. DOI: 10.3390/foods15193450. 原著ライセンス:CC BY.