著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Results in Engineering
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
砂糖づくりでは、砂糖を取り出したあとに副産物が残ります。たとえば、砂糖を結晶させたあとに残る濃い液体である糖蜜、サトウキビを搾ったあとの繊維質の搾りかすであるバガス、蒸留のあとに残る廃液であるビナスです。こうした副産物を価値ある製品やエネルギーに変える仕組みは「バイオリファイナリー」と呼ばれます。資源を一方向に使う生産から、より資源を効率よく使う砂糖生産へ移るうえで、こうした活用が検討されています。
ただし、副産物を活用すれば環境面で必ず得になるとは限りません。ある影響は減っても、別の影響が増える可能性があります。研究チームは、副産物の活用が複数の環境影響の項目にわたって、全体として環境上の利益をもたらすかを評価することを目的としました。
何をどのように調べたか
著者らは、製品のライフサイクルにわたって生じる環境への影響を数量的に見積もる「ライフサイクルアセスメント(LCA)」を用いました。今回採用したのは「帰結的LCA」と呼ばれる方法です。これは、ある選択によって環境影響がどう変わるかを評価する考え方です。今回のモデルでは、副産物から作られた製品が他の製品の代わりになる効果も評価に含めています。
評価の基準は砂糖1トンの生産とし、そのための原料として約7692キログラムのサトウキビを想定しました。そのうえで、副産物を活用しない従来型の砂糖生産(Sc-0)と、糖蜜・バガス・ビナスの活用にもとづく6通りのバイオリファイナリーの構成を比べました。
環境影響の評価にはReCiPeという評価枠組みを使いました。人の健康、生態系の質、資源の利用といった大きな被害の項目と、より細かな複数の影響項目を検討しています。さらに、入力する値のばらつきを考慮して何度も計算を繰り返す「モンテカルロ解析」を行い、結果がどの程度安定しているかを確かめました。
主な結果
各項目の影響を重み付けして合計した総合的な環境影響は、従来型の砂糖生産(Sc-0)が167ポイントでした。これに対し、Sc-1はマイナス157ポイントで、最も低い値となりました。一方、Sc-2は187ポイントで、最も高い値でした。
モンテカルロ解析では、Sc-1とSc-3は、検討した不確かさの範囲全体で環境上の正味の利益を保ちました。これに対してSc-5とSc-6の結果は、付加価値製品の量の変動に左右されやすいことが示されました。
論文は、今回のモデルの前提のもとでは、天然ガスをバガス由来の燃料に置き換えることで環境面の成績が大きく改善しうると報告しています。一方、糖蜜から酵母を作る経路では、毒性に関わる一部の項目で、ある影響が減る代わりに別の影響が増える「トレードオフ」が見られました。
研究が示すこと
著者らは、副産物を活用した場合の環境上の効果は、何を何で置き換えるか、どのような活用経路を選ぶかによって変わると結論づけています。副産物の活用を一律に良いものとみなすのではなく、経路ごとに複数の環境影響を比べて判断する必要があることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Majid Khanali(Department of Agricultural Machinery Engineering, Faculty of Agricultural Engineering and Technology, University of Tehran, Karaj, Iran)、Mahdy Bamdad(Department of Agricultural Machinery Engineering, Faculty of Agricultural Engineering and Technology, University of Tehran, Karaj, Iran)、Mohammad Chenari(Department of Agricultural Machinery Engineering, Faculty of Agricultural Engineering and Technology, University of Tehran, Karaj, Iran)、Mohammad Sharifi(Department of Agricultural Machinery Engineering, Faculty of Agricultural Engineering and Technology, University of Tehran, Karaj, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Majid Khanali, Mahdy Bamdad, Mohammad Chenari, et al. Towards sustainable biorefining: Assessing the environmental impacts of sugarcane-based multi-product systems. Results in Engineering 2026-10-16. DOI: 10.1016/j.rineng.2026.113605. 原著ライセンス:CC BY.