著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリア、イギリスです。

掲載誌:Meat Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

牛は胃の中で飼料を発酵させる過程でメタンを出します。メタンは温室効果ガスのひとつで、畜産からの排出をどう抑えるかが課題になっています。また、店頭に並ぶ牛肉は時間とともに脂質やたんぱく質が酸化し、品質が落ちていきます。

研究チームは、サトウキビから得られるポリフェノール(植物に含まれる抗酸化性の成分群)を飼料に加えることで、放牧で育てるアンガス種の去勢牛のメタン排出量と、肉の酸化のしにくさや品質がどう変わるかを調べました。ここでの紹介は、論文の抄録に書かれた内容に基づいています。

どのように調べたか

生後6か月、体重およそ220キロの去勢牛24頭を2つのグループに分け、32週間飼育しました。一方の対照グループにはマメ科の牧草であるルーサン(アルファルファ)のペレットを与え、もう一方には同じペレットに市販のサトウキビ由来ポリフェノール抽出物を飼料の乾物量の0.25%分加えて与えました。飼育期間を通じて、メタン排出量や体重の増え方などの生産成績を記録しました。

と畜後は、ロースの一部にあたる腰最長筋と、ヒレにあたる大腰筋の2種類の部位をラップで包装し、店頭での陳列を想定して7日間置きました。そのうえで、肉の色、かたさ(切るのに必要な力)、水分を保つ力、脂質とたんぱく質の酸化の度合い、抗酸化能力などを測定しました。

主な結果

著者らによると、1日あたりのメタン排出量は、対照グループの110グラムに対し、ポリフェノールを加えたグループでは72.5グラムで、34.4%少なくなっていました。一方で、1日あたりの体重増加、枝肉の重さ、ロース芯の面積、最終的な肉のpHには、グループ間で違いが見られませんでした。

肉の品質では、ポリフェノールを与えたグループで脂質の酸化が抑えられ、その差は陳列期間が進むにつれて大きくなったと報告されています。2つの部位のいずれでも抗酸化能力が高まりました。また、加熱調理で失われる水分(クッキングロス)が両部位で少なくなり、包装中に肉からしみ出す肉汁(ドリップ)も減って、水分を保つ力が改善していました。肉の色とかたさには差がありませんでした。

この研究が示すこと

研究チームは、サトウキビ由来ポリフェノールを飼料に加えることで、体重増加や枝肉の重さに差が出ないまま、メタン排出を減らしつつ牛肉の酸化のしにくさと水分を保つ力を高められたと結論づけています。環境への負荷と食肉の品質という二つの面に、同じ飼料添加物が関わりうることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Jamal Nasir(School of Agriculture, Food and Ecosystem Sciences, Faculty of Science, The University of Melbourne, Parkville, Victoria 3010, Australia)、Frank R. Dunshea(School of Agriculture, Food and Ecosystem Sciences, Faculty of Science, The University of Melbourne, Parkville, Victoria 3010, Australia; School of Biology, Faculty of Biological Science, The University of Leeds, Leeds LS2 9JT, United Kingdom)、Robyn D. Warner(School of Agriculture, Food and Ecosystem Sciences, Faculty of Science, The University of Melbourne, Parkville, Victoria 3010, Australia)、David McGill(School of Health, Medical and Applied Sciences, Central Queensland University, Brisbane, Australia)、Pragna Prathap(School of Agriculture, Food and Ecosystem Sciences, Faculty of Science, The University of Melbourne, Parkville, Victoria 3010, Australia)、Matthew Flavel(Department of Microbiology, Anatomy and Physiology, La Trobe University, Bundoora, Melbourne, VIC 3086, Australia)、Surinder S. Chauhan(School of Agriculture, Food and Ecosystem Sciences, Faculty of Science, The University of Melbourne, Parkville, Victoria 3010, Australia. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jamal Nasir, Frank R. Dunshea, Robyn D. Warner, et al. Polyphenol-rich sugarcane extract reduces methane emissions and improves oxidative stability and meat quality in pasture-fed Angus cattle. Meat Science 2026-09-26. DOI: 10.1016/j.meatsci.2026.110229. 原著ライセンス:CC BY.