著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肥満は世界的な健康課題で、論文によると2021年には25歳以上の成人のおよそ21億1千万人が過体重または肥満でした。研究チームは、体脂肪が増えていく前の段階にどのような代謝の特徴があるかを知ることが、肥満が進む仕組みの理解につながると考えました。
注目したのは血液中の脂肪酸の構成です。血液中の脂肪酸は、食事に加えて、体内での脂肪酸の合成や変換、脂肪組織からの放出なども反映します。これまでの研究では、血液中の脂肪酸と「現在の」肥満度との関連は示されてきました。しかし、肥満そのものが脂肪酸の構成を変える可能性もあり、どちらが先かははっきりしませんでした。また、将来の体重変化を調べた研究は、一部の多価不飽和脂肪酸と欧米の集団に偏っていました。
そこで著者らは、中国の成人を対象に、主要な脂肪酸グループが血液中に占める割合と、その後のBMI(体格指数)の増加との関連を調べました。BMIの初期値を考慮した上で分析し、現在の肥満度との関連とも比べています。
何を調べたか
研究には、中国の大規模な追跡研究「China Kadoorie Biobank」のデータが使われました。この研究では、2004〜2008年に中国の10地域(農村5、都市5)で30〜79歳の成人51万人余りが登録されました。その後、生存している参加者からおよそ5%が無作為に選ばれ、再調査を受けています。
今回の分析の対象は1498人です。登録時の血液サンプルをNMR(核磁気共鳴)という方法で分析したデータがあり、かつ2013〜2014年の2回目の再調査に参加した人たちです。追跡期間はおよそ8年でした。
血液中の脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、ω-6脂肪酸、ω-3脂肪酸といった大きなグループごとに、全体に占める割合として扱われました。MUFAにはオレイン酸などが、ω-6にはリノール酸やアラキドン酸などが含まれます。主な評価項目は、追跡期間中にBMIが5%以上増えたかどうかです。腹部の脂肪の目安となる腹囲の増加は、補足の分析として調べられました。
主な結果
登録時の血液中でMUFAの割合が高い人ほど、その後BMIが5%以上増えるリスクが低いという関連が見られました。一方、ω-6の割合が高い人ほど、そのリスクが高いという関連が見られました。参加者を割合の高さで4群に分けた分析でも、同じ傾向が支持されました。登録時に糖尿病、心臓病、脳卒中、がんがあった人を除いた分析でも、関連は保たれていました。
脂肪酸の構成のうち1ポイント分をω-6からMUFAに置き換えた場合を想定する分析も行われ、BMIの過度な増加のリスクの低さと関連していました。ただし著者らは、これは血液中の構成の違いを比べたものであり、食事で摂る脂肪を置き換えた場合の効果を示すものではないと述べています。
興味深いのは、登録時点の肥満度との関連が逆向きだったことです。MUFAの割合が高い人ほど、登録時に過体重や肥満である割合が高くなっていました(1標準偏差あたりの有病率比1.361)。ω-6の割合が高い人ほど、その割合は低くなっていました(同0.776)。
一方で、腹囲の増加については、個々の脂肪酸グループと統計的に有意な関連は見られませんでした。またω-6の結果は、BMI増加の基準を3%や10%に変えたり、BMIを連続値として分析したりすると、事前に定めた基準を満たしませんでした。このようにω-6の結果は、評価方法によるばらつきが比較的大きいものでした。
研究から分かること
この研究は、血液中の脂肪酸の構成が「今の肥満度」と示す関連と、「その後の体格の変化」と示す関連が、必ずしも同じ向きではないことを示しました。現在の肥満度との関連だけを見ていると、時間的な前後関係を見誤るおそれがあることがうかがえます。
ただし著者らは、示された関連は大きくなく、因果関係を示すものではないと述べています。脂肪酸の測定は空腹時ではない血液で1回だけ行われ、詳しい食事内容も把握できていません。そのため、関連が食事によるものか、体内での脂肪酸の代謝によるものかは、この研究からは区別できないとしています。
原著論文の著者・所属:Haozhi Niu(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Menghan Wang(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Sihong Wei(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Guoqing Ma(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Huiying Wang(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Hongkai Xu(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Yu Wang(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)、Xin Liu(Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China; Key Laboratory for Disease Prevention and Control and Health Promotion of Shaanxi Province, Key Laboratory of Environment and Genes Related to Diseases of Ministry of Education of China, Xi’an Jiaotong University, Xi’an 710061, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haozhi Niu, Menghan Wang, Sihong Wei, et al. Circulating Fatty Acid Composition and Subsequent Adiposity Gain: A Prospective Study in the China Kadoorie Biobank. Nutrients 2026-10-16. DOI: 10.3390/nu18203401. 原著ライセンス:CC BY.