著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:International Journal of Paediatric Dentistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
母乳育児は2歳かそれ以降まで続けることが推奨されています。一方で、乳児期を過ぎてからの授乳が、幼い子どものむし歯(早期小児う蝕)と関係するかどうかは、はっきりしていませんでした。論文によると、その理由の一つは、これまでの研究で、むし歯に影響しうる他の要因(交絡因子)の考慮の仕方がまちまちだったことです。もう一つは、すでにむし歯がある子どもでは授乳の状況が変わるといった、原因と結果が逆向きの関係(逆因果)を区別しにくかったことです。
そこで研究チームは、生後18か月の時点で母乳を続けていたかどうかが、3歳時のむし歯と関連するかを調べました。
調べ方
研究チームは、日本の乳幼児健診のデータ(2014〜2019年)にもとづくコホートを分析しました。コホート研究とは、同じ子どもたちを時間を追って観察する研究方法です。
分析には、ある条件のもとで結果が起こる見込みを比べる「オッズ比」という指標が使われました。その際、性別、甘いジュースを日常的に飲む習慣、1日1時間を超える画面視聴、保護者による仕上げみがき、ひとり親世帯、保護者の就労状況といった生活習慣や家庭環境の違いを考慮しています。さらに、逆因果の影響を確かめるため、18か月の時点ですでにむし歯があったかどうかを考慮する追加の分析も行われました。
主な結果
対象となった6万9165人のうち、1万2788人(18.5%)が18か月の時点で母乳を続けていました。3歳時にむし歯があった子どもの割合は、母乳を続けていた子どもで35.9%、そうでない子どもで23.7%でした。重度のむし歯がある子どもの割合も、それぞれ19.2%と10.5%で、母乳を続けていた子どものほうが高くなっていました。
生活習慣や家庭環境の要因を考慮した後も、母乳の継続はむし歯との関連を示しました。オッズ比は、むし歯があることについて1.89、重度のむし歯について2.14と報告されています。18か月時点のむし歯の有無を考慮しても、関連は残りました。この場合のオッズ比は、むし歯について1.74、重度のむし歯について1.87でした。
研究が示すこと
著者らは、18か月時点の母乳継続は、他の要因とは独立して、3歳時にむし歯がある見込みの高さと関連していたと結論づけています。また、この関連は逆因果だけでは説明できなかったとしています。なお、この研究が示しているのは関連であり、授乳がむし歯を引き起こすと直接確かめたものではありません。
そのうえで著者らは、乳児期を過ぎてからの母乳育児の支援に、口の健康についての助言を組み込むことを提案しています。助言の例として挙げられているのは、授乳しながら寝かしつけるのを避けることや、授乳後に口の中をきれいにすることです。母乳育児を続ける家庭にとって、口の健康への配慮もあわせて考えることの大切さを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Toshifumi Yodoshi(Division of Gastroenterology, Hepatology and Nutrition Cincinnati Children's Hospital Medical Center Cincinnati Ohio USA; Division of Gastroenterology, Hepatology, Pancreatology, and Nutrition University of Iowa Stead Family Children's Hospital Iowa City Iowa USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Toshifumi Yodoshi. Prolonged Breastfeeding at 18 Months and Early Childhood Caries at Age 3 Years: A Population‐Based Cohort Study From Japan. International Journal of Paediatric Dentistry 2026-10-13. DOI: 10.1111/ipd.70158. 原著ライセンス:CC BY.