著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Kesehatan Siliwangi
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
末期の慢性腎臓病では、自宅などで腹部に透析液を出し入れして血液中の老廃物を除く「連続携行式腹膜透析(CAPD)」が行われることがあります。著者らによると、この治療では透析液の排出とともにたんぱく質やアミノ酸が失われるため、体のたんぱく質とエネルギーが消耗していく「たんぱく質・エネルギー消耗(PEW)」と呼ばれる状態に陥りやすいとされます。
さらに、吐き気や胃の不調で食事がとれない場合や、ナトリウムやカリウムが不足している場合には、栄養管理が一層難しくなります。必要な栄養は多いのに、胃腸が受けつけられる量には限りがあるという板挟みが生じるためです。
この論文は、ステージ5の慢性腎臓病でCAPDを受けていた38歳の女性患者1人を対象とした症例報告です。患者は消化不良(ディスペプシア)、低ナトリウム血症、低カリウム血症、貧血を併せ持っていました。研究チームは、栄養ケアの手順と用語を体系化した国際的な枠組み「栄養ケアプロセス用語(NCPT)」の2023年版に基づく栄養管理を、この患者にどのように実施したかを記述することを目的としています。
患者の状態と栄養計画
患者は2週間ほど強い吐き気で飲食ができず、入院しました。栄養スクリーニングでは栄養不良のリスクありと判定され、入院前の食事調査では、エネルギー摂取量は必要量の41%、たんぱく質は61.8%にとどまっていました。血液検査では、ヘモグロビン8.8 g/dL の貧血、ナトリウム128 mmol/L、カリウム2.34 mmol/L といった電解質の不足が確認されています。
研究チームは、軟らかい食事を1日5回(主食3回と間食2回)に分けて少量ずつ出す方法をとりました。胃の負担を抑えながら食べられる量を確保するための工夫です。
計画の特徴として著者らが挙げるのが、透析液に含まれるブドウ糖から体に吸収されるエネルギー、いわゆる「隠れたカロリー」の計算です。この患者が使っていた透析液の条件から、透析液由来のエネルギーを1日244.8 kcal と見積もり、必要エネルギー1,708 kcal からこれを差し引いて、食事から摂る目標を1日1,463.2 kcal に設定しました。著者らは、これを高血糖のリスクを避けるための調整と位置づけています。たんぱく質は体重1 kg あたり1.2 g(1日約58.6 g)を目標とし、ナトリウムやカリウムの目標量も設定して、医学的な補充と組み合わせました。
3日間の経過
入院中の3日間の介入で、1日のエネルギー摂取量は平均1,410.9 kcal となり、目標の96%に達したと報告されています。たんぱく質は平均54.3 g で、目標の約92.6%でした。吐き気は日ごとに和らぎ、だるさ、めまい、息苦しさなどの訴えも3日目までに軽くなったとされています。
血液検査では、ナトリウムが128 mmol/L から132.7 mmol/L へ、カリウムが2.34 mmol/L から2.54 mmol/L へと上がりました。塩化物も87.3 mmol/L から101.3 mmol/L まで回復したと報告されています。この間、血圧などの生命徴候は安定しており、体液の過剰も見られなかったとのことです。上腕の周囲長は期間を通じて変わりませんでしたが、著者らは、3日という短期間では筋肉や脂肪の量の変化は現れにくいと説明しています。
一方で、脂質の摂取は目標の約54%にとどまり、炭水化物は目標の約111%に増えていました。著者らはこれを、吐き気を避けるために患者が油っぽい食事を控え、胃にやさしい炭水化物で不足分を補った適応的な反応と解釈しています。そのうえで、短期の急性期管理としては許容範囲だったと述べています。
報告が示すこと
著者らは、胃腸が受けつけられる量に合わせて個別に調整した栄養管理が、この患者の状態の安定と栄養不良の連鎖を断つうえで重要だったと結論づけています。具体的には、少量頻回の食事と、透析液由来のカロリーを考慮した目標設定の二つを挙げています。
これは1人の患者を3日間観察した症例の報告です。複数の合併症が重なり、腎臓病の食事制限だけでは対応しきれない場面で、患者の受け入れ能力に合わせて栄養計画を組み立てた具体例を示している点に、この報告の意味があります。
原著論文の著者・所属:Nyono Dedi Prabowo(Universitas Negeri Medan, Sumatera Utara)、Mutiara Azzahra(Universitas Negeri Medan, Sumatera Utara)、Meintansari Manik(Universitas Negeri Medan, Sumatera Utara)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nyono Dedi Prabowo, Mutiara Azzahra, Meintansari Manik Nutrition Care Process Report: A Case of Chronic Kidney Disease on CAPD with Gastrointestinal and Electrolyte Complications. Jurnal Kesehatan Siliwangi 2026-08-31. DOI: 10.34011/jks.v7i1.4528. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。