著者の所属・活動拠点の国は、メキシコ、フランスです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

慢性腎臓病では、食事のたんぱく質を減らすと腎機能の低下が緩やかになり、透析が必要になる時期を遅らせられることが、多くの臨床試験で示されてきました。糖尿病ではない患者向けの診療ガイドラインでは、たんぱく質をかなり減らした食事に、必須アミノ酸に対応する「ケトアナログ」と呼ばれる成分などを混ぜた補助剤を組み合わせる方法が勧められています。

一方、糖尿病の患者を対象にした研究は結果が一致していませんでした。研究デザインがそろっていないことや、栄養状態や代謝が崩れるおそれがあることから、十分な検証が進んでいなかったと著者らは述べています。2型糖尿病の患者は、末期腎不全に至る患者のなかでも特に大きな集団で、持病を多く抱えやすい人たちでもあります。

そこで研究チームは、2型糖尿病と慢性腎臓病をもつ患者を対象に、低たんぱく食だけの場合と、低たんぱく食にケトアナログ製剤を加えた場合を比べました。腎機能の低下を遅らせられるか、そして栄養状態を損なわずに行えるかを確かめることが目的です。

どのように調べたか

試験はメキシコ社会保障機構の複数の病院で行われました。対象は、腎機能がステージ3bから4(中等度から高度に低下した段階)の成人の2型糖尿病患者です。参加者はくじ引きにあたる方法で2つのグループに分けられました。どちらの治療を受けているかは、患者にも医療者にも分かる形で進められました。

両グループとも、たんぱく質の摂取量を体重1キログラムあたり1日0.6グラムに設定し、なるべく植物性のたんぱく質でとるよう指導されました。エネルギー量や塩分、リン、カリウムなども細かく設定されています。片方のグループには、さらにケトアナログ製剤が体重5キログラムあたり1日1錠処方され、1日3回に分けて服用しました。食事の指導は腎臓病の食事療法の訓練を受けた4人の栄養士が担当し、調理の講習会も開かれました。

主に見たのは、腎機能が1年でどれだけ下がるかです。腎機能は、腎臓が血液をろ過する力を推定した値「推算糸球体ろ過量(eGFR)」で評価しました。この値は血液中のクレアチニンという物質から計算する方法と、シスタチンCというたんぱく質から計算する方法の2通りで求めました。前者は実際より高め、後者は低めに出ることがあるため、両方で評価したと説明されています。あわせて、尿たんぱく、栄養状態、有害事象、入院、死亡なども調べました。

主な結果

1年間の追跡を終えたのは122人で、ケトアナログ併用グループが69人、低たんぱく食のみのグループが53人でした。尿の成分から推定したたんぱく質の摂取量は、両グループとも指示された量に近い値でした。錠剤の服用率は95%を超えており、食事も薬もよく守られていたと報告されています。

シスタチンCに基づく腎機能は、両グループとも時間とともに低下しました。ただし、開始時からの低下幅はケトアナログ併用グループのほうが統計的に有意に小さく、12か月時点で併用グループが毎分約4.3ミリリットル、低たんぱく食のみのグループが約8.5ミリリットルの低下でした。一方、クレアチニンに基づく腎機能は両グループともわずかに上昇し、グループ間に差は見られませんでした。尿たんぱくは、併用グループでは減りましたが、低たんぱく食のみのグループでは減りませんでした。

著者らは、2つの指標で結果が分かれた理由を検討しています。併用グループでは尿へのクレアチニンの排出が減っていました。ケトアナログ成分がクレアチニンと同じ運び手を使うために排出に影響した可能性などを挙げつつ、はっきりした説明はまだないとしています。

栄養状態は、どちらのグループでも悪化しませんでした。体重、筋肉量の目安、握力、血液中のアルブミンなどは変わらず、血糖の指標やコレステロールの値は両グループとも改善しました。有害事象、入院、脱落、死亡の数にもグループ間で有意な差はありませんでした。低血糖は併用グループで、消化器の症状は低たんぱく食のみのグループで、それぞれやや多い傾向がありました。

この研究が示すこと

研究チームは、たんぱく質の摂取量が同じ条件でも、ケトアナログ製剤を加えるとシスタチンCで評価した腎機能の低下が緩やかになったと結論づけています。この食事療法は患者によく受け入れられ、栄養状態や代謝の管理を損なわなかったとも報告しています。

一方で、参加者は比較的少なく、追跡期間は1年に限られていました。また、クレアチニンで評価した場合には差が見られませんでした。著者らは、より厳密な設計と長い追跡による確認や、クレアチニンの体内での動きの詳しい分析が必要だとしています。糖尿病をもつ腎臓病患者でも、この食事療法の効果と安全性を検討できる手がかりを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Ramón Paniagua(Unidad de Investigación Médica en Enfermedades Nefrológicas, UMAE Hospital de Especialidades, Centro Médico Nacional Siglo XXI, Instituto Mexicano del Seguro Social, Ciudad de México 06720, Mexico)、Marcela Ávila-Díaz(Unidad de Investigación Médica en Enfermedades Nefrológicas, UMAE Hospital de Especialidades, Centro Médico Nacional Siglo XXI, Instituto Mexicano del Seguro Social, Ciudad de México 06720, Mexico)、Julia Nava(Centro de Atención Nutricional Fresenius Kabi, Ciudad de México 11590, Mexico)、Renata Romero-Salas(Unidad de Investigación Médica en Enfermedades Nefrológicas, UMAE Hospital de Especialidades, Centro Médico Nacional Siglo XXI, Instituto Mexicano del Seguro Social, Ciudad de México 06720, Mexico)、Juan Carlos H Hernández-Rivera(Unidad de Investigación Médica en Enfermedades Nefrológicas, UMAE Hospital de Especialidades, Centro Médico Nacional Siglo XXI, Instituto Mexicano del Seguro Social, Ciudad de México 06720, Mexico)、Oliva Mejía-Rodríguez(Hospital General de Zona N° 83, Instituto Mexicano del Seguro Social, Morelia 58070, Mexico)、Giorgina B Picolli(Néphrologie, Centre Hospitalier Le Mans, 194 Avenue Rubillard, 72037 Le Mans, France)、Mexican Nephrology Collaborative Study Group

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ramón Paniagua, Marcela Ávila-Díaz, Julia Nava, et al. Low-Protein Diet Supplemented with Ketoanalogues and Progression of Chronic Kidney Disease in Diabetic Patients: A Multicenter Randomized Controlled Trial. Nutrients 2026-08-12. DOI: 10.3390/nu18162630. 原著ライセンス:CC BY.