著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Nutrire

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

慢性腎臓病(CKD)では、病気の進行を緩やかにし、透析などの腎代替療法の開始を遅らせるために、たんぱく質の摂取量を調整する食事が広く勧められてきました。一方で、たんぱく質が不足すると、腎臓病に特徴的な慢性の炎症とも重なって栄養状態が悪化し、筋肉量や身体機能の低下につながるおそれがあると指摘されています。そのため、すべての患者に一律にたんぱく質制限を勧めることの是非が議論されています。

研究チームによると、これまでの観察研究では、身体機能と入院などの不利な結果との関係は、食事の摂取状況とは切り離して調べられてきました。そこで著者らは、たんぱく質摂取量と身体機能を組み合わせて評価し、それが透析を受けていないCKD患者の予定外の入院(非待機的入院)と関連するかを検討しました。研究チームの仮説は、たんぱく質摂取量が体重1kgあたり1日0.6g未満または0.8g超で、かつ身体機能が低下している場合に、予定外の入院の可能性が高まるというものでした。

どのように調べたか

研究はブラジルの2つの腎臓内科外来で行われ、透析を受けていないステージ3b〜5のCKD患者(18〜80歳)を約12か月間追跡する前向きコホート研究のデータを、別の問いに用いた二次解析です。最終的に169人が解析対象となりました。入院は診察と診療記録の確認によって把握され、予定外のあらゆる入院が対象とされました。

身体機能は、4.6mを普段どおりに歩く速さ(歩行速度)と、利き手の握力で評価しました。歩行速度が秒速0.8m以下、または握力が基準値(男性27kgf未満、女性16kgf未満)を下回る場合のいずれかに当てはまれば、身体機能が低下していると判定しています。食事内容は、日を変えて3回、前日に食べたものを聞き取る「24時間思い出し法」で調べ、普段の摂取量を推定しました。

そのうえで、たんぱく質摂取量を3段階(体重1kgあたり1日0.8g超、0.6〜0.8g、0.6g未満)に分け、身体機能が保たれているか低下しているかと組み合わせて6つのグループを作りました。たんぱく質摂取量が0.8g超で身体機能が保たれているグループを基準として、他のグループで入院の起こりやすさが異なるかを、年齢や糖尿病、心血管疾患、栄養状態などを考慮した統計手法で比較しました。

主な結果

参加者の年齢の中央値は65歳で、多くがステージ3bまたは4でした。追跡期間中に27.2%(46人)が予定外の入院をしました。入院した人では、主観的包括的栄養評価(問診と身体診察を組み合わせて栄養状態を判定する方法)で低栄養と判定された人の割合が高く、糖尿病との関連も報告されています。

食事については、たんぱく質摂取量の中央値が体重1kgあたり1日0.90gで、56.8%が0.8gを超えていました。その一方で、約8割の人はエネルギー摂取量が推奨量(体重1kgあたり1日25kcal)を下回っていました。身体機能の低下は、歩行速度で38%、握力で31%の人に見られました。

しかし、仮説とは異なり、たんぱく質摂取量と身体機能を組み合わせたどのグループでも、予定外の入院との統計的に意味のある関連は認められませんでした。著者らは、たんぱく質摂取量も身体機能も、単独でも組み合わせても入院と関連しなかったと述べています。

この研究が示すこと

著者らは結果の解釈にあたり、いくつかの限界を挙げています。12か月という追跡期間は入院の発生を捉えるには短い可能性があること、6グループに分けたことで各グループの人数が少なくなり、本当の差を見逃した可能性があること、食事の聞き取りには記憶の誤りが入りうること、以前に受けた栄養指導の情報を解析に含められなかったことなどです。また、結果は今回調べた患者集団の状況を反映したもので、そのまま他の集団に当てはめるべきではないとしています。

この研究では、たんぱく質摂取量と身体機能の組み合わせから予定外の入院を予測することはできませんでした。それでも著者らは、病期だけでなく、たんぱく質摂取量と身体機能を同時に捉えて患者を層別化するという視点そのものに新しさがあると位置づけています。

著者:Mariana Ferreira dos Santos(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Internal Medicine Department, Medical School São Paulo State University (UNESP) Botucatu Brazil)、Hellen Christina Neves Rodrigues(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Amanda Goulart de Oliveira Sousa(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Letycia Netto de Paula Cunha(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Internal Medicine Department, Medical School São Paulo State University (UNESP) Botucatu Brazil)、Samara Vieira de Oliveira(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Vitória Rodrigues Morais Preto(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Ester Manuella de Moraes Zacarias(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Camila Moura Batista Ferro(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)、Nara Aline Costa(https://ror.org/0039d5757 grid.411195.9 0000 0001 2192 5801 Faculty of Nutrition Federal University of Goias (UFG) 227 Street, Blook 68, s/n, Setor Leste Universitário 74605080 Goiânia Goiás Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mariana Ferreira dos Santos, Hellen Christina Neves Rodrigues, Amanda Goulart de Oliveira Sousa, et al. Combined analysis of protein intake and functional capacity in non-elective hospitalization in patients with non-dialysis chronic kidney disease. Nutrire 2026-10-13. DOI: 10.1186/s41110-026-00538-4. 原著ライセンス:CC BY.