著者の所属・活動拠点の国は、パキスタンです。
掲載誌:Pakistan Journal of Botany
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
薬用植物は栄養素や、体に働きかける可能性のある成分の供給源として利用されてきました。著者らは、こうした植物を安全に使うには、有効そうな成分だけでなく、土壌から取り込まれる金属の量も確かめる必要があると述べています。
研究チームは、パキスタン・パンジャブ州のナマル渓谷に自生する2種の植物、カラルマ・ツベルクラタ(Caralluma tuberculata)とアスパラガス・ラセモサス(Asparagus racemosus)を取り上げました。どちらも野菜として食べられ、伝統的な薬としても使われてきた植物です。研究チームはこの2種について、栄養成分、植物由来の成分、抗酸化作用と抗菌作用、金属の蓄積量、それに伴う健康リスクの目安をまとめて調べ、比較しました。
何をどう調べたか
2024年11月、渓谷内の2地点(リキとナマル村)で、それぞれの種から植物体全体を3検体ずつ採取しました。合計12検体です。乾燥させて粉末にしたうえで、水分、たんぱく質、脂質、繊維、灰分(燃やした後に残るミネラル分)、炭水化物の割合を測りました。
金属は亜鉛、マンガン、銅の3種類を植物と土壌の両方で測定しました。さらに、一定の摂取量を想定して金属の1日推定摂取量を計算しました。想定は、1日0.5グラムを年90日、20年間、体重60キログラムの成人が摂る場合です。この摂取量を基準量と比べた危険度の指標も算出しています。
メタノールで抽出した成分については、次の3点を調べました。抗酸化作用と関係の深いポリフェノールとフラボノイドの総量。試験管内で不安定な分子(ラジカル)をどれだけ消去できるかを見る抗酸化試験。大腸菌と黄色ブドウ球菌に対する抗菌試験です。抗菌試験では、抽出物をしみ込ませた紙の円盤の周りで細菌が育たない範囲の広さと、菌の増殖を止める最小濃度を調べ、抗生物質シプロフロキサシンと比較しました。最後に、多くの測定項目の関係を統計的にまとめて分析しました。
主な結果
栄養成分は2種で大きく異なりました。アスパラガス・ラセモサスは、たんぱく質(最大22.15%)、脂質(最大13.54%)、繊維(最大42.37%)が多い結果でした。カラルマ・ツベルクラタは炭水化物(最大48.78%)と灰分(最大14.19%)が多い結果でした。統計解析では、種の違いに加えて採取地点の違いも多くの成分に影響していました。
植物中の金属濃度は、亜鉛が1キログラムあたり34.49〜55.64ミリグラム、マンガンが17.29〜42.19ミリグラム、銅が11.63〜36.05ミリグラムでした。いずれも許容基準の範囲内と報告されています。想定した摂取条件のもとで計算したリスク指標も低い値でした。ただし著者らは、子ども、妊婦、腎機能が低下した人などには、より慎重な摂取の目安が必要だとしています。
ポリフェノール量とフラボノイド量は、どちらもアスパラガス・ラセモサスのほうが多い結果でした。最も多かったのはナマル村の検体です。抗酸化試験でラジカルを消去した割合は31.55〜73.01%でした。最も高かったのはナマル村のアスパラガス・ラセモサスで、比較に用いた没食子酸(94.02%)よりは低い値でした。
抗菌試験でも、アスパラガス・ラセモサスのほうが強い作用を示しました。ナマル村の検体は、大腸菌と黄色ブドウ球菌の両方で最も大きな阻止範囲を示しています。一方、カラルマ・ツベルクラタの作用は弱めでした。どちらの植物もシプロフロキサシンの効果には全体として及びませんでした。
統計解析では、ポリフェノールとフラボノイドが多い試料ほど、抗酸化作用と抗菌作用が強い傾向が見られました。著者らはこの関連から、これらの成分が作用に寄与している可能性があると述べています。複数の項目をまとめた解析でも、2種ははっきり異なるグループに分かれ、採取地点による違いも認められました。
研究が示すこと
今回の結果から著者らは、調べた2種の植物は金属の量と健康リスクの点で薬用植物の基準を満たしていると結論づけています。あわせて、有望な成分組成と生物活性を示したとしています。また、同じ地域の植物でも、種と採取地点によって栄養や成分、作用が大きく変わることも示されました。
著者らは、これらの植物が天然由来の治療素材を開発するうえで候補になり得ること、そして貴重な伝統的薬用資源として保全が必要であることを指摘しています。なお、抗酸化作用と抗菌作用は試験管内での測定結果です。
著者:Humaira Shaheen(Department of Botany , University of Sargodha , Sargodha , Pakistan)、Kafeel Ahmad(Department of Botany , Baba Guru Nanak University , Nankana Sahib 39100 , Pakistan)、Zafar Iqbal Khan(Department of Botany, University of Sargodha, Sargodha, Pakistan)、Muhammad Adeel Ghafar(Department of Botany , Baba Guru Nanak University , Nankana Sahib 39100 , Pakistan)、Muhammad Nadeem(Institute of Food Science and Nutrition , University of Sargodha , Sargodha , Pakistan)、Muhammad Naeem Qaisar(College of Pharmacy , University of Sargodha , Sargodha , Pakistan)、Hazoor Ahmad Shad(Department of Chemistry , Govt Postgraduate Science College , Samanabad , Faisalabad , Pakistan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Humaira Shaheen, Kafeel Ahmad, Zafar Iqbal Khan, et al. Comparative evaluation of nutritional and phytochemical composition, antioxidant and antibacterial potential and metal safety of Caralluma tuberculata and Asparagus racemosus from Namal valley, Punjab, Pakistan: a multivariate analysis. Pakistan Journal of Botany 2026-10-13. DOI: 10.30848/pjb2027-3(9). 原著ライセンス:CC BY.