著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
活性乾燥酵母は、牛など反すう動物の飼料に加える添加物として広く使われています。これまでの研究では、酵母を与えると乳量が増えた、飼料の消化率が高まった、ルーメン(牛の第一胃)の発酵が変化したといった報告があります。一方で、製品が違うと効果が異なる例や、同じ酵母でも添加量によって結果が変わる例も報告されています。
そこで研究チームは、新しい活性乾燥酵母製品(Actisaf Sc48、論文ではADY IIと表記)と従来の活性乾燥酵母(RF7、ADY Iと表記)を比べることにしました。対象は泌乳中のホルスタイン牛で、乳量と乳成分、飼料の消化率、ルーメン内の発酵の状態への影響を調べています。あわせて、ADY IIの添加量を変えると効果が変わるかどうかも検討しました。
調べた方法
試験は2022年3月から6月まで、中国・合肥市の酪農場で行われました。分娩後およそ67日の健康な泌乳牛100頭を使い、4つの群に分けています。酵母を加えない対照群、ADY Iを1頭1日5g与える群、ADY IIを5g与える群、ADY IIを10g与える群です。試験期間中の牛舎は、暑熱ストレスの目安となる温湿度指数が低い水準に保たれていました。
研究チームは、乳量、乳脂肪・乳タンパク質・乳糖などの乳成分、乳に含まれる脂肪酸の組成、乾物摂取量(水分を除いた飼料の摂取量)を測りました。さらに、ふんの分析から各栄養素の見かけの消化率を求め、ルーメン液から揮発性脂肪酸(微生物が飼料を発酵させてできる、牛の主要なエネルギー源)の濃度などを測りました。試験の最終日には血液検査も行っています。
主な結果
ADY IIを1日10g与えた群では、乳量が対照群より5.76%、ADY I群より4.76%多くなりました。論文によると、対照群との差は1日あたり乳量で2.47kg、乾物摂取量で1.86kgでした。乾物摂取量は、酵母を与えた3群のすべてで対照群より多くなりました。ただし、群による差の大きさは時期によって変わっていました。乳糖の濃度はADY II 10g群がADY I群より高くなりましたが、乳脂肪や乳タンパク質の濃度には群間で差がありませんでした。
乳に含まれる脂肪酸を見ると、ADY IIを与えた2つの群では、パルミチン酸やオレイン酸、リノール酸などの多くの脂肪酸の濃度が、対照群やADY I群より低くなっていました。消化率については、ADY II 10g群でタンパク質の見かけの消化率が高まりました。一方、繊維や脂肪の消化率には差がありませんでした。
ルーメンでは、ADY IIを与えた2群で揮発性脂肪酸の総濃度が対照群より4割あまり高くなりました。代表的な揮発性脂肪酸である酢酸の濃度も同様に高くなっています。ルーメンのpH、アンモニア態窒素、微生物が作るタンパク質の量には差がありませんでした。血液検査では、ADY II群の白血球数と顆粒球数がADY I群より少なくなりましたが、対照群との間に有意な差はありませんでした。
研究から分かること
今回の試験条件では、ADY IIを1頭1日10g与えた場合に乳量とタンパク質の消化率が高まりました。同じADY IIでも5gでは、摂取量やルーメンの揮発性脂肪酸は増えたものの、乳量は対照群と比べて有意には増えませんでした。この結果は、酵母添加物の効果が製品や添加量によって異なりうることを示しています。
一方で、著者らは限界も挙げています。ADY Iは5gしか試していないため、10gで2製品を直接比べることができず、違いを酵母の株の特性によるものと断定することはできません。また、血液は試験の最後に一度だけ採取したため、試験前と比べた変化は評価できていません。乳脂肪酸が減った仕組みや、タンパク質の消化率が高まった仕組みも、まだ明らかになっていないとされています。
原著論文の著者・所属:Jean Bosco Nzeyimana(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Yapeng Hu(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Maocheng Jiang(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Dian Wang(National Center of Technology Innovation for Dairy, Hohhot 010010, China)、Sijia Liu(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Zhao Zhuo(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Caiyun Fan(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Jianbo Cheng(Animal Nutrition and Feed Research Center, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China; College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jean Bosco Nzeyimana, Yapeng Hu, Maocheng Jiang, et al. Effects of Dietary Active Dry Yeast Supplementation on Lactation Performance and Rumen Fermentation in Holstein Cows. Animals 2026-09-28. DOI: 10.3390/ani16193049. 原著ライセンス:CC BY.