著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Metabolites
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:南アフリカ産ハチミツの品質と性質をまとめて評価する
ハチミツには、植物に由来するポリフェノール類(フェノール酸やフラボノイドなど)、酵素、有機酸などが含まれています。これらの成分の量や種類は、蜜源となる植物、産地、気候、保管の仕方などによって大きく変わり、品質や性質にも影響します。また、ミツバチの細菌性の病気に抗生物質が不適切に使われると、ハチミツに残留する恐れがあり、食品の安全性の点で監視が重要とされています。
著者らは、南アフリカ産ハチミツについて、品質・安全性・成分・生物活性をまとめて調べた研究が不足していると指摘しています。そこで、南アフリカ産のハチミツ試料について、品質の指標、残留物の有無、含まれる成分、試験管内での抗酸化作用や酵素を抑える働きを一つの枠組みで評価しました。
何を調べたか
研究で扱ったのは、5月にプレトリア(試料1)とヨハネスブルグ(試料2)で入手した2つのハチミツです。養蜂家の情報から、どちらも複数の花の蜜に由来する「百花蜜」とされました。試料は加工せず、光を遮った密閉容器に入れて4℃で保管し、分析に用いました。
品質の指標としては、水分、pH、電気伝導度、遊離酸度、糖の組成、プロリン(ハチミツの熟成度や本物らしさの目安となるアミノ酸)、ジアスターゼ活性(加熱や鮮度の目安となる酵素の働き)、HMF(加熱や劣化の目安となる物質)などを測定しました。安全性については、保管時の防虫剤に由来しうるナフタレンと、92種類の抗生物質の残留を調べました。
さらに、質量分析を用いてポリフェノール類などの成分を詳しく分析しました。抗酸化作用は、不安定な分子(ラジカル)を消去する力や、金属イオンを還元する力を測る複数の試験で評価しました。加えて、神経の情報伝達物質を分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼ)と、糖の分解に関わる酵素(α-グリコシダーゼ)を、ハチミツの抽出液がどの程度抑えるかを試験管内で調べました。
主な結果
論文によると、水分、pH、電気伝導度、HMF、ジアスターゼ活性は国際的な食品規格(コーデックス)の基準内でした。著者らはこれを、品質が良好で適切に保管され、加熱による傷みが少ないことを示すものと解釈しています。プロリンは試料1で約522 mg/kg、試料2で約760 mg/kgで、目安とされる300 mg/kgを大きく上回りました。糖の組成でもショ糖は少なく、熟成した本物のハチミツであることを裏付ける結果とされています。ナフタレンは検出されず、92種類の抗生物質もすべて定量できる下限を下回っていました。
成分分析では85種類の成分が特定され、ケルセチン、ケンフェロール、ルテオリンなどのポリフェノールが主要な成分として挙げられています。とくに試料2ではケンフェロールが約1万2千 µg/kgと、全データの中で最も高い濃度で検出されました。全体的な含有量でも、ポリフェノール類とフラボノイドは試料2のほうが多い結果でした。
抗酸化作用の試験では、両試料ともラジカルを消去する力を示しました。効果の強さは、作用を半分にするのに必要な濃度(IC50、値が小さいほど強い)で表されます。DPPHという試験では試料1が約41.4 µg/mL、試料2が約32.6 µg/mL、ABTSという試験では試料1が約45.1 µg/mL、試料2が約30.3 µg/mLで、試料2のほうが強い作用を示しました。一方、金属イオンを還元する力は両試料とも、純粋な化合物である標準の抗酸化物質より低い結果でした。
酵素を抑える試験でも、両試料とも3種類の酵素すべてに阻害作用を示しました。アセチルコリンエステラーゼとα-グリコシダーゼでは試料2のほうがやや強く、ブチリルコリンエステラーゼでは両者が同程度でした。ただし、比較の基準として用いた純粋な阻害物質(タクリンやアカルボース)のほうがIC50は低く、作用は強い結果でした。著者らはハチミツの結果を「天然物としては注目に値する水準」と表現しています。
この研究が示すこと
著者らは、調べた2つのハチミツが品質基準を満たし、残留物の面でも安全で、抗酸化作用などの生物活性を持つと結論づけています。また、ポリフェノール類を多く含む試料2がより強い作用を示したことから、成分の違いが活性の違いと関連していると述べています。なお、酵素への作用は試験管内での結果であり、人が食べたときの健康効果を確かめたものではありません。
一方で、論文は分析できた試料が2つだけであることを限界として明記しています。各測定の繰り返しは同じ試料を複数回測った技術的な反復であり、独立した試料を増やしたものではありません。そのため結果は今回の試料を記述したものであり、地域のハチミツ全体に一般化すべきではないとしています。この研究は、限られた試料ながら、品質・安全性・成分・生物活性を一度に評価した基礎資料として位置づけられます。
原著論文の著者・所属:Münire Turhan(Vocational School of Food, Agriculture and Livestock, Faculty of Agriculture, Bingöl University, 12000 Bingöl, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Münire Turhan. Quality Parameters, Metabolomics Profile, and Biology Activities of Some Honey (Apis mellifera) Samples Obtained from Pretoria and Johannesburg, South Africa. Metabolites 2026-09-23. DOI: 10.3390/metabo16100705. 原著ライセンス:CC BY.