著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられてきた葉に着目した研究
藤茶(ヴァインティー)は、ブドウ科の植物アンペロプシス・グロッセデンタタの柔らかい若芽を加工して作る伝統的なハーブティーで、中国南部の少数民族の間で食品としても薬用としても長く使われてきました。これまでの研究で、藤茶にはフラボノイドをはじめとする多様な生理活性成分が含まれることが報告されています。フラボノイドは植物に広く含まれるポリフェノールの一群です。
一方、若芽を囲む葉は量が多く手に入りやすいにもかかわらず、加工の副産物として堆肥化や焼却、埋め立てで処分されることが多く、資源の無駄や環境負荷につながっていると研究チームは指摘しています。そこで著者らは、この葉からエタノールを使ってフラボノイドを効率よく取り出す条件を調べ、得られた抽出物にどのような成分が含まれるか、さらに実験室の試験でどのような働きを示すかを検討しました。研究チームは、抽出方法やエタノール濃度の違いが、取り出せる量だけでなく成分の組成やその後の活性にも影響するという仮説を立てていました。
抽出条件の検討と含まれる成分
研究チームは、超音波を当てて抽出する方法と、加熱しながら溶媒を還流させる方法の2通りを比べました。まず条件を1つずつ変える試験を行い、葉に対する溶媒の量は1対10、抽出時間は60分を目安とし、エタノール濃度は60〜80%の範囲で検討を続けました。中程度の濃度の含水エタノールが、薄すぎる場合や濃すぎる場合より概して良い結果を示したと報告されています。
次に、少ない実験回数で複数の条件の組み合わせを評価する「直交計画」という手法で検討した結果、どちらの抽出法でも、葉に対する溶媒の量が抽出量に最も大きく影響していました。加熱還流法では、70%エタノール、葉と溶媒の比1対10、抽出時間60分の組み合わせが最も高い値を示し、フラボノイドの量は58.20 mg RE/g(代表的なフラボノイドであるルチンに換算した、1グラムあたりのミリグラム数)と報告されています。著者らは結論で、最適化した抽出工程で得た抽出物のフラボノイド含量が50 mg RE/gを超えたとまとめています。ただし著者らは、この試験は各条件で独立した繰り返し実験を行っていないため、統計的な検定は適用しておらず、条件を確定させるには再現実験が必要だと述べています。
研究チームは、加熱還流法で抽出量の多かった3種類の抽出物(TCY3、TCY6、TCY9と命名)を以後の試験に用いました。高分解能の質量分析で成分を調べたところ、合計94の化合物が同定され、そのうち43は標準物質との照合で確認されたもので、ジヒドロミリセチン、ルテオリン、ミリセチン、ケルセチン、ケンフェロールなどが含まれていました。同定された化合物の数で見ると、フラボン類が25.53%で最も多く、フラボノール類(18.09%)、フラバノン類(15.96%)が続きました。なお、この分析は成分の有無を調べる定性的なもので、各成分の量を測ったものではありません。
実験室での抗酸化・抗菌・抗炎症作用
抗酸化作用を調べる試験では、3種類の抽出物はいずれも濃度が高くなるほど、不安定な分子であるフリーラジカルを消去する割合が高まりました。比較対象のビタミンCに比べると消去率の曲線は全体に低めでしたが、著者らは、強さを数値で比べる指標を求めていないため、両者の強さを定量的に比較することはできないとしています。
抗菌試験では、3種類の抽出物とも大腸菌、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌に対して増殖を抑える範囲を示し、黄色ブドウ球菌が概して最も影響を受けやすい結果でした。増殖を抑えるのに必要な最小濃度は、抽出物と菌の組み合わせにより1ミリリットルあたり6.25〜12.5ミリグラムと報告されています。
さらに研究チームは、免疫細胞の一種であるマクロファージの培養細胞(RAW264.7)に、細菌の成分であるLPSを加えて炎症に似た状態をつくり、抽出物の作用を調べました。細胞に害を与えない最大濃度として1ミリリットルあたり0.02ミリグラムを用いたところ、抽出物を加えた細胞では、炎症の指標である一酸化窒素や、炎症を促す物質(IL-1β、IL-6、TNF-α)、脂質の酸化の目安となるMDAがLPSだけを加えた場合より有意に低くなりました。反対に、炎症を抑える物質IL-10や、細胞の抗酸化酵素(SOD、CAT、GSH-Px)の活性は有意に高くなりました。一部の炎症指標ではTCY6が他の2種類より強い抑制を示し、著者らは、活性がフラボノイドの総量だけでなく組成の違いにも左右される可能性を考察しています。
研究が示すこと
この研究は、これまで廃棄されがちだった藤茶の若芽周りの葉から、食品にもなじみのある含水エタノールを使ってフラボノイドを多く含む抽出物が得られ、その抽出物が実験室の試験で抗酸化・抗菌・抗炎症に関わる作用を示したことを報告しています。著者らはこの結果が副産物の有効活用を後押しするとしつつ、抽出条件の再現性の確認、成分の定量、細胞実験で用いた濃度が体内でも意味を持つかどうかなどは未確認であり、産業や健康分野での利用を考えるにはまだ課題が残ると明記しています。
原著論文の著者・所属:Lihui Zhang(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Qiuya Wu(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Xiao-Qun Yang(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Huijing Ren(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Lihong Yang(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Meizhong Hu(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Dongyu Pan(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Shuang Yang(School of Pharmaceutical Sciences, Tongren Polytechnic University, No. 2 Ziyou Road, Bijiang District, Tongren 554300, China)、Dingfeng Su(Guizhou Jiangkou Fanjingshan Medical Technology Group Co., Ltd., Tongren 554400, China)、Wenrui Yue(Guizhou Jiangkou Fanjingshan Medical Technology Group Co., Ltd., Tongren 554400, China)、Qin Liu(Guizhou Jiangkou Fanjingshan Medical Technology Group Co., Ltd., Tongren 554400, China)、Zhiqiang Yan(Chongqing Academy of Animal Sciences, Chongqing 402460, China)、Ting-Chi Wen(Engineering Research Center of Southwest Bio-Pharmaceutical Resources, Ministry of Education, Guizhou University, Guiyang 550025, China)、Pheaktra Phal(Engineering Research Center of Southwest Bio-Pharmaceutical Resources, Ministry of Education, Guizhou University, Guiyang 550025, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lihui Zhang, Qiuya Wu, Xiao-Qun Yang, et al. Study of the Extraction Process, Chemical Composition, and Biological Activities of Total Flavonoids from Vine Tea Leaves. Molecules 2026-10-14. DOI: 10.3390/molecules31203685. 原著ライセンス:CC BY.