著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。

掲載誌:Molecules

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コンブやホンダワラの仲間である褐藻には、「フコイダン」と呼ばれる多糖が含まれています。フコイダンは、硫酸基が結合したフコースという糖を主な構成単位とする、構造の複雑な物質です。どの海藻から、どの方法で取り出すかによって、分子の大きさや硫酸基の量、一緒に含まれる成分が変わります。著者らによれば、この違いが生物学的な働きの比較を難しくしてきました。

南アフリカの沿岸には、エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)、エクロニア・ラディアタ(Ecklonia radiata)、サルガッスム・インシシフォリウム(Sargassum incisifolium)といった褐藻が豊富に生えています。ただし、これらの海藻に由来するフコイダンは、まだ十分に調べられていません。前の2種は大型の海藻であるケルプの仲間で、S. incisifoliumは枝分かれする非ケルプ型の褐藻です。

研究チームは、この3種からフコイダンを多く含む抽出物を取り出し、成分や物理化学的な性質を種ごとに比べました。あわせて、代謝に関わる酵素への作用と抗酸化の働きを試験管内で調べ、性質と働きの関係を探りました。ここで扱った酵素は2種類です。膵リパーゼは食事中の脂肪の消化に、α-グルコシダーゼは糖質の消化に関わります。

何を調べたか

研究チームは、乾燥させて粉にした海藻から色素を除き、熱水でフコイダンに富む物質を抽出しました。得られた抽出物について、次の項目を分析しました。

・糖、フコース、硫酸基、タンパク質、ポリフェノールなどの含有量 ・分子量の分布 ・赤外分光法(FTIR)と核磁気共鳴(1H NMR)による分子の特徴 ・加熱したときの重さの減り方(熱重量分析)

生物学的な働きとしては、膵リパーゼとα-グルコシダーゼの働きをどの程度抑えるかを酵素反応で測りました。抗酸化の働きは、DPPHという試薬を用いた方法で評価しました。

主な結果

抽出量は、色素を除いた海藻の乾燥重量に対する割合で示されています。E. maximaが約8.76%と最も多く、S. incisifolium(約3.92%)とE. radiata(約3.73%)のおよそ2倍でした。

分析の結果、3種の抽出物はいずれも、硫酸基をもつフコース主体の多糖、つまりフコイダンに特徴的な性質を示しました。一方で、属による違いもはっきり表れました。エクロニア属の2種は互いによく似た特徴をもち、分子量は比較的小さめでした。これに対してS. incisifoliumの抽出物は、次の点で異なっていました。

・硫酸基とポリフェノールが多い ・大きな分子と小さな分子が混在し、分子量の幅が広い ・NMRで硫酸基に関連する信号が強く、構造がより複雑 ・加熱に対してより安定

α-グルコシダーゼに対しては、3種とも濃度が高いほど強く働きを抑えました。S. incisifoliumとE. radiataの抽出物は、0.1 mg/mLという低い濃度で90%を超える阻害を示しました。E. maximaは1.0 mg/mLで約75%の阻害でした。比較のために使った既存の薬剤アカルボースは、試験したすべての濃度でこれらより低い阻害にとどまったと報告されています。

膵リパーゼについても、3種の抽出物はいずれも濃度に応じて働きを抑えました。抗酸化の働きは、S. incisifoliumの抽出物で強く見られました。

この研究が示すこと

著者らは、抽出物の働きは一つの性質だけで決まるのではなく、硫酸基の量、ポリフェノールの量、分子量の分布といった複数の性質と関連しているようだと考えています。ただし、今回の分析は関連を示したものです。どの性質が働きの原因なのかは確かめられていないと、著者ら自身が述べています。

また、著者らは次の点を限界として挙げています。 ・使ったのは精製したフコイダンではなく、フコイダンに富む抽出物であること。そのため、一緒に抽出された他の成分が働きに寄与した可能性があります。 ・構造の解析は部分的なものにとどまること。 ・結果は試験管内の実験によるもので、体内での作用を確かめたものではないこと。 ・統計の解析は少数の試料にもとづく予備的なものであること。

この研究は、同じ南アフリカの褐藻でも種によってフコイダンに富む抽出物の性質が異なり、試験管内での酵素への働き方にも差があることを示しました。海藻由来の成分の働きを評価するには、成分の性質をあわせて詳しく調べることが大切だと伝える研究です。

原著論文の著者・所属:Coleen E. Grobler(Enzyme Science Programme (ESP), Department of Biochemistry, Microbiology and Bioinformatics, Rhodes University, Makhanda 6139, South Africa)、Blessing Mabate(Enzyme Science Programme (ESP), Department of Biochemistry, Microbiology and Bioinformatics, Rhodes University, Makhanda 6139, South Africa)、Justin B. Safari(Enzyme Science Programme (ESP), Department of Biochemistry, Microbiology and Bioinformatics, Rhodes University, Makhanda 6139, South Africa)、Brett I. Pletschke(Enzyme Science Programme (ESP), Department of Biochemistry, Microbiology and Bioinformatics, Rhodes University, Makhanda 6139, South Africa)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Coleen E. Grobler, Blessing Mabate, Justin B. Safari, et al. Comparative Characterisation and In Vitro Metabolic Bioactivities of Fucoidan-Rich Extracts from Three South African Brown Macroalgae. Molecules 2026-08-13. DOI: 10.3390/molecules31162823. 原著ライセンス:CC BY.