この研究は、インドネシア、アメリカの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Buletin Peternakan
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
家畜の飼料をどう安定して確保するかは、畜産の現場で長く続く課題です。論文の著者らは、インドネシアで広大な面積を占めるアブラヤシ農園に目を向けました。アブラヤシの葉柄(オイルパームフロンド、以下OPF)は農園から大量に出る副産物で、エネルギー源となる成分を含むため家畜飼料として使える可能性があります。しかし研究チームは、OPFはリグニン(植物の細胞壁を硬くする成分で、分解されにくい)が多く、粗タンパク質が少ないため、そのままでは飼料として使いにくいと説明しています。
一方、ムクナ豆(Mucuna bracteata)はアブラヤシ農園で土壌改良や雑草抑制のために植えられるマメ科の被覆植物で、粗タンパク質を比較的多く含みます。ただし粗繊維も多く、そのまま与えると消化率が下がるとされます。
そこで著者らが検討したのが「サイレージ」です。サイレージとは、飼料となる植物を密閉して乳酸菌などに発酵させ、保存性と品質を高める加工法を指します。本研究の目的は、発酵を促す接種菌(スターター)の種類と、OPFとムクナ豆の配合比の違いが、サイレージの物理的品質・発酵特性・栄養成分・消化率にどう影響するかを調べることでした。
調べ方
研究チームは、3種類の接種菌と3通りの配合比を組み合わせた3×3の要因計画で、各組み合わせを4反復して実験しました。接種菌はEM4(光合成細菌・乳酸菌・酵母を含む複合資材)、Lactobacillus属、Bacillus属の3種類です。配合比は、OPF 28.35%+ムクナ豆50%、OPF 39.17%+ムクナ豆39.17%、OPF 50%+ムクナ豆28.35%の3通りで、いずれも米ぬかや糖蜜、ミネラル、食塩を一定量加えています。
材料は3〜5cmに細断して容器に詰め、21日間発酵させました。その後、色・におい・手ざわり・カビの有無といった見た目や感覚に基づく評価に加え、pH、乳酸、アンモニア、還元糖の濃度、一般成分分析(粗タンパク質や粗繊維など)を測定しています。さらに、家畜の胃の中を試験管内で再現する「in vitro(イン・ビトロ)消化率試験」を行い、48時間および96時間後の乾物・有機物・粗タンパク質・粗繊維の消化率を調べました。
報告された主な結果
著者らは、接種菌の種類と配合比のどちらもが、物理的品質(手ざわり、におい、カビ)、発酵特性(発酵前後のpH、乳酸・アンモニア・還元糖の濃度)、栄養成分(灰分、粗脂肪、粗繊維、NDF、ADF、リグニン)、そして48時間後の消化率(乾物・有機物・粗繊維)に有意な差をもたらしたと報告しています。色については、処理による差は認められませんでした。
総合的に最も品質の良いサイレージが得られたのは、Bacillus属をOPF 28.35%+ムクナ豆50%の配合に用いた組み合わせでした。この組み合わせは、手ざわり、乳酸含量、還元糖濃度、粗繊維、リグニンの各項目で最良だったと報告されています。乳酸濃度は29.80±0.55 mg/100g、還元糖は67.00±1.22 mg/100gでした。乳酸は発酵中にpHを下げる主要な有機酸で、その蓄積は腐敗菌の増殖を抑え栄養分の分解を防ぐ指標とされます。
一方、消化率の面では別の組み合わせが際立ちました。栄養消化率が最も高くなったのは、EM4をOPF 28.35%+ムクナ豆50%の配合に用いた場合で、48時間後の粗繊維消化率(IVCFD)で最大値を示しています。
なお著者らは、本研究で得られたサイレージのpHは4.15〜4.87の範囲にあり、一般的な分類でいえば中程度から低品質にあたると述べています。また発酵後のサイレージはアンモニア濃度が9.35〜10.32 mg/100mLの範囲にあり、サイレージの品質基準を満たしていたと報告しています。発酵の過程では、灰分が増加する一方で、乾物、粗タンパク質、粗脂肪、粗繊維、NDF、ADF、リグニンは減少したとされます。
この研究が示すこと
この研究は、農園から出る副産物であるアブラヤシの葉柄と、被覆植物として育てられるムクナ豆という、どちらも本来は飼料の主役ではない材料を組み合わせ、接種菌を使い分けることでサイレージの性質が大きく変わることを示しました。
注目されるのは、最良の結果を出す組み合わせが評価項目によって異なっていた点です。発酵の進み具合や繊維成分の低下という点ではBacillus属が、粗繊維の消化率という点ではEM4が、それぞれOPFを少なくムクナ豆を多くした配合と組み合わさったときに最も良い値を示しました。接種菌と原料配合をどう選ぶかは、何を重視するかによって変わるということを、この研究の結果は具体的な数値とともに描き出しています。
著者:Susan Carolina Labatar(Department of Animal Science Extension and Welfare, Politeknik Pembangunan Pertanian Manokwari, West Papua 98312)、Okti Widayati(Department of Animal Science Extension and Welfare, Politeknik Pembangunan Pertanian Manokwari, West Papua 98312)、Bangkit Lutfiaji Syaefullah(Department of Animal Science Extension and Welfare, Politeknik Pembangunan Pertanian Manokwari, West Papua 98312)、Hotmauli Febriana Pardosi(Department of Animal Science Extension and Welfare, Politeknik Pembangunan Pertanian Manokwari, West Papua 98312)、Purwanta Purwanta(Department of Animal Science Extension and Welfare, Politeknik Pembangunan Pertanian Gowa, South Sulawesi 92171)、Moh Sofi’ul Anam(Department of Animal Nutrition and Feed Science, Faculty of Animal Science, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta 55281)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Susan Carolina Labatar, Okti Widayati, Bangkit Lutfiaji Syaefullah, Hotmauli Febriana Pardosi, Purwanta Purwanta, Moh Sofi’ul Anam Fermentation Quality, Chemical Compound, and In Vitro Digestibility of the Oil Palm Fronds and Mucuna bracteata Mixed Silage Treated by Various Inoculants. Buletin Peternakan 2026-08-31. DOI: 10.21059/buletinpeternak.v50i3.116248. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。