著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Pengolahan Hasil Perikanan Indonesia

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

伝統的な塩づくりと海のごみ

インドネシア東ヌサトゥンガラ州の沿岸部では、海水を原料に、天日や煮詰めによって塩をつくる伝統的な製塩が続いています。屋外で海水を扱うため、こうした塩は周囲の汚れの影響を受けやすいと著者らは指摘しています。そうした汚れの一つが、海のプラスチックごみが細かく砕けてできる5ミリメートル未満の粒子、マイクロプラスチックです。マイクロプラスチックは世界各地の海塩から見つかっていますが、塩水を煮詰める方式の製塩でどうなるのかは、まだ十分に調べられていませんでした。

研究チームは、中部スンバ県ワトゥアサ村の河口近くで行われている煮詰め式の製塩を対象にしました。製品の塩の品質に加え、原料の濃い塩水と完成した塩に含まれるマイクロプラスチックの量、形、大きさ、素材の種類を調べることが目的です。あわせて、身近な材料による簡単なろ過で塩の品質が変わるかも検討しました。

何をどう調べたか

この村では、塩分を多く含む土を集めてろ過容器に入れ、海水を通して塩分を溶かし出し、「エア・トゥア」と呼ばれる濃い塩水をつくります。これを煮詰めて塩の結晶を取り出し、こしてから天日で乾かすと、料理用の塩ができあがります。調査は2026年2月から3月に行われ、煮詰める直前の塩水と、乾燥後の塩の結晶が採取されました。

品質の比較では、ヤシ殻の炭、砂、サトウヤシの繊維をそれぞれろ材に使う方法と、ろ過しない対照を、各3回の繰り返しで比べました。測ったのは塩の水分と、塩の主成分である塩化ナトリウムの割合です。インドネシアの国家規格に沿って評価しました。

マイクロプラスチックの分析では、試料をろ紙でこし、過酸化水素で有機物を分解しました。そのうえで実体顕微鏡を使い、粒子を繊維状、破片状、フィルム状などに分けて数えました。さらに代表的な粒子を赤外線分光法(FTIR)で調べています。FTIRは、物質が吸収する赤外線のパターンから素材の種類を推定する方法です。

主な結果

塩の水分は5.20〜5.25%の範囲でした。本文の解析では、ろ材による差は統計的に意味のある大きさではありませんでした。すべての試料が、食用塩の上限とされる7.0%を下回っています。一方、塩化ナトリウムの割合ははっきり異なりました。ろ過しない対照は84.89%で、食用塩の最低基準を満たしませんでした。サトウヤシ繊維では91.27%、砂では93.47%、ヤシ殻の炭では95.60%でした。工業原料用の塩の規格に照らすと、最上位の等級に届いたのは炭でろ過した場合だけでした。著者らは、炭がこし取る働きに加え、マグネシウムやカルシウムなどの不純物を吸着することで、純度の高い結晶ができたと考察しています。

マイクロプラスチックは、調べたすべての試料から見つかりました。塩水では1リットルあたり285個、完成した塩では1キログラムあたり約3万5000個でした。どちらでも最も多かったのは繊維状の粒子で、破片状、フィルム状と続きます。著者らは、煮詰める過程で水だけが蒸発し、溶けないプラスチック粒子が塩の結晶の中に残って濃縮されたと説明しています。

粒子の大きさは、塩水より完成した塩のほうが小さくなっていました。破片状は平均約88マイクロメートルから約32マイクロメートルへ、フィルム状は約15マイクロメートルから約7マイクロメートルへと小さくなっています。一方、繊維状はおおむね形を保っていました。著者らは、煮沸中のこすれや熱の負荷で破片やフィルムが砕けた可能性を挙げています。また、完成品に250マイクロメートル未満の粒子が多いことから、従来の結晶化や洗浄ではマイクロプラスチックを十分に除けないとみています。

FTIRでは、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタンなどの合成樹脂が確認されたと報告されています。塩水で見られた主な吸収の特徴は、完成した塩にもそのまま残っていました。研究チームは、汚染物質が結晶に取り込まれた結果と解釈しています。炭でろ過した塩では、樹脂に関連する吸収が目立って弱まっていました。著者らはこれを、炭による吸着の効果を示すものとみています。ただし論文は、FTIRは素材の推定に用いた定性的な分析だとしています。また、環境試料では天然の有機物と樹脂の信号が重なりやすく、解釈には注意が要ると述べています。

研究が示したこと

この研究は、ヤシ殻の炭を使った安価で簡単なろ過によって、伝統的な塩の純度を国の規格の水準まで高められることを示しました。その一方で、煮詰め式の製塩では、原料の塩水に含まれるマイクロプラスチックが完成した塩に高い密度で残ることも明らかになりました。著者らは、品質の改善とは別に、塩に蓄積する微細なプラスチック粒子を食の安全に関わる重要な警告として受け止め、対策が必要だと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Umbu Paru Lowu Dawa(Graduate student of Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Brawijaya; Department of Fishery Product Technology, Faculty of Fisheries and Marine Science, Artha Wacana Christian University, Kupang, East Nusa Tenggara)、Andi Kurniawan(Department of Aquatic Resources Management, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Brawijaya)、Asep A. Prihanto(Department of Fishery Product Technology, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Brawijaya)、Abu Bakar Sambah(Department of Fisheries Resource Utilization, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Brawijaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Umbu Paru Lowu Dawa, Andi Kurniawan, Asep A. Prihanto, et al. Analysis of microplastic abundance, polymer composition, and the effect of natural filtration on traditionally produced cooking salt from Watu Asa Village. Jurnal Pengolahan Hasil Perikanan Indonesia 2026-09-29. DOI: 10.17844/vq3xcw88. 原著ライセンス:CC BY.