著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:AGROINTEK

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サトウキビは、グラニュー糖や液糖だけでなく、搾り汁を煮詰めて固める「黒糖(グラ・メラ・テブ)」の原料にもなります。グラニュー糖や液糖の製造は工程が長く、小規模では難しい一方、黒糖は家庭規模でも伝統的な方法で作ることができます。

インドネシア西カリマンタン州シンタン県カヤン・ヒリル郡のパカック村では、住民が添加物を使わない伝統的な方法でサトウキビ黒糖を作っており、この作業は地元で「ングニュン」と呼ばれています。しかし、こうして作られる黒糖の品質はこれまで調べられていませんでした。研究チームは、この村での黒糖づくりの工程を記述するとともに、見た目や味などの官能評価と実験室での分析によって品質を評価することを目的としました。

何をどのように調べたか

研究は2024年2月から5月に行われました。村には黒糖職人が10人しかいないという事前調査に基づき、研究チームはその10人に聞き取りを行い、製造作業も観察しました。さらに職人1人につき3個ずつ、合計30個の黒糖を購入して分析しました。

品質の項目は、色、味、硬さ、ホウ砂(食品への不正な保存料として問題になる有害物質)の有無、水分、灰分(燃やした後に残る無機物の量)、水に溶けない成分、ショ糖、還元糖(ブドウ糖や果糖など)です。色は色見本帳(パントン)と見比べ、味と硬さは3人の評価者が段階尺度で判定しました。ホウ砂は、試料を燃やしたときに縁が緑色の炎が出るかどうかで有無を調べる方法を用いました。水分などの成分は、インドネシアのサトウキビ黒糖の国家規格(SNI 01-6237-2000)の手順で測定し、その規格値と比べています。

製法と主な結果

聞き取りと観察によると、職人は熟したサトウキビを20〜50本ほど刈り取り、皮をむいて木製の伝統的な道具で搾ります。搾り汁をこして搾りかすを除き、石を積んで固めたかまどに大きな鍋をかけ、薪と搾りかすを燃料に3〜4時間かき混ぜながら煮詰めます。とろみのついた液を持ち上げて糸を引くようになったら火から下ろし、冷める前に型へ流し込みます。職人たちは、かき混ぜる作業が熱と煙の中で力を要し、最もつらい工程だと語っています。黒糖づくりは稲の収穫期や行事に合わせた季節的な作業で、作った黒糖は家庭で消費し、販売はしていないと報告されています。

官能評価では、色は5種類のパントン色に分かれ、明るい茶色から濃い茶色の範囲で、規格が求める色に合っていました。味は3試料が「とても甘い」、7試料が「甘い」と評価され、硬さは「硬い」と「やや柔らかい」が5試料ずつでした。いずれも規格の条件を満たしたと報告されています。ホウ砂はすべての試料で検出されませんでした。ただし、この炎色試験は有無を判定するもので、量は測れないと著者らは説明しています。

成分分析では、項目によって結果が分かれました。本文の報告では、水分は8.5〜16.0%で、規格の2等級の上限(10%)を満たしたのは1試料のみでした。灰分は2.5〜9%で、規格の上限2%を満たす試料はありませんでした。著者らは、こし切れなかった搾りかすや清潔でない道具が灰分を高めた可能性を挙げています。水に溶けない成分は1.62〜3.04%で、全試料が2等級の基準内でした。ショ糖は57〜70.9%で、6試料が1等級の基準(65%以上)を満たし、4試料は2等級の基準(60%以上)に届きませんでした。還元糖は14.83〜19.92%と報告されています。

研究が示すこと

著者らは要旨で、パカック村の黒糖は国家規格を満たし、ホウ砂が検出されなかったことから安全な食品であるとまとめています。一方、本文の項目別の結果では、色・味・硬さや水に溶けない成分は基準内だったものの、水分や灰分は多くの試料で基準を超えていました。

この研究は、これまで調べられていなかった村の黒糖の品質を、伝統的な製造工程の記述とあわせて具体的に示しました。添加物を使わない製法の特徴とともに、搾り汁のろ過や道具の清潔さ、煮詰め方が品質を左右しうることが、著者らの報告から読み取れます。

原著論文の著者・所属:Farah Diba(Fakultas Kehutanan Universitas Tanjungpura)、Ricky Chandra(Fakultas Kehutanan Universitas Tanjungpura)、Dina Setyawati(Fakultas Kehutanan Universitas Tanjungpura)、Hikma Yanti(Fakultas Kehutanan Universitas Tanjungpura)、Yeni Mariani(Fakultas Kehutanan Universitas Tanjungpura)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Farah Diba, Ricky Chandra, Dina Setyawati, et al. Analisis kualitas gula merah tebu hasil olahan tradisional dari Desa Pakak Kecamatan Kayan Hilir Kabupaten Sintang. AGROINTEK 2026-07-28. DOI: 10.21107/agrointek.v20i2.26355. 原著ライセンス:CC BY.