鶏肉は世界中で食べられている身近なタンパク源ですが、その生産を支える「飼料」の確保は決して簡単ではありません。特にタンザニアの養鶏業では、ヒマワリ種子粕や綿実粕といった従来から使われてきたタンパク質・エネルギー源の飼料原料が、入手しにくく価格も高いという課題を抱えているといいます。こうした状況の中、地域で入手しやすく安価な代替原料を見つけることが、養鶏業を持続させるうえで重要になってきます。今回紹介する研究は、そうした代替候補の一つとして「パーム核ミール(PKM)」というパーム由来の飼料原料に着目し、ブロイラー(食肉用の鶏)の成長や腸の状態にどのような影響があるかを調べたものです。
どんな実験が行われたのか
研究チームは、生まれて1日目のブロイラーのひな195羽を、無作為に3つの飼料グループに振り分けました。実験計画は「完全無作為化デザイン(CRD)」と呼ばれる方法で、偶然によるばらつきの影響を減らすため、各グループはさらに3回ずつ繰り返して設定されています。3つの飼料は、(1)PKMを使わない対照区(T1)、(2)ヒマワリ種子粕をPKMに置き換えた区(T2)、(3)綿実粕をPKMに置き換えた区(T3)です。実験期間中は、毎週の体重増加量や1日あたりの飼料摂取量といった成長に関する指標が記録されました。さらに実験の最後には、各グループから15羽ずつを人道的な方法で処理し、消化管を採取して、十二指腸・空腸・回腸における「絨毛(じゅうもう)」の高さや幅、「クリプト(陰窩)」の深さといった腸の構造を顕微鏡レベルで調べています。絨毛は腸の内側にある細かい突起で、栄養の吸収に関わる重要な構造とされています。
研究でわかったこと
結果として、成長性能や腸の構造には、飼料グループ間で統計的に意味のある差(p<0.05)が見られたと報告されています。中でも、ヒマワリ種子粕をPKMに置き換えたT2区では、対照区(T1)や綿実粕を置き換えたT3区と比べて、飼料要求率(少ない飼料でどれだけ体重を増やせたかを示す指標)が改善し、体重増加量も大きく、腸の絨毛構造もより良好な状態であったとされています。
これらの結果から、研究チームは「ヒマワリ種子粕をPKMに置き換えることで、悪影響を及ぼすことなく、ブロイラーの成長性能と腸の発達を高められる可能性がある」と述べています。そのうえで、PKMは特に従来の飼料原料が乏しく高価な地域において、実用的な代替タンパク源となりうるとし、より持続可能でコストを抑えた養鶏生産を支える選択肢になり得ることが示唆されています。
この研究を読むうえでの注意
この研究は、タンザニアで行われた1回の給餌試験に基づくものであり、これだけで結論が確定したわけではありません。また、要旨で示されているのはヒマワリ種子粕の代替(T2)で良好な結果が得られたという内容であり、綿実粕の代替(T3)については対照区やT2区と比べて同様の改善が見られたとは述べられていません。飼育環境や鶏の系統、飼料の配合バランスなどが異なれば結果も変わりうるため、一つの研究成果として受け止めることが大切です。
まとめ
この研究では、タンザニアの養鶏業が抱える飼料コストや入手性の課題に対応する手段として、パーム核ミール(PKM)を使った給餌試験が行われました。特にヒマワリ種子粕をPKMに置き換えた場合に、ブロイラーの成長性能や腸の構造面で良好な傾向が報告されており、地域で入手しやすい飼料原料としてのPKMの可能性が示唆されています。今後、こうした知見がどのように広がっていくのか、注目される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:パーム核飼料を給餌したブロイラー鶏の成長性能と腸管形態(アフリカン・ジャーナル・オブ・フード・アグリカルチャー・ニュートリション・アンド・ディベロップメント・2026年08月)