著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
米ぬかの多糖に注目した理由
米ぬかは精米の際に出る主要な副産物で、栄養に富むことで知られています。しかし、実際には家畜の飼料に回されるか廃棄されることが多く、その価値が十分に生かされていないと研究チームは指摘しています。米ぬかに含まれる多糖(糖が多数つながった大きな分子)には、抗酸化作用などさまざまな働きがこれまでに報告されてきました。一方で、その構造を体系的に調べた研究は少なく、腸内細菌にどう作用するかもはっきりしていませんでした。
多糖の働きは、分子の大きさや、どの糖がどのようにつながっているかによって変わるとされています。そこで著者らは、米ぬか多糖の構造を詳しく分析しました。あわせて、ヒトの便に含まれる腸内細菌と一緒に培養する試験管内の実験を行い、この多糖が腸内細菌に利用されるかどうかを調べました。研究チームはこれを、プレバイオティクス(腸内の有益な細菌の栄養源となる食品成分)としての開発に向けた基礎づくりと位置づけています。
どのような多糖だったのか
研究チームは、上海の精米ラインから採取した米ぬかを使いました。脂肪を除いた米ぬかを熱水で抽出し、酵素でデンプンとタンパク質を取り除いたうえで、多糖を精製しました。
分析の結果、この多糖の分子量は約3.72キロダルトンでした。著者らはこれを、新たに見つかった低分子の多糖と報告しています。構成する糖の約83%はブドウ糖で、ほかにアラビノースやガラクトースなどが少量含まれていました。さまざまな分光分析を組み合わせた結果、骨格はブドウ糖がα型の結合で鎖状につながったものと推定されました。その鎖の途中の一部から、ブドウ糖の枝が分かれる構造と考えられています。熱に対する性質も調べられ、200℃までは分解や融解が起こらず、構造が安定していることが示されました。
腸内細菌との培養で見られた変化
試験管内での発酵実験では、米ぬか多糖を加えた群のほかに、2つの比較群が設けられました。多糖を加えない対照群と、既知のプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)を加えた群です。24時間の培養で、米ぬか多糖は約39%が消費されました。FOSの約42%には及ばないものの、腸内細菌に利用されたことが示されました。
米ぬか多糖の群では、培養液のpHが約8.2から約4.6まで下がりました。研究チームは、細菌が多糖を発酵して短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)を作り出したためと説明しています。生じた短鎖脂肪酸の大部分は、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸が占めていました。
細菌の種類を遺伝子で調べると、米ぬか多糖の群では対照群に比べて有益とされる細菌が増えていました。ビフィズス菌は約10倍、乳酸桿菌は約9倍に増えています。同じ比較で、FOSの群ではそれぞれ約12倍、約34倍でした。反対に、腸内環境の乱れの指標とされる大腸菌・赤痢菌のグループ(Escherichia-Shigella)は減りました。対照群では最も多く全体の約40%を占めていましたが、米ぬか多糖の群では約13%でした。フソバクテリウム属も減少しています。一方、培養液が酸性に傾いた結果、酸性に適応した細菌が優勢になり、細菌の多様性はかえって低下したことも報告されています。
研究が示すこと
著者らは、この多糖の分子量が小さいことと、ブドウ糖を中心とした組成・結合の特徴が、腸内細菌に利用されやすく短鎖脂肪酸を生み出しやすい理由の一つだと考察しています。そのうえで、米ぬか多糖が腸内環境を整える機能性素材になる可能性があると結論づけています。
ただし、今回の結果は便の細菌を試験管内で培養した実験によるもので、人が実際に食べたときの効果を確かめたものではありません。それでも、これまで捨てられがちだった米ぬかから構造の明らかな低分子多糖が得られ、腸内細菌の構成を変えうることが試験管内で示された点に、この研究の意味があります。
原著論文の著者・所属:Bingjie Chen(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Wei Xia(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Hongru Liu(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Chunfang Wang(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Hui He(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Yongjin Qiao(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)、Xiao Wang(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bingjie Chen, Wei Xia, Hongru Liu, et al. Structural characterization and prebiotic activity of a novel polysaccharide from rice bran. Frontiers in Nutrition 2026-11-02. DOI: 10.3389/fnut.2026.1943700. 原著ライセンス:CC BY.