著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Veterinary and Animal Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
この研究で研究チームは、肥育中の子羊に与える飼料と飲み水に着目し、植物由来の化合物である桂皮酸(けいひさん)を飼料に加えることと、磁石の力を通した「磁化水」を飲ませることが、子羊の成長や肉の質にどう影響するかを調べました。
評価の対象は、体重の増え方、飼料の消化のされやすさ、ルーメン(反すう動物の第一胃)での発酵、血液中の成分、体の抗酸化の状態、そして肉の品質と、幅広い項目にわたります。
どのように調べたか
実験には、シャル種の雄の子羊36頭が用いられました。桂皮酸は、飼料の乾物(水分を除いた重さ)1キログラムあたり0ミリグラムまたは400ミリグラムの2通りとしました。飲み水は、通常の水道水、4000ガウスの磁化水、6000ガウスの磁化水の3通りです。
この2通りと3通りを掛け合わせた計6種類の条件に子羊を割り振り、56日間飼育して比較しました。こうした組み合わせの設計により、桂皮酸と磁化水それぞれの影響に加えて、両者を組み合わせたときの影響も調べられるようになっています。
主な結果
論文によると、桂皮酸を与えた子羊では、最終体重、1日あたりの増体量、飼料の摂取量が増えました。飼料中の乾物、有機物、粗たんぱく質、繊維成分の消化率は、桂皮酸と磁化水のどちらによっても高まり、最も大きな反応が見られたのは桂皮酸と6000ガウスの磁化水を組み合わせた条件でした。
桂皮酸はルーメン内で作られる酢酸とプロピオン酸の比率を下げ、血液中ではコレステロールとLDL(いわゆる悪玉コレステロール)を減らし、HDL(いわゆる善玉コレステロール)を増やしたと報告されています。
体の抗酸化の働きについては、桂皮酸と磁化水のいずれも、活性酸素を分解する酵素であるSODや総抗酸化能を高め、脂質の酸化で生じる物質であるマロンジアルデヒドを減らしました。桂皮酸はさらに、別の抗酸化酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼを増やし、炎症に関わる物質TNF-αを血液中で減らしました。
肉の品質も、どちらの処理によっても向上したとされています。具体的には、肉のpHが下がり、肉が水分を保つ力が高まり、脂質の酸化が抑えられ、色に関する指標も改善しました。ただし、磁化水単独では、明るさと赤みの指標への影響は統計的に意味のある差になりませんでした。また、血液中の脂質の各成分、肉の赤み、色の鮮やかさについては、桂皮酸と磁化水の組み合わせによる相互作用が認められました。
この研究が示すこと
研究チームは、今回の試験条件のもとでは、桂皮酸と6000ガウスの磁化水を組み合わせることで、子羊の成長、飼料の消化、抗酸化の状態、肉の品質に好ましい反応が得られたとまとめています。飼料の添加物と飲み水の処理という二つの方法を組み合わせて、子羊の肥育と肉質を同時に評価した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Mohsen Kazemi(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture and Animal Science, University of Torbat-e Jam, Torbat-e Jam, Iran)、Reza Valizadeh(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, Ferdowsi University of Mashhad, Mashhad, Iran)、Abbas Khashei-Siuki(Department of Economic and Water Engineering Sciences, Faculty of Agriculture, University of Torbat Heydariyeh, Torbat Heydariyeh, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohsen Kazemi, Reza Valizadeh, Abbas Khashei-Siuki. Cinnamic acid and magnetized water: A novel nutritional strategy to enhance lamb productivity and meat quality. Veterinary and Animal Science 2026-10-05. DOI: 10.1016/j.vas.2026.100890. 原著ライセンス:CC BY.