著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Farmasains Jurnal Ilmiah Ilmu Kefarmasian

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

捨てられるキャッサバの皮に着目した理由

キャッサバはインドネシアの主要な農産物のひとつで、著者らによると年間生産量は約1498万トンに上ります。加工の過程では、芋の重さの15〜20%ほどにあたる皮が出ますが、その多くは十分に活用されないまま捨てられています。一方で、これまでの研究から、キャッサバの皮にはポリフェノールなどのフェノール化合物やフラボノイドが含まれ、抗酸化作用が期待できることが報告されてきました。

植物から成分を取り出す「抽出」の方法によって、得られる成分の量や性質は変わります。昔からある「浸漬法(マセレーション)」は、粉末を溶媒に漬けて置いておく簡単な方法ですが、時間がかかります。これに対し、超音波を当てて植物の細胞壁を壊し、成分を溶け出しやすくする「超音波抽出(UAE)」が広まりつつあります。研究チームは、同じ原料と同じ溶媒を使ってこの二つの方法を比べた研究が少ないことに着目し、どちらがより抗酸化性の高い抽出物を得られるかを調べました。

どのように比べたのか

研究チームは、インドネシア東カリマンタン州で栽培されたキャッサバの皮を、地元の家庭規模のキャッサバチップ工場から譲り受けました。皮を天日で乾かして粉にし、どちらの方法でも粉末100gを70%エタノール750mLで抽出しました。

浸漬法では室温で3日間漬け、残りかすをさらに24時間漬け直しました。超音波抽出では、周波数37kHz、60℃の超音波洗浄槽で30分間抽出し、残りかすを同じ条件でもう30分抽出しました。つまり二つの方法は、時間だけでなく温度や仕組みも異なる条件で行われています。

得られた抽出物について、フェノール化合物の総量(総フェノール含量)を測り、抽出物1gあたり何mgの没食子酸に相当するかで表しました。また、DPPHという人工的な「ラジカル(不安定で反応しやすい分子)」をどれだけ消せるかで抗酸化活性を評価しました。この評価では、DPPHを半分消すのに必要な濃度を「IC50」と呼び、値が小さいほど少量で効く、つまり抗酸化活性が強いことを意味します。

主な結果

どちらの抽出物からもフェノール化合物とフラボノイドが検出され、アルカロイドとサポニンは検出されませんでした。

総フェノール含量は、浸漬法が抽出物1gあたり45.81mg、超音波抽出が46.14mg(いずれも没食子酸相当量)で、超音波抽出がわずかに高かったものの、統計的には意味のある差とは認められませんでした。

一方、抗酸化活性には明確な差が出ました。IC50は浸漬法の抽出物が39.32ppm、超音波抽出の抽出物が23.43ppmで、超音波抽出のほうが統計的に有意に低く、より強いラジカル消去作用を示しました。比較に用いたビタミンCのIC50は17.39ppmでした。著者らが用いた分類基準では、二つの抽出物はいずれも「非常に強い」区分に入ります。

さらに、測定データ全体では、総フェノール含量が高いほどIC50が低い(抗酸化活性が強い)という関連が統計的に確認されました。

この研究が示すこと

著者らは、フェノール化合物の総量は両方法でほぼ同じだった一方、超音波抽出は短い処理時間で、より強い抗酸化活性をもつ抽出物を得られたことから、キャッサバの皮の抽出には超音波抽出が効率的な方法だと結論づけています。ただし、超音波の周波数37kHzと温度60℃という一つの条件だけで試しており、条件の最適化は行っていないことを、著者ら自身が限界として挙げています。

この研究は、捨てられがちな農業副産物であるキャッサバの皮が抗酸化成分の供給源になりうること、そして取り出し方の違いが抽出物の性質を左右しうることを、試験管内の測定で示したものといえます。

原著論文の著者・所属:Ester Yulianti(Department of Pharmacy, Faculty of Health, Sekolah Tinggi Ilmu Kesehatan Dirgahayu Samarinda, Samarinda, 75122, East Kalimantan, Indonesia)、Nurillahi Febria Leswana(Department of Pharmacy, Faculty of Health, Sekolah Tinggi Ilmu Kesehatan Dirgahayu Samarinda, Samarinda, 75122, East Kalimantan, Indonesia)、Muhammad Taufiqurrahman(Department of Pharmacy, Faculty of Health, Sekolah Tinggi Ilmu Kesehatan Dirgahayu Samarinda, Samarinda, 75122, East Kalimantan, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ester Yulianti, Nurillahi Febria Leswana, Muhammad Taufiqurrahman Comparison of Extraction Methods on Total Phenolic and Antioxidant Activity of Cassava Peel. Farmasains Jurnal Ilmiah Ilmu Kefarmasian 2026-10-31. DOI: 10.22236/farmasains.v13i2.24664. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。