著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。
掲載誌:ICES Journal of Marine Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
海で野生の魚介類をとる漁業は、目的としない生き物まで一緒にとってしまう「混獲」や、海底などの生息環境への影響を通じて、世界の水産物生産の持続可能性を脅かし続けています。漁業が営まれる生態系全体への影響を減らそうとする考え方は「生態系アプローチによる漁業管理」と呼ばれますが、従来の漁業行政ではその導入が進んでいません。こうした状況の中で、環境に配慮した漁業を自主的に促す仕組みとして広がってきたのが、水産物の認証制度です。
代表的な水産エコラベルである海洋管理協議会(MSC)の認証では、基準の最低限の水準は満たしているものの、最善の実践には届いていない項目がある漁業に「認証条件」が課されます。認証条件とは、生息地への影響についての知見を深める、混獲を管理する戦略を導入するなど、期限内に成績を改善するよう認証取得者に求めるものです。期限内に条件を満たせなければ認証は一時停止され、改善策がとられなければ最終的に取り消されます。研究チームは、認証を受けた漁業が混獲と生息地に関する条件を満たすためにどのような行動をとったのかを、さまざまな漁業の状況にわたって分析しました。
主な結果
抄録によると、平均すると、はえ縄を使う漁業は混獲に関する条件を、海底近くで網を引く底びき網漁業は生息地に関する条件を、それぞれ最も多く課されていました。
これらの条件を満たすためにとられた行動の大半、83%は、情報の収集、質、活用の改善にかかわるものでした。具体的には、漁業者自身が記録・報告する新しい仕組みの導入、混獲量の新たな推定やその改善、影響の定量的な分析の作成などが挙げられています。一方、漁具や操業方法の技術的・運用上の変更が見られる頻度はそれより低く、著者らは、そうした変更の多くは認証を受ける前に行われている可能性が高いと述べています。
研究が示す意味
著者らは、新しい情報と既存の情報をまとめて漁業の操業実態の透明性を高めることが、世界の水産物の持続可能性に対するMSC認証の重要な利点だと結論づけています。こうして蓄積された情報は、生態系アプローチによる漁業管理をより広く実施する際の参考になりうるとしています。認証制度が漁業の現場で何を変えているのかを、データと透明性という観点から示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Samantha Lees(Marine Stewardship Council , 1 Snow Hill, London EC1A 2DH ,)、Taylor Gorham(The Fidelis Partnership, Waterloo House , 100 Pitts Bay Road, Pembroke HM08 ,)、Stephanie Good(Good4Seas , Woking, Surrey GU22 8BA ,)、Sophie Ferber(Marine Stewardship Council , 1 Snow Hill, London EC1A 2DH ,)、Catherine Longo(Liverpool John Moores University , Liverpool L33AF ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Samantha Lees, Taylor Gorham, Stephanie Good, et al. Eco-labelled fisheries mitigate bycatch and habitat impacts by improving data collection and quality. ICES Journal of Marine Science 2026-10-01. DOI: 10.1093/icesjms/fsag201. 原著ライセンス:CC BY.