著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
カムグル(Qamgur、学名 Brassica rapa、いわゆるカブ)は、中国の新疆ウイグル自治区で広く栽培されている根菜です。根の皮の色によって白、紫、黄の品種があり、最も一般的なのは白色です。これまでの研究で、紫色のカムグルの色はアントシアニンという色素の量の違いと関連することが報告されています。一方で、黄色のカムグルがなぜ黄色になるのかは分かっていませんでした。皮の色が異なるカムグルに含まれる機能性成分の量や、生育の途中で成分がどう変わるのかについても、報告は限られていました。
そこで研究チームは、新疆産の白色と黄色のカムグルを対象に、生育の進行に伴う品質関連成分の変化と、両者の違いを生む代謝物(生物の体内でつくられる低分子の化合物)を明らかにすることを目指しました。
何を調べたか
試料には、新疆中部の博湖県で育てた白色と黄色のカムグルを使いました。2024年9月12日、10月12日、11月11日の3回、それぞれ生育の初期・中期・後期にあたる時点で収穫しました。各群には3つの生物学的反復を設け、1つの反復は異なる採取区域から集めた10個以上の根を混ぜ合わせて作りました。
研究チームは、まず総フェノール、イソチオシアネート(アブラナ科野菜に特徴的な成分で、カムグルの苦味とも関連づけられています)、遊離アミノ酸の総量、カロテノイド(黄色や橙色の色素)の総量を測定しました。さらに、多数の代謝物をまとめて検出する「ワイドターゲット・メタボロミクス」と、特定の成分を標準物質と照合して量を求める「ターゲット分析」を組み合わせました。ターゲット分析では、21種類の遊離アミノ酸と、多種類のカロテノイドを定量しました。なお、網羅的分析での化合物の同定はデータベース照合に基づく推定であり、論文では標準物質による確定とは区別して扱われています。
主な結果
最も大きな違いが見られたのはカロテノイドでした。白色のカムグルではカロテノイド量が生育を通じて乾燥重量1グラム当たり18.25マイクログラム未満にとどまり、大きな変化はありませんでした。これに対し黄色のカムグルは、すべての生育段階で白色より有意に多く含んでいました。量はいったん減ってから増え、後期に最大の206.06マイクログラムに達しました。著者らは、このカロテノイド量の差が両者の色の違いに寄与している可能性を指摘しています。
成熟期の試料について個々のカロテノイドを調べたところ、全体で27種類が検出されました。そのうち、フィトエン、リコペン、ゼアキサンチン、γ-カロテンなど13種類は黄色のカムグルでのみ検出され、α-カロテンやε-カロテンなど4種類は白色のみで検出されました。β-カロテンやビオラキサンチンなど6種類は両方に含まれていましたが、黄色の方が多く含まれていました。ルテインなど3種類には有意な差がありませんでした。
遊離アミノ酸の総量は、両品種で逆の動きを示しました。白色のカムグルでは初期に10.65%、中期に9.18%と高く、その後も減り続けました。黄色のカムグルでは逆に増加し、後期には6.92%と白色の5.39%を上回りました。個々のアミノ酸では、グルタミンとプロリンが最も多く含まれていました。フェニルアラニンやトリプトファンなど多くのアミノ酸が、白色では減少、黄色では増加という反対の傾向を示しました。
網羅的分析では、全試料で2497種類の代謝物が推定され、そのうちアミノ酸とその誘導体が最も大きな割合を占めました。代謝物全体のパターンを比べると、初期には白色と黄色の差は小さく、中期と後期に差が広がり、中期で最も大きくなりました。また、黄色のカムグルは生育段階ごとの成分の変化が白色よりも大きいことも示されました。成熟期で比べると、黄色は白色に比べて糖類、有機酸、脂質、カロテノイドが多く、フラボノイドとフェノール酸が少ない傾向にありました。一方、イソチオシアネートの総量は両品種とも生育中にわずかに減るだけで、同じ生育段階では白色の方がわずかに多い程度でした。
研究が示すこと
この研究は、同じ地域で育てた白色と黄色のカムグルを生育段階ごとに比較し、両者の違いが色素であるカロテノイドの量と種類に特によく表れることを示しました。代謝物全体で見た品種間の差は初期には小さく、中期と後期に大きくなり、中期で最も大きかったことも報告されています。
研究チームは、アミノ酸の動きとカロテノイドの蓄積が、エネルギーなどの資源を取り合うことで間接的に関係している可能性を提案しています。ただし、これは仮説の段階であり、検証には代謝の流れや酵素活性、遺伝子発現などのさらなる解析が必要だと明記しています。著者らは、黄色のカムグルの品質に関わる成分の違いと、生育段階による変化を示したこれらの結果が、品種改良に向けた研究や収穫時期の選択の基礎になるとしています。
原著論文の著者・所属:Peng Wu(Key Laboratory of Functional Nutrition and Health of Characteristic Agricultural Products in Desert Oasis Ecological Region (Co-Construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs; Urumqi 830091, China)、Tong Zhao(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Maerhaba Paerhati(Key Laboratory of Functional Nutrition and Health of Characteristic Agricultural Products in Desert Oasis Ecological Region (Co-Construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs; Urumqi 830091, China)、Jianhan Xu(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Jing An(Key Laboratory of Functional Nutrition and Health of Characteristic Agricultural Products in Desert Oasis Ecological Region (Co-Construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs; Urumqi 830091, China)、Weiqiang Li(Shandong Agricultural Technology Extension Center, Jinan 250014, China)、Xuexia Yuan(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Jingxiu Bi(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Rui Gao(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Haining Hao(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Changying Guo(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Pingxiang Liu(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)、Jingrong Zhu(Key Laboratory of Functional Nutrition and Health of Characteristic Agricultural Products in Desert Oasis Ecological Region (Co-Construction by Ministry and Province), Ministry of Agriculture and Rural Affairs; Urumqi 830091, China)、Yutao Wang(Institute of Quality Standard and Testing Technology for Agro-Products, Shandong Academy of Agricultural Sciences, Jinan 250100, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Peng Wu, Tong Zhao, Maerhaba Paerhati, et al. Unraveling the Metabolic Basis of Quality Divergence in White and Yellow Qamgur (Brassica rapa L.) During Growth Through Comparative Metabolomics. Foods 2026-07-28. DOI: 10.3390/foods15152656. 原著ライセンス:CC BY.