この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Plant Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ゴーヤー(ニガウリ)は広く栽培される野菜です。苦味や薬理的な価値の多くは、果実に含まれる「トリテルペノイドサポニン」と呼ばれる成分群によると考えられています。この成分群は、炭素の骨格に糖が結合した化合物の仲間です。

これまでの研究で、果実が成長するにつれてサポニンの総量が減ることは知られていました。一方で、個々のサポニンがどう変化するのか、その増減をどの遺伝子が左右しているのかは、よく分かっていませんでした。研究チームは、中国福建省で育成された品種「RY45」を使って、これらの点を調べました。

何をどう調べたか

研究チームはまず、開花後5日、10日、15日の果実でサポニンの総量を測りました。5日目は10日目よりわずかに多い程度でしたが、15日目には大きく減っていました。15日目は市場に出せる成熟段階にあたります。このため著者らは、10日目から15日目までを変化の重要な時期とみなし、この2時点を詳しく比較しました。

比較には二つの方法を組み合わせました。一つは、果実に含まれる化合物を高感度の質量分析でまとめて調べる「メタボローム解析」です。もう一つは、その時点でどの遺伝子がどれだけ働いているかをRNAの読み取りで調べる「トランスクリプトーム解析」です。さらに、増減のパターンが似ている遺伝子どうしをまとめる共発現ネットワーク解析と相関分析を行いました。これにより、サポニンを作る酵素の遺伝子と、遺伝子の働きを調節する「転写因子」の候補を探しました。酵素の候補として注目したのは、化合物を酸化して形を変えるCYP450と呼ばれる酵素群と、化合物に糖を付けるUGTと呼ばれる酵素群です。

主な結果

メタボローム解析では、473種類のテルペノイド系化合物が見つかりました。このうち56種類が、トリテルペノイドサポニンと推定されました。ただし、標準物質による確定ではなく、文献やデータベースとの照合による推定段階の同定です。骨格の種類で分けると、オレアナン型が53.6%、ウリ科に特徴的なククルビタン型が44.6%、ウルサン型が1.8%でした。10日目から15日目にかけてサポニンの総量は有意に減り、とくにククルビタン型の減少が目立ちました。個別にみると、27種類が有意に減少し、増加したのは2種類だけでした。

遺伝子の側では、2時点の間で働きが大きく変わった遺伝子が3,291個見つかりました。このうち50個が、サポニンを作る経路に関わる可能性のある候補でした。中でも6個の遺伝子は、15日目に働きがはっきり弱まり、複数のサポニンの量と同じ方向に増減していました。3個のCYP450遺伝子(McCYP72A219、McCYP86A7、McCYP704C1)、2個のUGT遺伝子(McUGT73C6、McUGT84B1)、そしてサポニン骨格の形成に関わるMcbASです。

調節役については、転写因子のMcbHLH93-1とMcNAC90-1が浮かび上がりました。この2つは、上記6遺伝子のうちMcUGT84B1を除く5つと、そろって増減する関係にありました。

最も大きく働きが低下したMcCYP72A219は、10種類のサポニンの量と強く相関していました。著者らは、まだ小さい開花後5日目の果実で、この遺伝子を一時的に多く働かせる実験も行いました。その結果、何も組み込まない対照と比べてサポニンの総量が増えたと報告しています。著者らはこの結果を、この遺伝子がサポニンの蓄積に関わる可能性を示す予備的な手がかりと位置づけています。

この研究が示すこと

この研究は、ゴーヤーの果実が開花後10日から15日へ進む間に、どの種類のサポニンが減るのかを整理しました。さらに、その変化と連動して働きを弱める酵素遺伝子と転写因子の候補を結び付けて示しました。

ただし著者らも述べているとおり、示された調節関係の多くは、増減が連動しているという相関に基づく推定です。実際にその遺伝子がサポニンを作っているのか、転写因子がそれを制御しているのかは、遺伝学的・生化学的な検証で確かめる必要があります。今回の成果は、果実のサポニン量の変化を分子レベルで理解するための、候補を絞り込んだ出発点といえます。

著者:樊俊苗(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Lian DongMei(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Yunfa Yao(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、李州(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Lidong Wu(Sanming Academy of Agricultural Sciences)、Shaoping Zhang(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Bizhen Lin(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)、Zhengfeng Lai(Institute of Subtropical Agriculture, Fujian Academy of Agricultural Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):樊俊苗, Lian DongMei, Yunfa Yao, et al. Integrating metabolomic and transcriptomic analyses to identify candidate genes and transcriptional regulators associated with triterpenoid saponin accumulation in developing Momordica charantia fruits. Frontiers in Plant Science 2026-10-06. DOI: 10.3389/fpls.2026.1868077. 原著ライセンス:CC BY.