著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:MEDICA ARTERIANA (Med-Art)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

末期の慢性腎臓病で血液透析を受けている患者は、食事からの摂取が不十分になったり、体のたんぱく質が分解されやすい状態になったりすることで、体の組織が減っていくおそれがあります。研究チームはこうした背景から、体のなかで代謝が活発な部分を示す「体細胞量(Body Cell Mass)」に注目しました。体細胞量は主に筋肉や臓器などの組織にあたり、エネルギーのやりとりに関わる部分です。

著者らによると、体細胞量がたんぱく質の摂取量や血液透析を受けてきた期間とどのように関係するかは、特にインドネシアの透析医療の現場では十分に調べられていませんでした。そこで研究チームは、インドネシア・スマラン市の血液透析患者を対象に、たんぱく質摂取量と透析期間のそれぞれが体細胞量と関連しているかを分析しました。

何をどのように調べたか

研究は、ある一時点のデータを使って変数どうしの関連を調べる横断研究として行われました。対象は、2023年6月から8月にスマラン市の腎臓・血液透析クリニックで、研究の条件に合わせて選ばれた35人の患者です。週2回以上の血液透析を3か月以上続けている18歳以上の人で、高血圧や糖尿病を併せ持つ人が含まれました。重い感染症や進行中のがん、測定の正確さに影響しうる強いむくみがある人などは除かれました。

たんぱく質の摂取量は、過去1か月に何をどのくらいの頻度・量で食べたかを、訓練を受けた栄養士が聞き取る質問票で評価し、1日あたりのグラム数として算出しました。透析を受けてきた期間は診療記録から年単位で調べました。体細胞量は、体に微弱な電流を流してその通りにくさから体の組成を推定する生体電気インピーダンス法の機器を使い、体内の水分の移動が落ち着くよう透析終了から30分後に測定しました。関連の強さは相関係数という指標で評価しています。

主な結果

対象者の65.7%が女性で、平均年齢は約52歳でした。たんぱく質の平均摂取量は1日約39グラム、透析期間の中央値は2年、体細胞量の平均は約28.9キログラムでした。

分析の結果、たんぱく質の摂取量が多い人ほど体細胞量が大きいという、中程度の強さの正の関連が報告されました(相関係数0.413、統計的に意味のある差の目安を満たす結果)。一方、透析を受けてきた期間と体細胞量との間には、意味のある関連は見られませんでした(相関係数はほぼゼロの-0.010)。

著者らは、透析期間との関連が見られなかった理由として、透析中の体組成の変化が一定の速さで進むとは限らないことや、期間そのものは炎症や身体活動、食事の変化などを直接反映しないことを挙げています。また、この研究の対象者は透析期間が比較的短く、その幅も限られていたため、関連を見つけにくかった可能性にも触れています。

研究から伝わること

この研究は、血液透析を受ける患者において、体の代謝的に活発な組織の量が、透析を受けてきた年数よりも、現在の食事からのたんぱく質摂取と結びついている可能性を示しています。著者らは、たんぱく質摂取量と体組成を継続的に確認することが、透析患者の栄養ケアの一部として必要だと述べています。

ただし著者らは、この結果は関連を示したもので、因果関係を証明したものではないと強調しています。1つのクリニックの35人という限られた対象であることや、体格や年齢、併存疾患などの影響を調整していないことも限界として挙げています。また、たんぱく質を増やせば体細胞量が必ず増えるという意味ではなく、摂取の適否は体重やエネルギー、カリウム・リンなど一人ひとりの状態に応じて判断する必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Esti Widiasih(Fakultas Kedokteran Universitas Muhammadiyah Semarang)、Hertanto Wahyu Subagio(Fakultas Kedokteran Universitas Diponegoro)、Lestariningsih Lestariningsih(Fakultas Kedokteran Universitas Diponegoro)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Esti Widiasih, Hertanto Wahyu Subagio, Lestariningsih Lestariningsih. Hubungan Asupan Protein dan Lama Menjalani Hemodialisis dengan Body Cell Mass pada Pasien Hemodialisis. MEDICA ARTERIANA (Med-Art) 2026-08-28. DOI: 10.26714/medart.8.1.2026.44-50. 原著ライセンス:CC BY.