著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
妊娠中は、母体の変化や胎児の成長を支えるために、たんぱく質を含む栄養素の必要量が増えます。たんぱく質はアミノ酸の供給源として組織の成長や修復、代謝などに欠かせない栄養素です。一方で、妊娠中のたんぱく質摂取量とさまざまな妊娠の経過との関係を調べた研究は、米国では特に少ないと著者らは指摘しています。
そこで研究チームは、たんぱく質の摂取量が少ないと、妊娠合併症が増えるのではないかという仮説を立てました。具体的には、在胎週数に比べて小さく生まれる赤ちゃん(SGA)、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などの妊娠中の高血圧の病気が多くなり、在胎週数に比べて大きく生まれる赤ちゃん(LGA)は少なくなるかを調べました。
何をどのように調べたか
この研究は、初めて出産する女性を対象に米国の複数施設で妊娠の経過を追った大規模な調査「nuMoM2b」のデータを、改めて分析したものです。元の調査参加者10,038人のうち、食事の質問票データや主な妊娠結果のデータが欠けている人や、妊娠20週より前に妊娠が終わった人を除き、7,067人を分析しました。
食事内容は、妊娠6週から13週台の受診時に、普段どれくらいの頻度で何を食べているかを答える質問票で調べられました。研究チームはこの回答から1日あたりのたんぱく質摂取量を求め、体重1キログラムあたりのグラム数に換算しました。そのうえで、参加者を0.6グラム未満、0.6〜0.8グラム未満、0.8〜1.1グラム未満、1.1グラム以上の4群に分けました。1.1グラムという区切りは、健康な妊婦のほぼ全員の必要量を満たすとされる推奨量に基づいています。
SGAは出生体重が同じ在胎週数・性別の基準で下位10パーセント以内、LGAは上位10パーセントを超える場合と定義されました。分析では、年齢、体格指数(BMI)、保険の種類、学歴、収入、慢性高血圧の有無、1日の総摂取エネルギーといった、結果に影響しうる要因の影響を統計的に差し引いて比べました。比較の基準は、摂取量が最も多い1.1グラム以上の群です。
主な結果
まず、たんぱく質摂取量は参加者の背景によって違いがありました。摂取量の少ない人は、黒人女性、高校卒業以下の学歴の女性、無職の女性、収入の低い女性、公的保険を利用している女性に多く見られました。一方、ヒスパニック系やアジア系の女性では摂取量の多い群に入る人が比較的多くいました。
妊娠中の高血圧の病気は、背景要因を考慮しない単純な比較では、摂取量の少ない2つの群で多く見られました。しかし、総摂取エネルギーなどの要因を考慮すると、この関連は統計的に意味のあるものではなくなりました。妊娠糖尿病とLGAについては、たんぱく質摂取量との関連は見られませんでした。
SGAについては、体重1キログラムあたり0.8〜1.1グラム未満の群で、1.1グラム以上の群と比べてSGAの赤ちゃんが生まれるオッズ(起こりやすさの指標)が約2割低いという結果でした(調整後オッズ比0.78)。ただし、摂取量が多いほど一貫してリスクが下がるという段階的な傾向は見られず、摂取量の最も少ない2つの群でSGAが統計的に多くなることもありませんでした。体重あたりではなく1日の総摂取量で見直した追加の分析でも、統計的に意味のある関連は認められませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、妊娠初期に中程度から多めのたんぱく質をとっていた人で、SGAのオッズが低いという関連が見られたと結論づけています。ただし、摂取量に応じた段階的な傾向がなく、追加の分析でも関連が確認されなかったことから、この結果はあくまで探索的なものであり、確認が必要だと位置づけています。また、食事の調査は妊娠初期に一度だけで、自己申告に基づいています。たんぱく質が動物性か植物性かといった食品の種類も区別していません。
著者らは、多くの関連が統計的に意味のあるものではなかったことから、たんぱく質の総量だけでなく、食事全体の質や社会経済的な状況が、より大きな役割を果たしている可能性があると述べています。妊娠中のたんぱく質を考えるうえで、「多くとるほど良い」と単純に考えるのではなく、栄養全体や生活環境の中で捉える必要がある――この研究はそうした視点を示しています。
原著論文の著者・所属:Suzette Rosas-Rogers(Department of Obstetrics and Gynecology, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA)、Ronald Anguzu(Institute for Health and Humanity, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA)、Alyssa M. Hernandez(Department of Obstetrics and Gynecology, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA)、Anna Palatnik(Cardiovascular Center, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA; Department of Obstetrics and Gynecology, Medical College of Wisconsin, Milwaukee, WI 53226, USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Suzette Rosas-Rogers, Ronald Anguzu, Alyssa M. Hernandez, et al. Association Between Maternal Protein Intake and the Risk of Adverse Pregnancy Outcomes. Nutrients 2026-08-04. DOI: 10.3390/nu18152543. 原著ライセンス:CC BY.