著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:International Journal of Innovative Technologies in Social Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
たんぱく質は、体の構造をつくるだけでなく、酵素やホルモン、免疫に関わる成分の材料にもなる基本的な栄養素です。特に骨格筋では、運動で負荷がかかった後の修復や作り替え、トレーニングへの適応を支えています。
運動習慣のない健康な人では、1日あたり体重1kgにつき約0.8gが基本的な必要量とされてきました。この基準は、主に欠乏を防ぎ、体内のたんぱく質の出入りの釣り合い(窒素出納)を保つためのものです。一方、運動をする人やアスリートは体内のたんぱく質の入れ替わりが活発で、運動後の回復も必要になります。そのため、より多くのたんぱく質が必要だと考えられてきました。
ただし、筋肉を増やしたい、脂肪を減らしたいといった目的や、摂取エネルギーが多いか少ないかによって、どの程度の量が最適かははっきりしていませんでした。そこで著者らは、アスリートや筋力トレーニングを行う人を対象に、筋量の増加、脂肪の減少、そして両者を同時に目指す「ボディリコンポジション(体組成の改善)」という三つの目的ごとに、1日のたんぱく質摂取量に関する現在の知見を整理しました。
どのように調べたか
このレビューでは、PubMedで入手できる過去15年ほどの文献を対象としました。個々の研究、クロスオーバー試験(同じ参加者が複数の条件を順番に試す方法)、系統的レビュー、メタ分析、専門家団体の見解声明などを取り上げています。
対象には、摂取エネルギーと消費エネルギーが釣り合った状態、エネルギーが余る状態、不足する状態のそれぞれでたんぱく質摂取を調べた研究が含まれます。あわせて、1日の中でのたんぱく質の配分、食品ごとのたんぱく質の質、高たんぱく食を長く続けた場合の安全性に関する文献も扱っています。
報告された主な内容
著者らによると、筋肉を増やす時期には、エネルギー収支がプラスか少なくとも釣り合っている条件で、1日あたり体重1kgにつき約1.6〜2.2gが筋肥大と除脂肪量の増加を支えるのに十分とみられます。これを上回って増やしても、除脂肪量が明らかに多く増えることはまれだと報告されています。また論文は、たんぱく質を多くとるだけでは不十分だと強調しています。十分なエネルギー量と適切に組まれた筋力トレーニングが前提であり、たんぱく質は筋肉の適応を支える役割を担うという位置づけです。
脂肪を減らす時期にはエネルギーが不足するため、除脂肪量が失われやすく、運動能力も落ちやすくなります。この時期には体重1kgあたり1.8〜2.4gと、筋肉を増やす時期より多めの摂取が妥当とされました。エネルギーを大きく減らすほど筋肉を失うリスクが高まるため、体脂肪が少ない人や減量幅の大きい人では、範囲の上限寄りが望ましい場合があるとしています。
脂肪を減らしながら筋肉を維持・増加させるボディリコンポジションでは、約1.6〜2.4gが最も妥当な範囲とされました。特に定期的な筋力トレーニングと組み合わせた場合です。論文は、この目的を最も達成しやすいのは、トレーニング初心者、休止後に再開した人、体脂肪が比較的多い人だと述べています。鍛えられた人ほど達成は難しくなる傾向があるとしています。
体重1kgあたり3gを超えるような非常に多い摂取は、脂肪の減少や体組成の改善を後押しする可能性があると報告されています。しかし、中程度に多い摂取と比べて、筋肉が明らかに多く増えるわけではないとされました。
総量に加えて、とり方も重要だと論文は指摘しています。たんぱく質を1食に集中させるより、数回の食事に均等に分けるほうが筋たんぱく質の合成を促しやすいとされます。1食あたり体重1kgにつき約0.25〜0.40gを3〜4時間ごとにとる方法が、よく推奨されています。ただし1日の総量が十分であれば、運動前後のタイミングの影響は、以前考えられていたほど大きくないとされました。質の面では、消化しやすく必須アミノ酸、特にロイシンを多く含む乳清、乳製品、卵、肉などが挙げられています。植物性たんぱく質中心の食事でも、アミノ酸組成や消化率の低さを考慮して計画すれば、必要量を満たせるとしています。
安全性については、健康で運動習慣のある人では、体重1kgあたり2.0gを超える摂取でも一般におおむね問題なく受け入れられていると報告されています。筋力トレーニングを行う人を対象とした研究では、数週間から1年の高たんぱく食で、腎機能や肝機能の大きな悪化は示されませんでした。骨密度への明確な悪影響を示す証拠もないとされています。一方、腎臓や肝臓の病気、そのほかの代謝の病気がある人では、個別の評価と慎重な対応が必要だとしています。長期間続ける場合には、基本的な検査値の確認が妥当だとも述べています。
この研究が示すこと
このレビューが伝えるのは、運動する人にとって最適なたんぱく質の量は一つに決まるものではない、という点です。筋肉を増やすのか、脂肪を減らすのか、その両方を目指すのか。そしてエネルギーを多めにとるのか、控えるのか。こうした条件によって目安が変わることを、著者らは既存の研究を整理して示しました。あわせて、量を増やせば増やすほど筋肉が増えるわけではないこと、配分や食品の選び方も効率に関わることを明らかにしています。目的と食事全体の状況に合わせて摂取量を考えることの大切さを示す内容です。
原著論文の著者・所属:Krystian Kaczmarek(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Wiktoria Zawada(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Zofia Jadwiga Leszczyńska(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Vladyslav Romaniuk(Prof. S. T. Dąbrowski Hospital in Puszczykowo S.A., 11 Józefa Ignacego Kraszewskiego Street, 62-040 Puszczykowo, Poland)、Urszula Szuleta(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Agnieszka Benecka(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland; Prof. S. T. Dąbrowski Hospital in Puszczykowo S.A., 11 Józefa Ignacego Kraszewskiego Street, 62-040 Puszczykowo, Poland)、Jakub Pietrończyk(University Clinical Hospital in Poznań, Przybyszewskiego 49, 60-355 Poznań, Poland)、Alicja Benecka(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland; Prof. S. T. Dąbrowski Hospital in Puszczykowo S.A., 11 Józefa Ignacego Kraszewskiego Street, 62-040 Puszczykowo, Poland)、Maria Dąbrowska(Medical University of Lodz, Aleja T. Kościuszki 4, 90-419 Łódź, Poland)、Zuzanna Wieczorek(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Iga Tartas(J. Strus City Multispecialty Hospital, Szwajcarska 3, 61-285 Poznań, Poland)、Natalia Prankiewicz(University Centre of Dentistry and Specialized Medicine, Bukowska 70, 60-812 Poznań, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Krystian Kaczmarek, Wiktoria Zawada, Zofia Jadwiga Leszczyńska, et al. OPTIMAL DAILY PROTEIN INTAKE IN ATHLETES DURING MUSCLE MASS GAIN, FAT LOSS, AND BODY RECOMPOSITION: A LITERATURE REVIEW. International Journal of Innovative Technologies in Social Science 2026-08-24. DOI: 10.31435/ijitss.3(51).2026.6323. 原著ライセンス:CC BY.