著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Cureus

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

腎臓の働きがほぼ失われ、定期的な血液透析(維持血液透析)を受けている人では、食事量の減少や炎症、透析による栄養素の喪失などから、たんぱく質やエネルギーが不足した低栄養状態がよく見られます。こうした状態は、体の機能の低下や入院、死亡などと関連することが知られています。

亜鉛は、たんぱく質の合成、免疫、傷の治り、食欲や味覚などに関わる必須の微量元素です。透析を受ける人では血液中の亜鉛濃度が低くなりやすいと報告されていますが、それが栄養状態とどう関係するのかははっきりしていません。研究チームは、透析前の血清亜鉛濃度と、栄養状態の評価法である「7段階主観的包括的評価(SGA)」の点数との関係を主に調べました。あわせて、ほかの臨床・検査項目との関係や、血清亜鉛が低い(60 µg/dL未満)ことに関連する要因も探りました。

何を調べたか

研究はインド北部の教育病院の透析部門で、2026年1月から3月にかけて行われました。対象は、少なくとも3か月以上、週2〜3回・1回4時間の透析を安定して続けている成人73人です。急性の感染症がある人、最近入院や手術、輸血を受けた人、亜鉛のサプリメントなどを使っている人は除かれました。

SGAは、体重の変化、食事量、消化器症状、日常の活動能力、皮下脂肪の減少、筋肉のやせといった項目から、医療者が栄養状態を1〜7点で評価する方法です。この研究では6〜7点を栄養良好、3〜5点を軽度〜中等度の低栄養、1〜2点を重度の低栄養としました。評価者は、患者の亜鉛の値を知らない状態で評価を行いました。

血清亜鉛は、週の半ばの透析の直前に採った血液で測定されました。60 µg/dL未満を「低い」とする区分は日本臨床栄養学会の指針に基づくものですが、著者らは、この基準がインドの透析患者で検証されていないことや、血清亜鉛が炎症や食事、採血時刻などの影響を受けることから、この区分を確定的な欠乏症ではなく、血液検査上の亜鉛の状態を示す目安として扱いました。

主な結果

参加者の平均年齢は約44歳で、46.6%が女性でした。血清亜鉛の平均は51.20 µg/dLで、73人中63人(86.3%)が60 µg/dL未満でした。SGAでは、栄養良好が18人(24.7%)、軽度〜中等度の低栄養が53人(72.6%)、重度の低栄養が2人(2.7%)でした。

血清亜鉛濃度は、栄養状態の3つのグループの間で統計的に有意な差がありませんでした。またSGAの点数との間にも有意な相関は見られず、血清アルブミン、炎症の指標であるCRP、BMI、ヘモグロビン、透析を続けてきた期間などとも有意な関連はありませんでした。補正したカルシウム値とはわずかな正の相関が見られましたが、多数の項目を同時に調べたことを考慮した厳しい基準では有意ではなく、著者らは偶然の可能性もあるとしています。血清亜鉛が低いことに関連する要因も、今回の解析では見つかりませんでした。

著者らは、重度の低栄養の人が2人と少なく、グループの人数にも大きな偏りがあったため、小さいながら意味のある関連を見逃した可能性があると述べています。今回の結果は、関連がないことや、両者が無関係であることを示したものではないとしています。

この研究が示すこと

この研究では、透析を受ける人の多くで血清亜鉛が低い一方、SGAで評価した栄養状態とは明確な関連が見られませんでした。著者らは、SGAが体重や食事、筋肉や脂肪の減少といった臨床的な栄養の衰えをとらえるのに対し、血清亜鉛は吸収や炎症、アルブミンとの結合などさまざまな要因に左右されるため、両者は置き換えられるものではなく、互いを補う指標だと考えています。

また、1回の血清亜鉛の値が体全体の亜鉛の量をそのまま表すとは限らず、低い値だけで低栄養と判断したり、補充が必要だと決めたりすべきではないとしています。今回の横断的な結果は、一律に亜鉛を補充することを支持するものではないというのが著者らの見解です。

原著論文の著者・所属:Sana Shadab(. Nephrology , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)、Abdullah .、Royana Singh(. Nephrology , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)、Shivendra Singh(. Anatomy , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)、Nitish Singh(. Multidisciplinary Research Unit , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)、Abhay Yadav(. Multidisciplinary Research Unit , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)、Aabidha Anand(. Nephrology , Institute of Medical Sciences , Banaras Hindu University , Varanasi , IND)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sana Shadab, Abdullah ., Royana Singh, et al. Serum Zinc Concentration and Its Association With Nutritional Status in Hemodialysis Patients: A Cross-Sectional Study. Cureus 2026-10-23. DOI: 10.7759/cureus.118450. 原著ライセンス:CC BY.