著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
関節リウマチは、免疫の仕組みが自分の関節を攻撃し、関節の内側を覆う膜(滑膜)に炎症が続く慢性の自己免疫疾患です。発症には遺伝的な要因に加えて、喫煙や感染、食事などの環境要因が関わると考えられています。食事は体内の炎症に影響しうるため、関節リウマチとの関係が注目されてきました。
著者らによると、これまでの研究の多くは特定の栄養素や食品を個別に扱ったものでした。食事全体の炎症を起こしやすさを点数化する指標と関節リウマチの関連を調べた研究は少なく、インドからの報告はありませんでした。また、栄養の充足度、食事の多様さ、炎症を起こしやすさをあわせて関節リウマチとの関係を見た研究は、とくにインドの食事については十分に行われていないとしています。そこで研究チームは、インドの都市部に住む人々を対象に、食事の「炎症を起こしやすい傾向」「多様さ」「微量栄養素の充足度」が関節リウマチとどう関連するかを調べました。あわせて、関節リウマチに関係する自己抗体の血中濃度との関連も検討しました。
何をどのように調べたか
研究は症例対照研究として行われました。病気のある人(症例)と病気のない人(対照)の過去の生活習慣を比べる方法です。インド南部のハイデラバードとその周辺の都市部で、18〜55歳の参加者615人を登録しました。内訳は、新たに関節リウマチと診断された301人と、主な慢性疾患のない健康な対照314人です。参加者の約9割は女性でした。
食事は、訓練を受けた栄養士が131品目の食品について、過去12か月間に普段どのくらいの頻度と量で食べていたかを聞き取って把握しました。患者では、この12か月を症状が出始めた時期または診断時を基準に設定しました。
この食事データから、三つの指標を計算しました。一つ目は「食事性炎症指数(DII)」で、食事に含まれる成分を炎症を強める方向と抑える方向に分けて点数化し、食事全体が炎症を起こしやすいかを示します。値が高いほど炎症を起こしやすい食事とされます。二つ目は「食事多様性スコア(DDS)」で、穀類、豆類、野菜、果物、乳製品など10の食品群のうち何種類を食べているかを数えます。三つ目は「平均充足確率(MPA)」で、鉄、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、葉酸など10種類の微量栄養素について、摂取量が必要量を満たしている確率を平均したものです。
さらに血液検査で、関節リウマチに関係する2種類の自己抗体、リウマトイド因子と抗CCP抗体の濃度を測りました。統計解析では、年齢・性別・体格指数(BMI)の影響を考慮したうえで、各指標と関節リウマチとの関連を調べました。
主な結果
対照群と比べて患者群は、エネルギー、たんぱく質、食物繊維のほか、鉄、ビタミンC、ビタミンA、葉酸、マグネシウムなど多くの栄養素で摂取量の中央値が低いと報告されました。微量栄養素を総合的に満たしていると判定された人の割合は、患者群21.3%、対照群34.7%でした。5つ以上の食品群を食べる「多様性が高い」人の割合は、患者群50.2%、対照群74.2%でした。食事性炎症指数の中央値は、患者群が2.18、対照群が0.37で、患者群のほうが炎症を起こしやすい食事の傾向を示しました。
年齢・性別・BMIを考慮した解析では、食事性炎症指数が1上がるごとに、関節リウマチである見込み(オッズ)が約1.17倍高い関連が見られました。食事性炎症指数で参加者を3つの群に分けると、最も低い群に比べて、中間の群で約1.86倍、最も高い群で約2.55倍のオッズでした。逆に、食事多様性スコアが1上がるごとにオッズは約0.73倍に、微量栄養素の平均充足確率が10ポイント上がるごとに約0.88倍になりました。いずれも、関節リウマチである見込みが低い方向の関連です。BMIを除いて解析しても、ほぼ同じ結果でした。
一方、自己抗体の濃度との関連は限られていました。食事の多様性が高いほど抗CCP抗体の濃度が低い関連は見られましたが、リウマトイド因子とは関連しませんでした。食事性炎症指数と微量栄養素の充足度は、連続値として扱った解析ではどちらの抗体とも有意な関連がなく、群に分けた解析でも結果は一貫しませんでした。
この研究が示すこと
この研究は、インドの都市部の人々で、多様性に乏しく、微量栄養素が不足しがちで、炎症を起こしやすい傾向の食事が、関節リウマチであることと関連していたことを報告しました。一方、関節リウマチに関係する自己抗体の濃度との関連は限られ、一貫したものではありませんでした。
ただし、著者らはこの結果を「関連」として解釈すべきだと強調しています。症例対照研究では、食事の違いが病気の原因なのか、発症前後の体調の変化が食事に影響したのかを区別できません。年齢・性別・BMI以外の要因の影響も否定できません。著者らは、この結果を確かめるには前向き研究が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Hemant Mahajan(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Sailaja Pothana(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Phani Kumar Devarasetti(Department of Rheumatology, Nizam’s Institute of Medical Sciences, Hyderabad 500082, India)、Janhavi Pawar(Specialized Dietetics, Sir Vithaldas Thackery College of Home Science, Mumbai 400049, India)、Ranga Sreenivasa Reddy Kypa(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Aditi Abhay Deshpande(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Nikhita B. R. R. Boda(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Venkat Raji Reddy Garlapatti(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Srikanthbabu Perugu(Department of Kayachikitsa, Dr. B.R.K.R. Government Ayurvedic Medical College, S.R. Nagar, Erragadda, Hyderabad 500038, India)、Jag Jeevan Babu Geddam(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)、Liza Rajasekhar(Department of Rheumatology, Nizam’s Institute of Medical Sciences, Hyderabad 500082, India)、Devraj J. Parasannanavar(Indian Council of Medical Research—National Institute of Nutrition, Hyderabad 500007, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hemant Mahajan, Sailaja Pothana, Phani Kumar Devarasetti, et al. Associations of Dietary Inflammatory Potential, Dietary Diversity, and Micronutrient Adequacy with Rheumatoid Arthritis: A Case–Control Study from India. Nutrients 2026-09-26. DOI: 10.3390/nu18193170. 原著ライセンス:CC BY.