著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Lenvari Journal of Social Science
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
料理書に描かれた「国の食」を調べる
研究チームは、1967年にインドネシア農業省が刊行した料理書『Mustika Rasa』を通じて、同国の多様な食文化がどのように記録されていたかを調べた。とくに、後の時代に非ハラール、つまりイスラム教の規範で食べることが認められないものとして分類される食材や料理が、本の中でどう扱われていたかに着目した。
『Mustika Rasa』は、各地の数千に及ぶレシピを集めた国の出版物である。著者らはこれを単なる料理の作り方の集成ではなく、国家が自国の食文化をどう整理し、示したかを読み取れる歴史資料として扱った。資料の検討と歴史的背景の解釈に、本の内容分析を組み合わせ、レシピの分類や食材の記述を調べた。
宗教上の区分ではなく、料理の種類で整理
著者らによると、『Mustika Rasa』のレシピは料理の種類、主な食材、調理法に沿って整理されていた。後に非ハラールと分類される食材を使う料理も、ほかの料理と同じ仕組みの中に収められ、別の章や節に分けられたり、特別な記号や説明を付けられたりしていなかった。
研究チームは、この構成を、宗教的な区分よりも各地の食の実践を記録することを重視したものと解釈している。食材の多様さは、地域ごとの自然環境や資源、文化の違いを反映するものであり、掲載を特定の食材への是非の判断として読むのではなく、編纂当時の食文化の記録として捉える必要があるという。
食の伝統の継続と、分類の変化
論文は、1980年代末にハラールをめぐる議論が強まると、それまで同じ枠組みで記録されていた一部の食材に、新たな意味づけや分類が与えられるようになったと報告している。著者らがここで捉えたのは、料理の実践そのものの変化というより、社会や国家、制度が食をどう理解し、表現するかの変化である。
著者らは、食の伝統が続く一方で、その位置づけは歴史の中で変わると結論づけている。この研究は、料理書がレシピだけでなく、ある時代に何を「自国の食」として記録したのかを伝える資料でもあることを示している。
原著論文の著者・所属:Puspo Teja Hayuningrat(Universitas Negeri Malang)、Subekti, Arif(Universitas Negeri Malang)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Puspo Teja Hayuningrat, Subekti, Arif Sebelum Halal Menjadi Batas: Kajian Historis Keragaman Kuliner Nusantara dalam Mustika Rasa Sebelum Diskursus Halal Menguat Tahun 1967–1989. Lenvari Journal of Social Science 2026-10-30. DOI: 10.61105/jss.v4i2.515. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。