著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ドネルケバブは、牛肉や羊肉、鶏肉を串の周りに円柱状に重ねて回転させながら焼き、薄く削いで提供するトルコの伝統的な肉料理です。近年は、トルコの発酵ソーセージ「スジュク」に使われるニンニク、クミン、パプリカ、唐辛子などの香辛料でひき肉に味付けした「スジュク・ドネルケバブ」という新しいタイプも登場しています。スーパーなどでは、包装された調理済み製品としても売られています。
スジュクそのものは、発酵させ、亜硝酸塩などで塩漬け(キュアリング)した食品です。一方、スジュク・ドネルケバブに使うひき肉には、通常は発酵も塩漬けも行われません。著者らは、発酵や塩漬けが微生物の増殖を抑え、酸化を防ぎ、風味や保存性を高める役割を持つことに着目しました。そこで、発酵、発酵時間、塩漬けの工程が、冷蔵・冷凍保存中の残留亜硝酸や品質特性にどう影響するかを総合的に評価することを目的としました。論文によれば、この食品についてこうした組み合わせの影響を包括的に評価した研究は、これまでなかったといいます。
どのように調べたか
研究チームは、牛の赤身ひき肉75%と牛脂25%に塩や香辛料を加えた生地を作り、5種類のスジュク・ドネルケバブを用意しました。
1つ目は、発酵も亜硝酸ナトリウムの添加もしない対照品です。残りは、乳酸菌のスターターカルチャー(発酵を始めさせるために加える微生物)を加えて発酵させたもので、24時間発酵させた「半発酵」品と、72時間発酵させた「発酵」品があります。半発酵品と発酵品には、それぞれ亜硝酸ナトリウムを100ppm加えたものと加えないものを用意しました。スターターには、乳酸菌の一種であるラクチプランチバチルス・プランタルムとラクトバチルス・サケイが使われました。発酵は20℃、湿度95%の条件で行われました。
焼いて薄切りにした後、真空包装して4℃(冷蔵)または−18℃(冷凍)で30日間保存しました。主な測定項目は次のとおりです。調理による重量の減少、pH(酸性度)、水分活性(微生物が利用できる水分の目安)、色、食感、脂質の酸化の程度、残留亜硝酸、香り成分、官能評価、微生物の数などです。なお、冷蔵と冷凍の結果はそれぞれ別々に統計処理されており、保存方法どうしの直接比較は行われていません。
主な結果
発酵の有無と長さは、まずpHにはっきり表れました。製造当日のpHは、対照品で最も高く、72時間発酵させた製品で最も低く、半発酵品はその中間でした。著者らはこれを、乳酸菌が発酵中に作る有機酸によるものと考えています。亜硝酸ナトリウムの添加は、製造当日のpHには影響しませんでした。冷蔵保存中は、半発酵品でpHが徐々に下がりました。
調理による重量の減少は、72時間発酵させ亜硝酸を加えなかった製品で最も大きくなりました。最も小さかったのは、24時間発酵させ亜硝酸を加えた製品です。論文では、酸性になると肉のたんぱく質が水を保持しにくくなることが一因と考察されています。
色については、亜硝酸ナトリウムを加えた製品で、製造当日に赤みが強くなりました。保存中に赤みはいくらか低下しました。それでも30日後には、冷蔵・冷凍ともに他の製品より赤みが高く保たれていました。食感への影響は限定的で、製品ごとに異なる傾向が見られました。
脂質の酸化の目安となる指標(TBARS値)は、製造当日に対照品で最も高く、発酵させた4種類の製品ではいずれも低くなりました。対照品と比べた低下率は約36〜48%でした。この時点では、発酵時間や亜硝酸の有無にかかわらず、発酵させた製品で酸化の程度が低かったことになります。著者らは、乳酸菌の代謝活動がこの酸化の抑制に関わっている可能性を指摘しています。
研究が示すこと
スジュク・ドネルケバブは、本来は発酵させない食品です。この研究は、そこに発酵や亜硝酸塩による塩漬けの工程を取り入れると、酸性度、調理時の水分の失われ方、色、脂質の酸化といった品質の特徴が変わることを示しています。
特に、製造当日の測定では、発酵させた製品で脂質の酸化が抑えられていました。また、亜硝酸塩を加えた製品では、30日間の冷蔵・冷凍保存後も赤い色が保たれていたことが報告されています。結果は発酵の長さによっても異なっており、加工条件の選び方が製品の性質を左右することがうかがえます。
原著論文の著者・所属:Ayşe Sinan(Faculty of Engineering and Natural Sciences, Department of Food Engineering Suleyman Demirel University Isparta Türkiye)、Birol Kılıç(Faculty of Engineering and Natural Sciences, Department of Food Engineering Suleyman Demirel University Isparta Türkiye)、Azim Şimşek(Department of Food Processing Isparta University of Applied Sciences, Egirdir Vocational School Isparta Türkiye)、Melis Yıldız(Faculty of Engineering and Natural Sciences, Department of Food Engineering Suleyman Demirel University Isparta Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ayşe Sinan, Birol Kılıç, Azim Şimşek, et al. Influence of Fermentation and Curing on Residual Nitrite, Physico‐Chemical, Volatile, Sensory, and Microbiological Properties of Sucuk Döner Kebab During Refrigerated and Frozen Storage. Food Science & Nutrition 2026-07-29. DOI: 10.1002/fsn3.72144. 原著ライセンス:CC BY.