著者の所属・活動拠点の国は、ブラジル、ポルトガルです。
掲載誌:Journal of the Science of Food and Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:日が短い季節のピタヤ栽培と夜間の補光
ピタヤ(ドラゴンフルーツ)はサボテン科セレニケレウス属の植物がつける熱帯果実で、日が長い時期に花を咲かせる性質があります。ブラジルの主要産地では、日の長さが11〜11.9時間ほどになる4月から8月にかけて開花が抑えられ、果実の生産がほぼ止まります。
この時期に夜間に人工の光を当てて日の長さを補う「補光」を行うと、開花を促せることがこれまでの研究で示されてきました。中米、台湾、ベトナムの品種では、補光によって果肉の量や甘さが増えたという報告もあります。一方で、ブラジルで栽培されるピタヤについては、補光の影響を示す科学的な知見がありませんでした。
そこで研究チームは、開花期の補光が3品種のピタヤの果実品質にどのような影響を与えるかを調べました。
何をどう調べたか
対象は、セレニケレウス・ウンダツス種の「ボレアル・レッド」と「シネーザ」、セレニケレウス・コスタリセンシス種の「ロシャ・ド・パラー」の3品種です。ブラジル・ミナスジェライス州の農園の約1ヘクタールで、開花期の20日間、毎晩20時から0時までの4時間、植物の光合成に使われる波長域(400〜700ナノメートル)の光を出すLEDランプで補光しました。補光に使った電力は、すべて農園の太陽光パネルでまかなわれています。比較のため、同じ環境で補光をしない区画の果実も調べました。
果実は、外皮のうろこ状の部分が半分緑・半分ピンクになった出荷に適した熟度で収穫しました。研究チームは、果実の重さ、果肉の割合、皮と果肉の色、硬さ、酸味や甘さの指標、果糖・ブドウ糖・ショ糖の量、ピタヤ特有の赤や黄の色素であるベタレイン、ポリフェノールやフラボノイド、抗酸化力、ビタミンCを測定し、補光の有無と品種の違いによる差を統計的に比べました。
主な結果:重さと糖、ビタミンCが増える一方、変わらない項目も
論文によると、補光を受けた果実は3品種すべてで重くなりました。増え方はボレアル・レッドが38.10%と最も大きく、ロシャ・ド・パラーが20.30%、シネーザが9.50%でした。ただし、果実全体に占める果肉の割合(果肉歩留まり)は、すべての品種でむしろ下がりました。著者らは、重さの増加が果肉そのものの増加ではなく、皮の厚さなど果実の構造の変化と関係している可能性を挙げていますが、この点は今回直接測定していないとしています。
甘さに関わる成分では、果糖が3品種すべてで補光により増えました。たとえばボレアル・レッドでは、果肉1キログラム(生の重さ)あたり40.3グラムから55.9グラムに増えています。ブドウ糖はボレアル・レッドでのみ明確に増え(20.6グラムから35.0グラム)、ショ糖はボレアル・レッドで増えた一方、シネーザでは減り、ロシャ・ド・パラーでは差がありませんでした。果汁に溶けている糖などの量の目安となる「可溶性固形分」も、補光によってすべての品種で高まったと報告されています。
このほか、補光によってビタミンCが増え、皮の色の明るさや鮮やかさ、果肉の色合いにも変化が見られました。一方、酸味の指標である滴定酸度、色素のベタレイン、フラボノイドの量、抗酸化力については、補光による統計的に意味のある差は認められませんでした。
品種による違いも見られました。ポリフェノールはロシャ・ド・パラー、フラボノイドはボレアル・レッド、ビタミンCはシネーザで最も多いという結果でした。
研究が示すこと
著者らは、開花期の夜間補光がピタヤの果実品質に大きく影響し、果実の重さ、糖、ビタミンCを高めうると結論づけています。3品種の中では、ボレアル・レッドが重さと糖の蓄積で最も一貫した反応を示しました。ほかの2品種も補光に反応しましたが、効果は測定項目によって異なっていました。
重さが増えても果肉の割合は増えなかったこと、色素や抗酸化力には差が出なかったことも含め、この研究は、補光の効果が品種や品質の項目ごとに一様ではないことを示しています。著者らは、日が短い条件で品質を高め、時期外れの生産を可能にする手段として補光は有望だとしつつ、収量への影響は今後さらに評価が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Luíz Guilherme Malaquias da Silva(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Carlos Alexandre Rocha da Costa(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Giovanni Aleixo Batista(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Estela Corrêa de Azevedo(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Fabrício Teixeira de Lima Gomes(Department of Soil Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Laryssa Ribeiro Calcagnoto(Department of Statistics Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Gabriel Luis Castiglioni(School of Agronomy of the Federal University of Goiás Goiânia Brazil)、Marcelo Ângelo Cirillo(Department of Statistics Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Danilo José Machado de Abreu(Biology Department Federal University of Lavras Lavras Brazil)、Flávia Matias Oliveira da Silva(MED – Mediterranean Institute of Agriculture, Environment and Development CHANGE – Institute for Global Change and Sustainability, University of Évora, Polo da Mitra Évora Portugal; Polytechnic Institute of Beja, Higher School of Agriculture, Rua Pedro Soares Beja Portugal)、Katiúcia Alves Amorim(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Leila Aparecida Salles Pio(Department of Agriculture Federal University of Lavras Lavras Brazil)、Eduardo Valério de Barros Vilas Boas(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)、Elisângela Elena Nunes Carvalho(Department of Food Science Federal University of Lavras (UFLA) Lavras Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luíz Guilherme Malaquias da Silva, Carlos Alexandre Rocha da Costa, Giovanni Aleixo Batista, et al. The effect of light supplementation on the changes in outer and inner fruit quality of different Selenicereus spp. cultivars. Journal of the Science of Food and Agriculture 2026-07-29. DOI: 10.1002/jsfa.70914. 原著ライセンス:CC BY.