日本関連:この研究は海外機関を中心とする国際共同研究で、日本の研究機関に所属する共著者が参加しています。参加国はインドネシア、日本です。

掲載誌:Indonesian Journal of Electronics Electromedical Engineering and Medical Informatics

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

インドネシアでは、学童の栄養状態を改善するため、学校で無償の栄養給食を提供する「無償栄養給食プログラム(MBG)」が実施されています。しかし著者らによると、提供される食事が栄養基準を十分に満たしていない可能性があり、1食あたりの目標531キロカロリーに対して平均377キロカロリーにとどまり、たんぱく質と脂質も不足していると指摘されています。

給食について一般に入手できる情報の多くは料理の写真で、年齢や性別に応じた栄養情報は示されていません。そのため、教員や生徒、保護者が、受け取った食事で栄養が足りているかを自分で確かめるのは難しい状況です。

そこで研究チームは、給食トレーの写真から料理の種類を自動で見分け、インドネシアの食品成分表(TKPI)とインドネシアの栄養所要量(AKG)に照らして栄養の充足度を推定するシステムの開発に取り組みました。料理の識別には、画像の中の物体を高速に検出する人工知能の手法「YOLO(You Only Look Once)」を用いています。著者らは、YOLOを使うこと自体ではなく、料理の検出結果、国内の食品成分表、学校段階・年齢・性別ごとの栄養所要量、検出結果を人が手で修正できる仕組みの四つを一つにまとめた点を、この研究の新しさとして挙げています。

どのように調べたか

研究チームは、ネット上で公開されている給食トレーの写真や、給食を提供する機関の公式SNSアカウントの写真を集めました。不鮮明な写真や一部が切れた写真などを除き、最終的に51種類の料理を含む1200枚の画像を用意しました。ご飯、揚げ鶏、テンペ(大豆の発酵食品)、果物、牛乳などが料理の分類に含まれています。

このうち240枚は最後の性能確認用として別に取り分けました。残りの画像を使い、YOLOの五つの版(YOLO 8からYOLO 12)を同じ条件で学習させ、性能を比べています。比較には、データを5つに分けて学習用と確認用を入れ替えながら評価する「5分割交差検証」を用いました。さらに、選んだ条件で学習し直したモデルを240枚の画像で評価し、その結果から画像を無作為に選び直す計算を1000回繰り返して(ブートストラップ法)、性能のばらつきも確かめています。

写真からは料理の重さを直接測れません。そこでシステムでは、検出された料理ごとにあらかじめ決めた標準的な1人前の重さを当てはめます。その重さと食品成分表をもとに、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食物繊維、カルシウム、鉄の量を計算します。こうして求めた量を、生徒の学校段階・年齢・性別に応じた1日の栄養所要量の30%(1食分の目標)と比べ、「充足」か「不足」かを判定する仕組みです。

主な結果

料理を見分ける精度を示す代表的な指標(mAP50)の平均は、五つの版のいずれもおよそ0.89〜0.90で、大きな差はありませんでした。それでも統計的な検定では、モデル間の差は有意と判定されました。研究チームは、ブートストラップ法による評価で平均順位が最も高かったYOLO 8を、システムに組み込むモデルとして選んでいます。

栄養の推定がどの程度正確かを確かめるため、研究チームはシステムの計算結果を、給食に関わる栄養士の評価と比べました。五つの栄養素について比べた結果、平均の誤差は割合にして40.31%でした。栄養素の中では、エネルギーと炭水化物が栄養士の評価に最も近い値を示しています。

また、1人前の重さの想定が20%ずれた場合に結果がどう変わるかも調べています。その結果、鉄とカルシウムの充足度が最も大きく影響を受けることが分かりました。

この研究が示すこと

この研究は、給食の写真から料理を見分け、国内の食品成分表と、生徒一人ひとりの条件に合わせた栄養所要量に結びつけて充足度を推定する流れを、一つのシステムとして示しました。

一方で著者らは、栄養の値が実際に測った重さや量ではなく標準的な1人前の想定に基づいているため、得られる結果は推定であり、栄養が足りているかどうかを確定的に判断するものではないと強調しています。著者らはこのシステムを、給食の栄養をおおまかに点検するための手段として位置づけています。

原著論文の著者・所属:Amelia Prachintya Putri Arifin(Information Systems Study Program, Faculty of Engineering, Universitas Negeri Surabaya, Surabaya, Indonesia)、Wiyli Yustanti(Master’s Study Program in Informatics, Faculty of Engineering, Universitas Negeri Surabaya, Surabaya, Indonesia)、Mega MIrasaputri Cahyanti(Graduate School of Innovation and Technology Management, Yamaguchi University, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amelia Prachintya Putri Arifin, Wiyli Yustanti, Mega MIrasaputri Cahyanti A YOLO-Based Framework for Automated Food Recognition and Nutrient Adequacy Estimation in the Free Nutritious Meal Program. Indonesian Journal of Electronics Electromedical Engineering and Medical Informatics 2026-10-18. DOI: 10.35882/ijeeemi.v8i4.386. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。