著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタンです。

掲載誌:Functional Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ホソバグミ(学名Elaeagnus angustifolia L.、英名オレアスター)の果実は、食物繊維、ペクチン、有機酸、ミネラル、ビタミンC、抗酸化作用をもつフェノール化合物などを多く含みます。そのため、小麦粉を主体とするパンの栄養面を高める素材として注目されています。一方で、こうした植物素材で小麦粉を多く置き換えると、生地の骨格となるグルテンのつながりが弱まり、パンが膨らみにくくなることも知られています。

研究チームが取り組んだのは、イーストを使わずに機械で空気を練り込み、その後冷凍する「機械通気冷凍生地」です。通常のパン生地はイーストの発酵で膨らむため、解凍後の発酵工程で気泡をつくり直せます。しかしこの方式では、気泡の構造が冷凍前にできあがっており、解凍後に作り直すことができません。このため、配合と加工条件の両方が仕上がりを大きく左右します。

著者らは、ホソバグミ果実粉末をどの程度加え、どのような加工条件で作れば、栄養面を高めながら生地の性質やパンの構造、食味を保てるのかを明らかにすることを目的としました。なお、測定したのは製造上の特性と成分であり、食べた人の体への作用は調べていないと論文は明記しています。

どのように調べたか

研究チームはカザフスタン産のホソバグミの果実を乾燥・粉砕して粉末にしました。この粉末で小麦粉の10%、20%、30%を置き換えた生地を作り、置き換えなしの生地と比べました。生地にはイーストを入れず、小麦粉、水、食塩、クエン酸だけを使っています。

生地は密閉した圧力容器の中で、圧縮空気を加えながら泡立て器状の羽根でかき混ぜ、細かい気泡を含ませました。その後、袋に詰めて冷凍し、マイナス18度で30日間保存しました。最後に電子レンジで解凍し、オーブンで焼き上げています。

まず、どの置き換え量が適切かを検討し、そこで選ばれた20%の配合について加工条件を詳しく調べました。変えた条件は、かき混ぜる速さ(毎分450回転と900回転)、かき混ぜる時間(3分と7分)、電子レンジでの解凍時間(4分と8分)、冷凍温度(マイナス38度とマイナス14度)です。計画上はこれらを組み合わせた16通りでしたが、論文で数値が報告されているのはマイナス38度で冷凍した8通りに限られます。

評価項目は多岐にわたります。生地については、加熱しながら練ったときの粘りや強さの変化、押したときの変形と元に戻る度合い(弾性)を測りました。焼いたパンについては、重さあたりの体積、内部の気泡の割合、たんぱく質や食物繊維などの成分を調べ、さらに訓練を受けた12人の評価者による5段階の官能評価も行いました。

主な結果

試した置き換え量のうち、20%が栄養面の向上と製造上の扱いやすさの釣り合いが最もよいと判断されました。加工条件は、生地とパンの性質に大きく影響しました。

報告された8通りの中で総合的に最もよい結果を示したのは「試料7」です。これは毎分900回転で3分間かき混ぜ、マイナス38度で冷凍し、電子レンジで4分間解凍した条件です。この試料のパンは、100グラムあたりの体積が約242立方センチメートル、内部の気泡の割合が約57.7%でした。生地の弾性的な変形は約0.914ミリメートル、官能評価の総合的な好ましさは5点満点で約4.90でした。つまり、高速・短時間で空気を含ませ、短めに解凍する組み合わせが、今回の比較の中で最も好ましい結果につながったことになります。

栄養面では、ホソバグミを加えたパンのたんぱく質と食物繊維が多くなり、100グラムあたり最大でそれぞれ約9.7グラム、約7.2グラムと報告されています。また、ホソバグミ入りの生地は、酸の量を化学的に測る「滴定酸度」が対照の生地よりやや高い値を示しました。著者らは、これを果実粉末に含まれる有機酸によるものと考えています。

論文は、試料7が報告された8通りの中での比較に基づく選択であり、全条件を通じて統計的に確かめられた最適条件ではないことも明記しています。マイナス14度で冷凍した条件の数値は示されていないため、冷凍温度の違いによる影響については、今回の報告データからは結論できないとしています。

研究が示すこと

この研究は、小麦粉の20%をホソバグミ果実粉末で置き換えた配合でも、空気の練り込み、冷凍、解凍の条件をそろえて管理すれば、イーストを使わない冷凍生地から、食物繊維やたんぱく質を増やしつつ、膨らみや食感、食味を保ったパンが作れることを示しました。気泡を後から作り直せない生地だからこそ、素材の配合と加工条件を一体として調整することが重要だという点が、本研究の伝える要点です。

原著論文の著者・所属:Sholpan Tursunbayeva(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Bauyrzhan Iztayev(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Zhuldyz Nurgozhina(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Auyelbek Iztayev(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Madina Yakiyayeva(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Maxat Mamyrayev(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)、Bayan Muldabekova(Faculty of Food Technology, Almaty Technological University, Almaty 050012, Kazakhstan.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sholpan Tursunbayeva, Bauyrzhan Iztayev, Zhuldyz Nurgozhina, et al. Development of oleaster-enriched functional bread using mechanically aerated frozen dough: Nutritional enhancement, rheological properties, and process optimization. Functional Food Science 2026-10-26. DOI: 10.31989/ffs.v6i10.2133. 原著ライセンス:CC BY.