秋の店先で

旬を迎える9月から11月上旬ごろ、店先に松茸が並びます。同じ棚のしいたけやしめじと比べると、値段がまるで違います。松茸は昔から高級品で、江戸時代には「まつたけ百匁(もんめ、375g)は米1升」といわれ、375gの松茸に米1升(およそ1.5kg)と同じ値打ちがありました。

しいたけやしめじは、人が育てて出荷しているきのこです。では、松茸はなぜ育てられず、山で採れる天然ものしかないのでしょうか。

生きた松の根がないと育たない

松茸は、生きたアカマツなどの根と結びついてはじめて育つきのこです。木を切って作る原木や、おがくずを固めた培地で育つしいたけやしめじとは、育ち方が根本から違います。この結びつきを人の手で再現する方法はまだ見つかっておらず、人工栽培に成功した例はありません。

国産は100分の1以下に減った

かつては、国内で年に1万トンを超える松茸が採れていました。1940年代のことです。2024年は50トンで、100分の1以下に減っています。

減ったのは、松茸の出る松林が荒れたためです。手入れされずに放っておかれる松林が増えました。雑木が茂って林の中が暗くなり、地面に落ち葉が厚く積もると、松茸は出にくくなります。

林に手を入れれば、松茸が戻ることも確かめられています。茨城県の試験では、アカマツ林の木を間引き、落ち葉をかき取るなどの手入れをしたところ、手入れを始めて4年目以降に、松茸の出る本数が大きく増えました。

国内で採れる量がここまで減ったため、いま食卓にのぼる松茸の95%以上は輸入品です。

国産の9割近くは長野と岩手

わずかに残る国産の松茸は、どこで採れているのでしょうか。2024年産の国内の生産量を都道府県別に見ると、長野が74.5%、岩手が13.1%で、この2県で9割近くを占めます。和歌山と岡山が4.6%ずつで続きます。都道府県ごとの生産量の移り変わりは、まつたけの産地・生産量のページで見られます。

丹波マツタケと「ころ」「椀」「開き」

生産量では上位に入らない京都府にも、名の知れた松茸があります。南丹市・綾部市・福知山市の松茸は「丹波マツタケ」として流通し、香りの良さと弾力のある歯ごたえが特徴とされています。

京都では、松茸は育つにつれて呼び名が変わり、若いものから順に「ころ」「椀」「開き」と呼ばれます。いちばん育った「開き」は、香りが強いとされています。

成分表で見る松茸

日本食品標準成分表(八訂)の「まつたけ 生」には、エネルギーやたんぱく質などの基本の成分から、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、脂肪酸まで、数多くの成分の値が載っています。すべての値はまつたけ(生)のページで見られます。ここでは、基本の成分と、松茸で目立つ成分を取り上げます。値はどれも、いしづき(柄の根元)を除いた可食部100gあたりです。

基本の成分まつたけ(生)可食部100gあたり
水分88.3g
エネルギー32kcal
たんぱく質2.0g
脂質0.6g
炭水化物8.2g
食物繊維総量4.7g

松茸も、ほかのきのこと同じく、中身の9割近くが水分です。

ほかの食品と比べて目立つのは、セレンとパントテン酸です。成分表に載る2,541食品を多い順に並べると、松茸のセレン82µg、パントテン酸1.91mgは、どちらも上位5%に入ります。セレンは、体の中で酸化を防ぐ酵素の材料になるミネラルです。パントテン酸はビタミンB群の一つで、糖や脂肪酸の代謝に広く関わります。

手に入れたら、香りを生かす

高い松茸を買ったなら、香りを存分に味わいたいところです。京都では、香りの強い「開き」を薄く切り、米と昆布だしなどで炊いて、仕上げに三つ葉を添えます。料亭や割烹で出されるほか、産地に近い家庭でも作られる、秋の松茸ごはんです。

※食品・栄養素の参考資料:東京大学演習林「マツタケの人工栽培に挑戦」、茨城県「マツタケの栽培化に向けた取り組み」、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 第1章 説明、松茸ごはん 京都府 | うちの郷土料理:農林水産省、農林水産省 特用林産物生産統計調査

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省