掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
麻の実を挽いた粉(ヘンプシードフラワー、以下「麻の実粉」)は、栄養に富む植物性の食品素材として注目され、機能性食品への利用が期待されています。しかし、食品として使う前に加熱すると、その栄養成分や生体に働きかける成分(生理活性成分)は、加熱の方法によって変化しうると考えられます。
この研究で著者らが目的としたのは、加熱していない麻の実粉の栄養面・機能面の性質を明らかにすることと、焙煎(乾いた熱で煎ること)と蒸し(水蒸気で加熱すること)という二つの加工がその性質をどう変えるかを調べることです。
何をどう調べたか
研究チームは麻の実を焙煎または蒸したうえで挽いて粉にし、分析に用いました。加熱していない麻の実粉と、比較対象としての小麦粉も合わせて調べています。
測定したのは、ミネラル、ビタミン類、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、DPPH法による抗酸化活性(活性酸素などの働きを抑える力を測る指標のひとつ)、総ポリフェノール含量、および植物由来の成分(ファイトケミカル)です。いずれも標準的な方法によって評価されたと報告されています。
報告された主な結果
論文によれば、小麦粉と麻の実粉の各試料の間には統計的に意味のある差(p≤0.05)が認められました。麻の実粉はカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅のいずれも小麦粉より多く含み、なかでも加熱していない麻の実粉のミネラル量が最も高かったと報告されています。
加熱していない麻の実粉は、ビタミンE、B群ビタミン、L-アスコルビン酸、抗酸化活性についても高い値を示しました。加工法による違いとしては、焙煎は総ポリフェノール含量を高め、一方で蒸しは複数のビタミンと抗酸化性をよりよく保っていました。
ファイトケミカルでは、フラボノイド、アルカロイド、サポニンが加熱していない麻の実粉で多く、タンニンは焙煎した麻の実粉で多かったとされています。
この結果が示すこと
著者らは全体として、蒸しは栄養素の保持に有利であり、焙煎はポリフェノールを高めると総括しています。つまり、どちらの加工が優れているというより、何を残したいかによって適した加工が変わるということです。
麻の実粉の栄養的な質と機能面での可能性は、加工の条件によって左右される――この研究が伝えているのは、その点の重要性です。
著者:Garvita Agarwal, Parul Sharma, Arushi Bisht
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Garvita Agarwal, Parul Sharma, Arushi Bisht. Nutritional and Bioactive Composition of Hemp Seed Flour and Effect of Processing on Quality Characteristics. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-09-26. DOI: 10.5281/zenodo.22978395. 原著ライセンス:CC BY.