汗ばむ日が続くこの7月下旬、食欲が細るこの季節にすっと箸が進むのがなす 果実 生だ。夏が旬の淡色野菜で、可食部の約93%を水分が占める。ビタミンやミネラルは控えめだが、その代わりに軽さそのものが持ち味になる野菜だと言える。焼いても煮ても揚げても、するりと食べられる感覚は、この水分量に支えられている。

実際の数値を見ると、なすは100gあたりわずか18kcalしかない。同じ100gでたんぱく質は1.1g、脂質0.1g、炭水化物5.1g、食物繊維総量は2.2gと、油を吸いやすい見た目に反して素材そのものは驚くほど軽い。暑さで体が重だるく感じる時期に、なすがすんなり受け入れられるのは、この「軽さ」の数値的な裏付けがあってこそだろう。

酸味の正体はリンゴ酸、そして紫の皮の彩り

なすの呈味を支える有機酸を見ると、リンゴ酸が0.2gで最も多く、キナ酸0.1gがこれに続く。りんごやぶどう(ワイン)にも多く含まれる代表的な酸味成分で、なすの奥にある微かな酸味の主役はこのリンゴ酸ということになる。

そしてなすといえば、あの深い紫の皮を思い浮かべる人も多いはずだ。この色はアントシアン系の色素成分でポリフェノールの一種、ナスニンによるもの。切り口が変色するのは、同じくポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の仕業とされる。この二つのポリフェノールには抗酸化作用があるとされ、色の濃さと機能性がセットになっているのが、なすという野菜のおもしろいところだ。もっとも、なすは焼き浸しや煮浸しなど加熱調理が主役になりやすい野菜でもあり、色素の恩恵をそのまま体感できるかは食べ方次第という側面もある。

ここで一つ意外な広がりがある。長年「なすは加熱してこそ」というイメージが強かったが、水分の多い水なすはアクが少なく生食に向き、最近では全国で手に入りやすくなった。皮の薄いサラダ用のなすとして冷やしてそのまま食べれば、夏の暑さの中でひときわ涼を感じられる食べ方になる。加熱前提だった野菜に、生食という第三の選択肢が加わったわけだ。

1本分で、ちょうどいい一皿に

なすは長なす・丸なす・米なす・水なすと品種によって表情が変わり、田楽や煮物、洋風の煮込みなど使い道もそれぞれ違う。なすは品種にもよるが1本あたり100gに満たないものが多く、18kcalという数値を基準に考えると、油で焼いても煮浸しにしても、罪悪感なく一皿に組み込める軽さがある。ちなみに夏のなすは種が多くみずみずしく、秋になると皮が薄くやわらかい「秋なす」に表情を変えていく。今はまさに夏らしい、みずみずしいなすを楽しむ時期だ。

保存も含めて、軽やかに付き合う

なすはへたも皮もそのままポリ袋に入れて冷凍でき、焼きなすにして冷凍しておけば、暑い日の副菜がすぐに一品増える手軽さもうれしい。漬物にすれば味がなじみ、より長く楽しめる保存方法にもなる。

93%が水分で18kcalという軽さは、決して「栄養が少ない」というだけの話ではない。暑さで重い食事を避けたい今の季節に、するりと寄り添える野菜としての個性そのものだ。生でも焼いても煮ても形を変えるなすを、今年の夏はどの品種で楽しむか。次に手に取るとき、その一皿の軽さの理由を思い出せたら、また一つなすの味わい方が変わってくるはずだ。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。