この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Epidemiology Biostatistics and Public Health

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

地中海式の食文化が根づくイタリアでは、朝・昼・夕といった食事の時間構造が文化的に定着しています。著者らは、この時間構造が現代的な生活様式の圧力にさらされつつあるとしたうえで、食事データを「いつ・何を・誰が」という三つの側面から同時に分析することを目指しました。

従来よく使われる主成分分析などの二次元的な手法は、個人・栄養素・時間という三次元の構造を同時に扱うことができません。そこで研究チームは、三元データを分解できる手法であるTucker3(タッカー・スリー)を用いて、時間帯と栄養摂取の組み合わせに潜む典型的なパターン(クロノ栄養学的な原型)を取り出し、それが人口統計的属性や生活習慣とどう結びつくかを調べることを研究目的としました。

何をどう調べたか

用いられたのは、第4回イタリア全国食品消費調査(IV SCAI、2017〜2020年)のデータです。この調査には生後3か月から74歳までの1,969人が参加し、連続しない2日分の24時間思い出し法(前日に食べたものを聞き取る方法)で食事が記録されました。本研究ではこのうち18歳以上の成人915人を分析対象としています。

対象とした栄養素は、エネルギーを産生する4つのマクロ栄養素(アルコール、炭水化物、脂質、たんぱく質)です。これを個人915人×栄養素4種×時間帯6区分という三次元の配列に整理し、Tucker3で分解しました。モデルの次元は凸包ヒューリスティックという基準で(2,2,4)が選ばれ、kcalデータに対する適合度は84.14%と報告されています。さらに、個人ごとに得られたスコアを11の人口統計・生活習慣変数と照らし合わせ、相関分析、分散分析、t検定、重回帰分析で特徴づけを行いました(生活習慣データが揃った877人が対象)。

主な報告結果

まず、エネルギー摂取量のばらつきがどこから来ているかを分解した結果、時間帯そのものが29.15%、栄養素が17.02%、個人と時間の交互作用が18.83%を占め、これらが主要な変動源でした。加えて個人・栄養素・時間の三者が絡み合う交互作用も16.67%を占めており、著者らはこの結果が三元的な手法を用いる妥当性を裏づけるとしています。一方、個人単独の要因は3.65%にとどまりました。

取り出された成分のうち、時間の側面(Cモード)は4つに整理されました。深夜の間食に対応する成分、昼食と夕食の双方に対応する成分、朝の食事に対応する成分、そして昼食と夕食を対比させる成分です。栄養素の側面(Bモード)は2つで、脂質・たんぱく質と炭水化物を対比させる成分と、炭水化物と脂質がともに持続的に摂取される成分でした。

これらの組み合わせのうち最も大きかったのは、集団の平均的な個人パターン×炭水化物と脂質の持続的摂取×昼食と夕食という組み合わせで、エネルギー摂取が昼と夕に集中する姿を表しています。また、炭水化物中心で脂質の乏しい朝食に対応する組み合わせも捉えられました。もう一方の個人成分(A1)は、摂取カロリーが昼食に偏って集中する人々を特定するものでした。このA1のパターンは、イタリア南部に居住していること(p = 0.006)や就業状況(退職について p = 0.027)と統計的に有意な関連を示した一方、体格指数(BMI)とは関連が認められませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、Tucker3による三元成分分析がイタリア成人の食事の時間構造を、個人・マクロ栄養素・時間という解釈可能な成分へと分解できたと結論づけています。エネルギー摂取のばらつきの大きな部分は、時間帯と栄養素それぞれの主効果、さらに三者の交互作用によって説明されました。

食事を「何をどれだけ食べたか」という総量だけで捉えると、こうした時間方向の構造は見えなくなります。この研究は、食べる時刻という次元を統計モデルに組み込むことで、集団に共通する食事リズムと、そこから外れる個人差の両方を同じ枠組みで記述できることを示しました。著者らはこの結果を、クロノ栄養学の研究における方法論的アプローチとしてTucker3分析を用いることを支持するものと位置づけています。なお、南部居住や退職との関連は統計的な結びつきとして報告されたものであり、因果関係を示すものではありません。

著者:Vanessa Nwajei(Sapienza University of Rome)、Denise Pires Marafon(Sapienza University of Rome)、Luigi Palla(Sapienza University of Rome)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vanessa Nwajei, Denise Pires Marafon, Luigi Palla Eating by the Clock: A Three-Mode Component Analysis of Temporal Dietary Patterns in the Italian Adult Population From IV SCAI Nutrition Survey 2017–2020. Epidemiology Biostatistics and Public Health 2026-09-22. DOI: 10.54103/2282-0930/32174. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。