著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Journal of Global Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
糖尿病は、慢性的な高血糖を特徴とする代謝の病気で、世界的に患者数が増えています。論文によると、糖尿病のある人は痛風を併せ持つことが多く、両者には共通する遺伝的要因もあると報告されています。食事は、糖尿病と痛風のどちらでも見直せる要素とされています。しかしこれまでの研究は、食事パターンと糖尿病、または食事パターンと痛風を別々に調べたものが中心でした。糖尿病と痛風が同時にある状態と食事との関係は、よく分かっていませんでした。
そこで研究チームは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを使い、糖尿病のある成人を対象に、食事パターンと痛風の併存との関連を調べました。あわせて、その関連の一部を説明する指標があるかどうかも検討しました。候補としたのは、血糖の代謝、炎症、血液中の尿酸、腎機能などに関わる指標です。
何をどのように調べたか
著者らは、2007〜2018年の6回分の調査データ(3万4770人)から、糖尿病のある5067人を解析対象としました。糖尿病の判定には、血液検査の値、医師に診断されたという自己申告、治療薬の使用などを用いました。痛風は、医師などから痛風と診断されたことがあるかという質問に「はい」と答えた人としました。
食事は、24時間以内に食べたものを聞き取る調査をもとに評価しました。食事全体の傾向を点数にする指標を5種類使いました。そのうち4種類は、食事の質の高さを表す指標です。米国の食事指針にどれだけ沿っているかをみる健康的食事指数(HEI-2020)、高血圧予防の食事法として知られるDASH、地中海式の食事にどれだけ近いかをみるaMED、代替健康的食事指数(AHEI)がこれに当たります。指標によって構成要素は異なります。ただし、おおむね野菜、果物、全粒穀物などを多くとり、赤身肉・加工肉や甘い飲み物などを控えるほど点数が高くなる仕組みです。
残る1種類の食事炎症指数(DII)は、考え方が異なります。DIIは栄養素や食品成分から、その食事が体内の炎症を起こしやすい度合いを示す指標で、点数が高いほど炎症を促しやすい食事を意味します。論文は、これまでの研究でDIIが高いほど糖尿病や痛風のリスクが高い関連が報告されていると紹介しています。
解析では、年齢などの属性、生活習慣、検査値、持病などの影響を調整しました。そのうえで、食事スコアと痛風の併存との関連を「オッズ比」で示しました。オッズ比が1より小さい場合、スコアが高い人ほど痛風を併せ持つ割合が低い傾向にあることを意味します。さらに「媒介分析」も行いました。これは、食事と痛風の関連のうち、どの程度が特定の体の指標を経由して説明されるかを推定する方法です。
主な結果
対象者5067人のうち、561人(10.5%)が痛風を併せ持っていました。痛風のある人では、男性、60歳以上、肥満の人が多くみられました。また、高血圧、心血管疾患、慢性腎臓病を併せ持つ人も多くみられました。
すべての要因を調整したモデルでは、HEI-2020、DASH、aMEDの3つのスコアが高いほど、痛風を併せ持つオッズが低いという関連が報告されました。オッズ比はそれぞれ0.82、0.83、0.86でした。欠けているデータを統計的に補う方法で解析し直しても、結果の方向と大きさはおおむね同じでした。
媒介分析では、炎症の目安となる、血液中の好中球とリンパ球の比(NLR)に注目しました。NLRは、3つの食事パターンすべてで、関連の6.0〜8.0%を説明すると推定されました。TyG-WHtRも検討しました。これは、中性脂肪・血糖の値に、腹囲を身長で割った値(腹囲身長比)を組み合わせた指標で、インスリンの効きにくさやお腹まわりへの脂肪のつき方に関わる状態を反映するとされます。この指標は、DASHの関連の40.2%、HEI-2020の関連の22.8%を説明すると推定されました。一方、中性脂肪と血糖だけから求める指標(TyG)では、統計的に有意な媒介は確認されませんでした。aMEDでは、血液中の尿酸値が関連の16.3%を説明すると推定されました。
心血管疾患の有無、慢性腎臓病の有無、喫煙の有無などで分けた解析では、一部の集団で関連の強さに違いがみられました。ただし、集団間の差を確かめる統計的な検定では、有意な違いは確認されませんでした。著者らはこれらを探索的な結果と位置づけています。
研究から分かること
この研究は、糖尿病のある米国成人で、HEI-2020、DASH、aMEDといった質の高い食事の指標の点数が高い人ほど、痛風を併せ持つ割合が低いという関連を示しました。その関連の一部は、炎症、インスリンの効きにくさやお腹まわりの脂肪の蓄積、尿酸に関わる経路で説明できる可能性があります。複数の指標で同じ傾向がみられた点について、著者らは次のように述べています。指標どうしの構成要素が重なっているため、個々の食事法の独自の効果というより、食事全体の質を反映している可能性が高いという見方です。
一方、この研究は一時点のデータを分析したもので、食事が痛風を防ぐという因果関係を示したものではありません。痛風の判定は自己申告に基づいており、媒介分析も探索的な位置づけです。対象は米国の人々に限られています。著者らはこうした限界を挙げたうえで、糖尿病のある人では健康的な食事パターンに沿うことが、痛風の併存が少ないことと関連しうると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Xuelin He(Department of Nephrology, Beilun People's Hospital, Ningbo, China; Kidney Disease Center, the First Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, China)、Jiayan Zheng(State Key Laboratory for Diagnosis and Treatment of Infectious Diseases, the First Affiliated Hospital, College of Medicine, Zhejiang University, Hangzhou, China)、Leyan Zheng(State Key Laboratory for Diagnosis and Treatment of Infectious Diseases, the First Affiliated Hospital, College of Medicine, Zhejiang University, Hangzhou, China)、Guanghui Ying(Department of Nephrology, Beilun People's Hospital, Ningbo, China)、Min Xia(Department of Nephrology, Beilun People's Hospital, Ningbo, China)、Zhaogui Chen(Department of Nephrology, Beilun People's Hospital, Ningbo, China)、Qiao Zhang(Phase I Clinical Research Center, The First Affiliated Hospital of Zhejiang Chinese Medical University (Zhejiang Provincial Hospital of Traditional Chinese Medicine), Hangzhou, China)、Baode Chen(Department of Laboratory Medicine, Key Laboratory of Clinical In Vitro Diagnostic Techniques of Zhejiang Province, The First Affiliated Hospital, College of Medicine, Zhejiang University, Hangzhou, China)、Xia Liu(Institute for Intelligent Bio/ChemManufacturing (iBCM), Zhejiang University (ZJU)-Hangzhou Global Scientific and Technological Innovation Center, Hangzhou, China)、Yongtao Li(State Key Laboratory for Diagnosis and Treatment of Infectious Diseases, the First Affiliated Hospital, College of Medicine, Zhejiang University, Hangzhou, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xuelin He, Jiayan Zheng, Leyan Zheng, et al. Dietary patterns and odds of prevalent gout comorbidity in diabetes mellitus: a mediation analysis of glucose metabolism and renal function. Journal of Global Health 2026-10-30. DOI: 10.7189/jogh.16.04280. 原著ライセンス:CC BY.