著者の所属・活動拠点の国は、サウジアラビア、エジプトです。

掲載誌:Letters In Animal Biology

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の背景と目的

鶏肉の需要は世界的に伸びています。肉用鶏(ブロイラー)の生産では、かつて成長促進や病気予防のために少量の抗生物質を飼料に加えることが広く行われてきました。しかし薬剤耐性菌の問題や、残留物のない畜産物を求める消費者の声を受けて、多くの国でこうした使い方が禁止・制限されています。そのため、代わりとなる安全で持続可能な飼料添加物が求められており、香辛料やハーブ、植物抽出物など植物由来の素材が注目されています。

研究チームが取り上げたのは、スマック(学名 Rhus coriaria)の果実の粉末です。実験には食品用として市販されている粉末を使いました。著者らによると、少量のスマックは良い働きが期待されます。一方で、どの飼料原料に由来するものでも、タンニンを過剰に摂ると飼料中のたんぱく質やミネラルと結びつき、栄養の利用を妨げるおそれがあるという一般的な考え方も紹介しています。そのうえで著者らは、スマック粉末の配合量を段階的に変えれば、肉質、血液中のミネラル、腸の組織構造に用量による違いが表れるという仮説を立てました。最適な量は調べる項目ごとに異なるかもしれないと考え、これを実験で検証しました。

どのように調べたか

実験には、生後1日のブロイラー(Cobb-500という品種)300羽を使いました。ひなを無作為に5つのグループに分け、飼料1kgあたりスマック粉末を0g(対照)、1g、2g、3g、4g加えた餌を35日間与えました。各グループは60羽で、15羽ずつ4つの区画で飼育されています。期間中に死亡したり淘汰されたりした鶏はいなかったと報告されています。

飼育後、胸肉ともも肉についてさまざまな項目を調べました。まず、保水性と、保存中や加熱調理中に失われる重さの割合です(それぞれドリップロス、クッキングロスと呼びます)。さらにpH、脂質の酸化の程度、パネリストによる味や香りなどの官能評価も調べています。あわせて血清中のカルシウムとリンの濃度を測り、小腸のうち十二指腸と空腸の組織を顕微鏡で観察しました。腸の内側には、栄養を吸収する指のような突起「絨毛(じゅうもう)」と、その根元で新しい細胞をつくるくぼみ「陰窩(いんか)」があります。研究チームは、絨毛の長さと幅、陰窩の深さ、両者の比率、絨毛の表面積の目安となる指標などを測定しました。

主な結果

肉質では、もも肉のクッキングロス(加熱で失われる重さの割合)が、スマックの量が増えるにつれて段階的に小さくなりました。対照群の26.42%に対し、4g群では5.74%でした。3g群と4g群は、対照群より統計的に有意に低い値でした。一方、胸肉の保水性やクッキングロスなどには有意な差は見られませんでした。胸肉の脂質酸化の指標は1g群で数値上最も低かったものの、統計的な有意差には達していません。著者らも、この結果を過大に解釈すべきではないとしています。官能評価でも、胸肉・もも肉ともに明確な差は認められませんでした。

血清では、カルシウム濃度に有意な影響はありませんでした。リン濃度は2g群で最も高く(1デシリットルあたり6.20mg)、対照群(5.17mg)、1g群、4g群より有意に高い値でした。

著者らが最も一貫した結果として挙げたのは、腸の構造の変化です。十二指腸と空腸のいずれでも、1g群と2g群は対照群や3g・4g群に比べて絨毛が長く幅広く、陰窩は浅くなっていました。その結果、絨毛と陰窩の比率は、十二指腸で対照群の約1.4〜1.5倍、空腸では2倍以上になりました。空腸の値は、対照群の5.02に対して1g群で10.48、2g群で10.93でした。3g・4g群では、こうした変化は維持されませんでした。腸の筋肉層の厚さは、どのグループでも違いがありませんでした。

この研究が示すこと

研究チームによると、スマック粉末の効果は項目によって表れ方が異なり、すべての項目で最適となる単一の配合量はありませんでした。腸の構造は1〜2g/kgで最も好ましい変化を示し、それより多いと変化が鈍くなりました。一方、もも肉の加熱による損失は4g/kgまで量に応じて小さくなり、血清リンは2g/kgで最も高くなりました。著者らはこれらを踏まえ、スマック粉末は天然の飼料添加物の候補になりうるとしています。目安は、腸の構造に注目するなら1〜2g/kg、加熱時の歩留まりを重視するなら最大4g/kgまでです。

ただし著者らは、いくつかの点を断っています。まず、腸の構造の変化は一般に栄養を吸収しやすい状態と関連しますが、消化率や吸収の働きそのものは今回直接測っていません。また、肉質や血清の分析は各グループ3羽と少数でした。使ったスマック粉末のタンニン含量も測定していないため、タンニンによる説明はあくまで推測にとどまります。著者らはこれらを研究の限界として挙げています。この研究は、市販の食品用スマック粉末をごく少量飼料に加えたところ、ブロイラーの腸の構造などに違いが見られたことを報告したものです。著者らは、十分な規模で独立して行う追試による確認が必要だとしています。

原著論文の著者・所属:Wafi Al-Antaif(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Mohamed Marzok(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Mohamed El-Sherif(Department of Surgery, Faculty of Veterinary Medicine, New Valley University, El Kharga 72511, New Valley, Egypt)、Mohammed Al-Rasheed(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Mahmoud Mohamed(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Mohamed Ahmed(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Adel Almubarak(Department of Clinical Studies, College of Veterinary Medicine, King Faisal University, Al-Ahsa 31982, Saudi Arabia)、Nouran Ali(Department of Nutrition and Clinical Nutrition, Faculty of Veterinary Medicine, New Valley University, Al-Kharga 27511, Egypt)、Hala Amer(Department of Nutrition and Clinical Nutrition, Faculty of Veterinary Medicine, New Valley University, Al-Kharga 27511, Egypt)、Abeer Hassan(Department of Food Hygiene, Safety and Technology Department, Faculty of Veterinary Medicine, Assiut University, Assiut 71515, Egypt)、Ahmed Fotouh(Department of Pathology and Clinical Pathology, Faculty of Veterinary Medicine, New Valley University, Al-Kharga 27511, Egypt)、Ayman Salah(Department of Nutrition and Clinical Nutrition, Faculty of Veterinary Medicine, New Valley University, Al-Kharga 27511, Egypt)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wafi Al-Antaif, Mohamed Marzok, Mohamed El-Sherif, et al. Impact of dietary Rhus coriaria (Sumac) powder supplementation on meat quality, serum minerals, and intestinal histomorphology in Cobb-500 broiler chickens. Letters In Animal Biology 2026-09-10. DOI: 10.62310/liab.v6i1.421. 原著ライセンス:CC BY.