著者の所属・活動拠点の国は、クウェート、エジプト、台湾、サウジアラビアです。

掲載誌:Frontiers in Veterinary Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

肉用鶏(ブロイラー)の生産では、成長や飼料の利用効率、肉質を高めつつ、合成添加物への依存を減らすことが課題とされています。研究チームが注目したのは、ココアや茶、果物に多く含まれるポリフェノールの一種「エピカテキン」です。エピカテキンは強い抗酸化作用を持つ一方、水に溶けにくく、体内で分解されやすいため、効果を発揮しにくいという難点があると著者らは説明しています。

そこで研究チームは、界面活性剤とコレステロールで作る微小な袋状の粒子「ニオソーム」にエピカテキンを包み込み、飼料に加えました。著者らによると、ニオソームでエピカテキンを包んでブロイラーに与えた研究はこれまで報告されていません。本研究では、この添加が成長成績、抗酸化能力、酸化や免疫に関わる遺伝子の働き、肉質、生産の経済性にどのように影響するかを、一つの試験でまとめて調べました。

どのように調べたか

試験には、ふ化したばかりのロス308種のオスのひな200羽を用いました。ひなを無作為に4つの飼料群に分け、ニオソームに包んだエピカテキンを飼料1kgあたり0mg(対照群)、75mg、150mg、300mg含む飼料を与えました。各群は10羽ずつ5つの小群で構成されています。

飼育期間を通じて体重や飼料摂取量を記録し、飼料要求率を算出しました。飼料要求率は、体重を1kg増やすのに必要な飼料の量を示す指標で、値が小さいほど効率がよいことを意味します。さらに、胸肉の酸性度(pH)、肉汁や解凍時・加熱時の水分の減り方、肉の色を測定しました。

胸肉はマイナス20℃で冷凍し、30日後と90日後に抗酸化能力と酸化の進み具合を調べました。酸化の目安には、脂質が酸化してできるマロンジアルデヒド(MDA)、揮発性のアルデヒド類、コレステロールの酸化物などを用いています。あわせて、抗酸化酵素や免疫、腸の細胞どうしの結合、筋肉の発達、脂肪合成に関わる遺伝子の働き(mRNAの量)も測定しました。

主な結果

成長成績では、300mg群が対照群と比べて体重と増体量が大きく、飼料摂取量は少なく、飼料要求率は最も良好でした。添加量が増えるほど成績は改善しましたが、上限に近づくにつれて改善の幅は小さくなりました。統計モデルから、増体量が最大になる添加量は飼料1kgあたり約247mgと推定されました。ただし、これは実際に与えた量ではなく、計算上の予測値です。飼料要求率は試験した範囲全体で改善し続けており、実際に試した中では300mgが最も良い結果でした。

肉質では、添加群の胸肉はと畜後のpHが高く、酸性化が抑えられていました。300mg群では対照群より肉汁の流出(0.806%対1.016%)と解凍時の水分の減少(4.18%対4.64%)が少なく、加熱時の水分の減少も最も小さくなりました。一方、75mg群は加熱時の減少が対照群より大きく、150mg群は対照群と差がありませんでした。胸肉の赤みは添加量に応じて増し、300mg群で最も高くなりました。

冷凍保存した胸肉の抗酸化能力は、添加量が増えるほど高くなりました。総抗酸化能力は、300mg群が30日後に17.70、90日後に14.92(単位はμmol Trolox当量/g)で、対照群の7.81と5.40を上回りました。脂質の酸化の目安であるMDAは、300mg群では30日後に0.20μmol/kg(対照群0.51)、90日後に0.30μmol/kg(対照群0.91)にとどまりました。揮発性アルデヒド類やコレステロールの酸化物も、添加群で少なくなりました。なお、訓練を受けた評価者による官能評価では、90日間の冷凍保存を通じてどの群の肉にも変色や異臭は認められず、群のあいだに差はありませんでした。

遺伝子の働きを調べると、300mg群を中心に、抗酸化酵素に関わる遺伝子、腸の免疫を担う抗菌ペプチドの遺伝子、腸の細胞どうしの結合に関わる遺伝子、炎症を抑える物質の遺伝子の発現が高まっていました。筋肉の発達を促す遺伝子の発現は高まり、筋肉の成長を抑える遺伝子(MSTN)や脂肪合成に関わる遺伝子の発現は低下していました。

研究が示すこと

著者らは、ニオソームに包んだエピカテキンを飼料に加えることで、ブロイラーの抗酸化の働きが高まり、成長成績と肉質が向上し、冷凍保存中の脂質やコレステロールの酸化が抑えられたと結論づけています。添加量については、実際に試した中で最も成績のよかった飼料1kgあたり300mg付近が支持されるとしています。それを超える量での効果は計算上の予測にとどまり、実際に試して確かめる必要があるとも述べています。また、ニオソームで包むことが効果を高めたという仕組みは本研究で直接測ったものではなく、これまでの研究に基づく仮説であると著者らは明記しています。

本研究は、吸収されにくい天然の抗酸化成分を微小な粒子で包んで飼料に用いるという方法が、鶏の成長と、保存中の鶏肉の酸化の両方に関係しうることを、一つの試験で示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:H. S. Al-Khalaifah(Environment and Life Sciences Research Center, Kuwait Institute for Scientific Research)、Marwa I. Abd El-Hamid(Department of Microbiology, Faculty of Veterinary Medicine, Zagazig University)、Sara E. Shahin(Department of Animal Wealth Development, Veterinary Economics and Farm Management, Faculty of Veterinary Medicine, Zagazig University)、Aya M. Emam(Food Hygiene Department, Animal Health Research Institute (AHRI), Mansoura Branch, Agriculture Research Center (ARC))、Amal S. A. El Oksh(Department of Biotechnology, Reference Laboratory for Quality Control of Poultry Production (RLQP), Animal Health Research Institute (AHRI), Agriculture Research Center (ARC))、Marwa Samir(Biochemistry Department, Animal Health Research Institute (AHRI), Mansoura Branch, Agriculture Research Center (ARC))、Nour El-Hoda Khayrat Hammad(Department of Biochemistry, Animal Health Research Institute (AHRI), Mansoura Branch, Agriculture Research Center (ARC))、Samah A. M. Abou Shehatta(Agricultural Research Center, Department of Food Hygiene, Food Inspection Laboratory Damietta Port, Animal Health Research Institute)、Elham Elsayed Abo-Almagd(Department of Nutrition, Oncology Center Faculty of Medicine Mansoura University)、Dalia W. A. H. Elged(0Department of Toxicology and Biochemical, Zagazig Branch Animal Health Research Institute (AHRI) Agricultural Research Centre (ARC), Zagazig, Egypt)、Dalia Ibrahim Mohamed(Department of Biochemistry, Animal Health Research Institute, Zagazig Branch, Agriculture Research Center)、Wessam Youssef(Department of Biotechnology, Agriculture Research Center (ARC), Animal Health Research Institute (AHRI))、Sherief M. Abdel-Raheem(Department of Public Health, College of Veterinary Medicine, King Faisal University)、Doaa Ibrahim(Department of Nutrition and Clinical Nutrition, Faculty of Veterinary Medicine, Zagazig University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):H. S. Al-Khalaifah, Marwa I. Abd El-Hamid, Sara E. Shahin, et al. Mechanistic insights into niosomal epicatechin on nutritional value and functional quality of chicken meat and economics: monitoring color and oxidative stability for extended shelf life during frozen storage. Frontiers in Veterinary Science 2026-10-13. DOI: 10.3389/fvets.2026.1960674. 原著ライセンス:CC BY.