八百屋の店先で、葉先までぴんと張ったひと束を見つけたら、それが食べどきの合図です。モロヘイヤ(茎葉・生)は、緑があざやかでみずみずしく、茎がしっかりして弾力のあるものが良品とされます。葉や茎の切り口が黒ずんでいないかどうかも、鮮度を見分ける目印です。旬は7〜9月ごろ、群馬・三重・沖縄などが代表的な産地とされ、8月はちょうど盛りの時期にあたります。

この葉束が栄養で語られるとき、まず名前が挙がるのがβ-カロテンです。100gあたり10000µg。体内でビタミンAに変わる成分(プロビタミンA)で、緑の濃さがそのまま数字になったような値です。ほかの成分も並べてみると、一枚の葉に何層も重なっているのが見えてきます。

モロヘイヤ 茎葉 生 可食部100gあたり(基準は30〜49歳女性)
成分100gあたりめやす
β-カロテン10000µgほうれん草の4200µgのおよそ2倍
カルシウム260mgほうれん草の49mgの約5倍
ビタミンK640µg目安量150µg/日を大きく上回る
葉酸250µg推奨量240µg/日の104%
ビタミンC65mg推奨量100mg/日の65%
α-トコフェロール(ビタミンE)6.5mg目安量6mg/日をわずかに上回る

ビタミンKは正常な血液凝固を維持し、骨の形成にも関わる栄養素です。葉酸は核酸の生合成に関わり、赤血球の形成や胎児の発育に関わる栄養素とされます。ビタミンCは水に溶けやすく熱にも弱いので、買ってきたら新鮮なうちに手早く調理するのがこつになります。日本人の食事摂取基準と並べて眺めるほど、この葉物の層の厚さが際立ちます。

それでいてエネルギーは100gで36kcalと軽く、たんぱく質4.8g、食物繊維5.9g。1束の目安量が100gなので、表の数字はちょうどひと束ぶんの姿ということになります。なお、いずれも生の値です。ゆでたり炒めたりすれば、水に溶けやすいものは目減りします。

刻むと出る、もうひとつの表情

モロヘイヤの持ち味は、栄養の数字よりむしろ包丁を入れてから現れます。若い茎葉を細かく刻むと、まな板の上でとろりと粘りが立ってきます。オクラや納豆のとろみを思い浮かべる人も多いでしょう。さっと茹でて刻み、めんつゆをかけたり冷奴にのせたりすれば、暑い日でも箸が進む一品になります。

この粘りは加熱でも細断でも引き出されるので、スープの浮き実にしてとろみを活かす手もあります。刻むほど表情が変わる野菜ですから、仕上げに合わせて切り方を変えてみてください。数字が大きいから偉い、という話ではありません。ただ、夏の盛りに店先へ並ぶこの一束が、思っているよりずっと多くのものを抱えているのは確かです。今日いちばん緑の濃い束を選んで、粘りごと味わってみてください。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」(厚生労働省)