著者の所属・活動拠点の国は、タイ、イギリスです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

米は世界の人口の半分以上にとって主要な炭水化物とたんぱく質の供給源です。著者らによると、タイでは政府の備蓄から10年ほど前の古い米が大量に競売にかけられたことが話題になりました。こうした古米が精米したての米に混ぜられて売られると、消費者は気づかないまま品質の劣る米を買うおそれがあります。

米は保存中にたんぱく質の変性やでんぷんの老化、脂質の酸化が進み、硬くなる、色がくすむ、香りが弱まるといった変化が起こります。不適切な高温多湿の条件で保存されると、カビ毒を作るカビが増えるリスクも指摘されています。しかし、古米が新しい米に混ざっていても見た目では判別が難しく、化学分析や官能評価、クロマトグラフィーなど従来の方法は時間がかかり、試料を壊してしまうため、日常的な大量検査には向きません。

そこで研究チームは、試料を壊さずに素早く測定できる「近赤外ハイパースペクトルイメージング」を使い、精米したての米に古米が混ざっているかどうかを判別できるか、さらに混ざっている割合を推定できるかを調べました。

何をどう調べたか

試料には、タイの市場で購入した複数ブランドのジャスミン米の精白米が使われました。2025年に収穫・精米された米を「精米したての米」、2012年または2023年に収穫・精米され常温で保存されていた米を「古米」とし、古米の重量割合が1〜99%になるよう段階的に混ぜた試料を作りました。混合した試料はすべて「混ぜ物のある米」として扱われています。

まず両者の性質を比べたところ、色、たんぱく質量、水分量には統計的に意味のある差が見られた一方、水分活性、でんぷんの総量、アミロース量には差が見られませんでした。色の違いはわずかで、目で見分けられるものではなかったと報告されています。

ハイパースペクトルイメージングは、画像の1画素ごとに多数の波長の光の吸収具合を記録する技術です。研究では935〜1720ナノメートルの近赤外光で試料を撮影し、試料部分の画素の情報を平均して各試料の代表的な吸収パターン(スペクトル)としました。そのデータを統計的手法や機械学習で解析し、「精米したての米か、混ぜ物のある米か」を判定するモデルと、「古米が何%混ざっているか」を推定するモデルを作りました。モデル作りに使う試料とは別の試料で、性能を確かめています。

主な結果

精米したての米198試料と混ぜ物のある米234試料、計432試料を用いた判別では、部分最小二乗判別分析(PLS-DA)と呼ばれる手法が最も良い成績を示しました。検証用の試料に対して、全体の正解率は96.15%、混ぜ物のある米を正しく見つけた割合は92.86%、精米したての米を正しく精米したての米と判定した割合は100%でした。機械学習の一種であるサポートベクターマシンによる判別も正解率94.62%と近い成績でしたが、論文ではPLS-DAの方が優れていたとしています。

古米の混合割合の推定では、サポートベクターマシン回帰(SVMR)のモデルが最も良い成績を示しました。検証用の試料で、推定値と実際の値の一致度を表す決定係数は0.90、予測誤差(RMSEP)は9.10%と報告されています。

著者らは、判別や推定に大きく寄与した波長が、水分に関わるO-H結合や、たんぱく質に関わるN-H結合の吸収と対応していたことから、モデルが主に古米と新しい米の水分量やたんぱく質関連成分の違いをとらえていた可能性が高いと述べています。色の違いは主に可視光の範囲に現れるため、近赤外の測定への影響は小さかったと考えられています。

研究が示すこと

この研究は、見た目では区別しにくい古米の混入を、近赤外ハイパースペクトルイメージングによって試料を壊さずに見分け、混合割合もおおよそ推定できることを、研究で用いた条件のもとで示しました。著者らは、この結果が精米したての米の真正性を確かめる工業的な品質監視に、この技術を使える見込みを示すものだとまとめています。

原著論文の著者・所属:Saranya Workhwa(Udon Thani Rajabhat University)、Rachit Suwapanich(King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang)、Woranitta Sahachairungrueng(Khon Kaen University)、Anthony Keith Thompson(Cranfield University)、Sontisuk Teerachaichayut(King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Saranya Workhwa, Rachit Suwapanich, Woranitta Sahachairungrueng, et al. Near-Infrared Hyperspectral Imaging for Non-Destructive Detection of Old Rice in Freshly Milled Rice. Foods 2026-07-28. DOI: 10.3390/foods15152654. 原著ライセンス:CC BY.