著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ビタミンDは、筋肉の働き、カルシウムの調節、免疫、赤血球づくりなど、運動選手にとって重要な体の仕組みに関わっています。そのため、ビタミンDの状態が運動能力と関係しているという考え方には生物学的な裏付けがあります。ただし、サプリメントで補うことが筋力やパワーを直接高めるかどうかは、これまでの試験でも結果が一致していません。特に、もともと血中のビタミンD濃度が十分な選手ではその傾向があると研究チームは指摘しています。
サッカーでは、短いダッシュ、ジャンプ、キック、方向転換といった高強度の動きが繰り返されます。しかし、サッカー選手を対象としたビタミンD補給の研究は男子選手が中心で、女子プロ選手のデータは乏しいのが現状でした。そこで研究チームは、夏の終わりの時点で女子プロサッカー選手のビタミンD状態を調べるとともに、1日4000 IUのビタミンD3を8週間摂取した場合に、血中ビタミンD濃度やスプリント、ジャンプなどの成績が、偽薬(プラセボ)と比べてより改善するかを検証しました。
どのように調べたか
対象は、同じプロクラブに所属する女子サッカー選手18人です。北緯約50度の地域で、8月から9月にかけての秋季シーズンに向けた準備期間に試験が行われました。選手はくじ引きにあたる方法で9人ずつ2群に分けられ、一方はビタミンD3を4000 IU(100µg)含むカプセルを、もう一方は見た目が同じでオリーブオイルだけを含むカプセルを、毎日夕食後に1粒飲みました。選手も、測定や分析を担当する研究者も、誰がどちらを飲んでいるか分からない「二重盲検」という方式で行われ、全員が最後まで参加しました。期間中は全員が同じチームの練習プログラムに取り組みました。
試験の前後で、血液中のビタミンDの指標である25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の濃度、活性型ビタミンDの濃度、赤血球やヘモグロビン、白血球などの血液の値を測りました。運動能力としては、5mと30mのスプリント、30mダッシュを短い休息を挟んで6本繰り返す反復スプリントテスト、両脚と片脚の垂直跳び(反動をつけて跳ぶジャンプ)での跳躍高やパワーなどを測定しました。
主な結果
試験開始時、夏を過ごした後にもかかわらず、18人中4人(22.2%)は血中25(OH)D濃度が30 ng/mL以下でした。残る14人は30 ng/mLを超え50 ng/mL以下の範囲にあり、多くの選手はもともと十分とされる水準にありました。
8週間後の25(OH)D濃度の平均は、ビタミンD3群で36.7から37.4 ng/mLへ、プラセボ群で37.6から42.5 ng/mLへと変化し、両群の変化の違いは統計的に意味のある差ではありませんでした。赤血球数やヘモグロビン、白血球などの血液の値についても、群による違いは見られませんでした。
運動能力では、30mスプリント、反復スプリントの合計タイム、垂直跳びの高さなどが、時間の経過とともに改善しました。しかしこれらの改善は両群に共通しており、ビタミンD3群でより大きく伸びたという結果は得られませんでした。唯一、左脚の片脚ジャンプの高さで群による違いが統計的に示されましたが、多くの項目を調べた中の単独の結果であるため、著者らは探索的なものと位置づけ、サプリメント特有の効果の証拠とはみなしていません。
この研究が示すこと
著者らは、今回の条件では、1日4000 IUのビタミンD3を8週間摂取しても、プラセボと比べてスピードやパワーの上乗せの改善は見られなかったと結論づけています。期間中の成績の向上は、チーム共通の練習による適応で説明するほうが自然だと考えられています。
一方で、各群9人と規模が小さく、参加者の多くはもともとビタミンD濃度が十分だったことから、著者らはこの結果を「効果がないことの決定的な証拠」とは扱わないよう注意を促しています。夏の後でも一部の選手のビタミンD濃度が低かったことを踏まえ、研究チームは、すべての選手に一律で摂取量を増やすのではなく、定期的に血中濃度を確認し、不足が分かった選手に個別に補給する考え方を支持するとしています。
原著論文の著者・所属:Małgorzata Magdalena Michalczyk(Institute of Sport Sciences, The Jerzy Kukuczka Academy of Physical Education in Katowice, Mikolowska 72a, 40-065 Katowice, Poland)、Mariola Gepfert(Institute of Sport Sciences, The Jerzy Kukuczka Academy of Physical Education in Katowice, Mikolowska 72a, 40-065 Katowice, Poland)、Robert Roczniok(Institute of Sport Sciences, The Jerzy Kukuczka Academy of Physical Education in Katowice, Mikolowska 72a, 40-065 Katowice, Poland)、Grzegorz Zydek(Institute of Sport Sciences, The Jerzy Kukuczka Academy of Physical Education in Katowice, Mikolowska 72a, 40-065 Katowice, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Małgorzata Magdalena Michalczyk, Mariola Gepfert, Robert Roczniok, et al. Eight-Week Vitamin D3 Supplementation at 4000 IU/Day Was Not Associated with Further Improvements in Speed or Power Performance in Professional Female Soccer Players: A Randomized Controlled Trial. Nutrients 2026-07-28. DOI: 10.3390/nu18152460. 原著ライセンス:CC BY.