この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Plant Science Today

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜこの果実を調べたのか

インドネシア・中部ジャワやスマトラで栽培される低木の果実、Medinilla speciosa Blume(現地名パリジョト)は、東南アジア原産ながらほとんど産業利用されてこなかった熱帯果実です。伝統的には文化的・薬用的な目的で、とくに妊婦によって食されてきた経緯があり、これまでの予備的な植物化学スクリーニングでは、フラボノイド、タンニン、サポニン、アントシアニン、テルペノイドといった成分が含まれることが報告されています。

ただし研究チームによれば、この果実の物理化学的な性質や、有用成分をどれだけ取り出せるかという抽出効率についての体系的なデータは、これまでほとんど整備されていませんでした。果実の色や大きさ、一般成分組成といった基礎的な特性は、品質の評価や保存性、産業利用の可能性を判断する出発点になります。そこで著者らは、生果の物理化学的特性を測定し、あわせて超音波を用いた抽出法での収率を求めることを目的としました。研究の位置づけは、今後の研究の土台となる「基礎データ(ベースライン)」の提供です。

何をどう測ったか

材料は、中部ジャワ州クドゥス県コロで採取された赤紫色の果実で、大学の研究室で同定が行われました。果実は小・中・大の3つのサイズに分けられ、それぞれについて測定が進められています。

色は色差計を用いてCIE Lab*という国際的な表色系で測りました。L*は明るさ、a*は赤み(プラス)と緑み(マイナス)、b*は黄み(プラス)と青み(マイナス)を表す数値です。ここから「色相角(hue angle)」という、色の位置を角度で表す指標が計算されます。0度(=360度)が最も赤く、90度が黄、180度が緑、270度が青に対応します。さらに色相角から、色の発達の度合いを0から1の範囲で示すCDI(colour development index、色彩発達指数)が算出されました。CDIが高いほど赤みが強いことを意味し、果実の成熟度の目安として使われる指標です。大きさについては、3つのサイズ区分から各10個、合計30個の果実の横径と縦径をデジタルノギスで測定しました。

成分については、一般成分分析(水分、灰分、脂質、タンパク質、炭水化物)が3回ずつ行われました。抽出の前処理として、果実を4つに切って冷凍したのち、−40度の凍結乾燥機で36時間乾燥させ、粉末にしています。凍結乾燥は、熱に弱いフェノール類やフラボノイドなどの成分を壊しにくい乾燥法として選ばれました。抽出には超音波抽出法(UAE)が用いられています。これは超音波によって生じる微細な気泡の発生と崩壊(キャビテーション)で細胞壁を壊し、内部の成分を溶け出しやすくする手法で、加熱による分解を避けながら効率よく抽出できるとされる方法です。粉末とメタノールを1対20の比率で混ぜ、40キロヘルツの超音波を室温で60分かけ、ろ過したのちロータリーエバポレーターで濃縮しました。

報告された主な結果

色の測定では、果実が小さいものほど明るく赤みが強く、大きくなるにつれて暗く、赤みが弱まり、青みが増す傾向が示されました。小サイズはL*が30.12、a*が19.31、b*が−1.73、大サイズはL*が24.17、a*が12.71、b*が−3.95でした。色相角はすべてのサイズで342.7度から354.9度の範囲に収まり、果実は一貫して赤〜マゼンタの領域にあると報告されています。CDIは0.904から0.972の範囲で、果実が大きくなるほど低下しました。著者らはこれを、大きな果実では青み成分の寄与が増すため、鮮やかな赤というより深い赤紫の外観になるためだと説明しています。なお論文では、アントシアニン含量や抗酸化能そのものは本研究では測定していないと明記されており、色と色素成分の関係は既報の知見を参照した考察にとどまります。

大きさは、平均直径が小サイズの6.55ミリメートルから大サイズの8.78ミリメートルまで有意に増加しました。小さい果実は横径より縦径がやや大きく細長い楕円形、中・大サイズはほぼ球形に近い形状でした。この寸法は、ブルーベリーやマルベリーといった小型のベリー類の範囲と一致すると述べられています。

一般成分分析では、水分が90.67%と非常に高く、水分に富んだ熱帯ベリーの特徴と一致していました。灰分は4.24%、粗脂肪は3.95%で、著者らはこれをいずれも一般的な果実と比べて高い水準だとしています。灰分は総ミネラル量の目安となる指標で、脂質については多くの果実が1%未満であることを踏まえ、脂溶性の成分を含む可能性を示すものと位置づけられました。ただし個々のミネラル成分の分析は行われていません。一方、粗タンパク質は0.72%、炭水化物は0.42%と低く、この果実がエネルギー源としての性格は薄いことを示しています。

凍結乾燥では、湿重量19.39グラムに対し凍結重量19.26グラムとほぼ変化がなく、乾燥後の重量は1.69グラムでした。そして本題の超音波抽出では、乾燥重量基準で14.95%の収率が得られました。論文はこの値を、他の溶媒や手法でM. speciosaを抽出した際に報告されている平均的な収率より8〜10%高いとしています。ただし著者ら自身が、本研究では従来法との直接比較を実施していないため、超音波抽出の相対的な効率については今後の検証が必要だと述べています。

この報告が示すこと

この研究が届けているのは、これまで断片的にしか知られていなかった果実について、色・形・成分・抽出収率という基本的な数値を一式そろえた記録です。著者らは、水分が多く傷みやすい一方で、ミネラルの目安となる灰分と脂質が果実としては高いという組み合わせを、この果実の特徴として描き出しました。

同時に論文は、自らの範囲を明確に限っています。どのような生理活性成分が含まれるのか、それらが実際にどんな働きを持つのかは本研究では調べておらず、色の濃さと抗酸化能の関係も測定されていません。つまりここで示されたのは結論ではなく、その先の研究が立つための足場です。地域で長く食されてきた果実に、比較可能な数値の裏づけが与えられたこと——それがこの報告のもっとも確かな成果だといえます。

著者:Ratih Paramastuti(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)、Yasmin Aulia Rachma(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)、H R Surya(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)、A R H Dina(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)、A T G Zefanya(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)、Lutfi Purwitasari(Department of Food Technology, Faculty of Animal and Agricultural Sciences, Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ratih Paramastuti, Yasmin Aulia Rachma, H R Surya, et al. Evaluation of physicochemical characteristics and ultrasound-assisted extraction of Medinilla speciosa Blume fruit. Plant Science Today 2026-09-15. DOI: 10.14719/pst.14375. 原著ライセンス:CC BY.