9月、早いみかんが店先に顔を出し始める時期です。本格的な旬は冬で、いまはその走りにあたります。収穫量では和歌山が最も多く、2024年産で25.5%のシェアを誇ります。さて、みかんを食べるとき、あなたは薄皮の袋ごと口に入れる派ですか。それとも、ひと房ずつむいてから食べる派でしょうか。
一房には、薄皮の袋と、その中に詰まった果肉の粒があります。成分表にはこの一房を二通りに測っていて、袋ごとを「じょうのう」、袋をはずした粒だけを「砂じょう」として表示しています。ここで見るのは、早生に対して「普通」と区分される冬の主力のみかん、うんしゅうみかん(じょうのう・普通・生)の値です。外の皮が手でむけて、袋ごと食べられるのが持ち味です。むく派とむかない派の違いを、この二つの欄から紐解いてみます。
むくと、変わるもの
じょうのうの可食部100gあたりは、エネルギー49kcal、しょ糖5.3g、果糖1.9g、ぶどう糖1.7gです。薄皮をはずした砂じょうも49kcalで、しょ糖は5.6gです。甘さのもとは、むいてもそのまま残ります。ビタミンCも32mgと33mgで、動きません。
みかんのオレンジ色はβ-クリプトキサンチンという色素によるものとされます。この色素は体内でビタミンAに変わる成分の一つで、じょうのうに1700µg、砂じょうに1800µgあります。β-カロテンも180µgと190µgで、ほぼ同じです。色は果肉の粒の側にあるので、薄皮をむいても皿の上のみかんは同じ色をしています。つまり、薄皮をむいても、甘さと色と、たっぷりのビタミンCはそのまま口に入ります。
薄皮は食物繊維
変わるのは食物繊維総量です。同じ100gで比べると、袋ごとの1.0gが、粒だけでは0.4gになります。水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も、0.5gから0.2gへと同じように減ります。袋をはずすと、繊維は半分以下になります。カルシウムも21mgから15mgへ下がります。
成分表の全部の欄を並べても、目立って減るのはこの二つです。マグネシウムや鉄、ビタミンB1などは最小の桁がわずかに動く程度で、糖と色素はわずかに多い側に出ます。量としては、どれも小さな差です。食物繊維の1日の目標量は食事摂取基準で成人女性18g、男性22gですから、0.6gの差で献立が変わるわけではありません。それでも、一房の繊維の多くとカルシウムの一部は、指ではがしたあの袋の側にあると読めます。むく人は毎回、それを皿の脇に置いています。
缶詰とジュースまで進むと
薄皮をはずすのは、みかんから繊維を外していく最初の一歩です。その先を成分表でたどると、砂じょうを糖液に漬けた缶詰の果肉でも、食物繊維は0.5gと案外残っています。搾ったストレートジュースで、初めて0gになります。ビタミンCは缶詰で半分以下の15mgに減り、ジュースには29mg残ります。食物繊維は、袋をはずしただけなら繊維は4割ほど残り、ストレートジュースではゼロになります。
| 成分 | じょうのう(袋ごと) | 砂じょう(粒だけ) | 缶詰 果肉 | ストレートジュース |
|---|---|---|---|---|
| 食物繊維総量 | 1.0g | 0.4g | 0.5g | 0g |
| カルシウム | 21mg | 15mg | 8mg | 8mg |
| ビタミンC | 32mg | 33mg | 15mg | 29mg |
| β-クリプトキサンチン | 1700µg | 1800µg | 640µg | 740µg |
| エネルギー | 49kcal | 49kcal | 63kcal | 45kcal |
お好みで味わうみかんの楽しみ
むく派とむかない派の違いを数字で言えば、袋の側にあった食物繊維と、少しのカルシウムです。甘さも、色も、ビタミンCも変わらない。繊維も摂りたい日は、袋ごと食べれば良いですね。搾らない限り、ゼロにはなりません。
和歌山のみかん栽培は、天正2年(1574年)に伊藤孫右衛門という人物が肥後八代から苗木を持ち帰って有田に植えたのが始まりだと言われています。以来、色づいたみかんは日本の秋冬を彩る欠かせない存在となりました。
産地や風味、これからが旬の季節です。楽しみが増えますよね。ですが、「今日は少しでも繊維を摂りたいな」という日は、袋ごと口に放り込んでみてください。
箱いっぱいのみかんが台所に届くご家庭もあるでしょう。スーパーの一角にネットで入ったみかんも目にする機会も増えてくるこの時期、今年はどんなふうに味わいたいですか?
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・産地・郷土の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・農林水産省 作物統計・農林水産省 うちの郷土料理