著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

茶の加工でできる「テアニンと糖の結合物」に注目

L-テアニンは茶に特有のアミノ酸で、茶に含まれる遊離アミノ酸の半分以上を占めます。茶のうま味に関わるだけでなく、これまでの研究で神経の働きの調節や血圧を下げる作用など、さまざまな生理的な働きが報告されてきました。

茶葉は加工の過程で加熱や乾燥を受けます。このときテアニンはブドウ糖などの糖と反応し、「アマドリ化合物」と呼ばれる物質に変わります。アマドリ化合物は、食品を加熱したときに色や香りが生まれる「メイラード反応」の初期にできる物質です。テアニンからできるアマドリ化合物は「Fru-The」と呼ばれ、緑茶、白茶、紅茶、黄茶、黒茶、ウーロン茶の六つの茶類すべてで見つかっています。

研究チームは以前、ヒスチジンやグリシンといったアミノ酸がアマドリ化合物に変わると、元のアミノ酸より抗酸化作用などが強まることを報告していました。ただし、テアニンのようにたんぱく質の材料にならない特殊なアミノ酸について、同じことが起こるかはほとんど調べられていませんでした。そこで本研究では、Fru-Theを合成し、元のテアニンと働きを比べました。

Fru-Theをつくり、二つの働きを比較

研究チームは、テアニンとブドウ糖を減圧下で加熱して水分を飛ばす方法でFru-Theを合成しました。続いて、得られた物質を精製し、分析機器で目的の物質であることを確かめました。

比較したのは二つの働きです。一つは抗酸化作用で、物質が酸化を引き起こす分子をどれだけ抑えられるかを4種類の試験で測りました。もう一つは「ACE」という酵素の働きを抑える作用です。ACEは、体内で血管を縮めて血圧を上げる物質をつくる酵素です。そのため、ACEを抑える物質は血圧に関わる研究で注目されています。

さらに、Fru-TheがACEとどのように結びつくかも調べました。酵素が発する光の変化の測定、酵素の立体構造の変化の分析、コンピューター上で結合の様子を予測する「分子ドッキング」を組み合わせています。

抗酸化作用もACE阻害作用もFru-Theが上回った

抗酸化作用の試験では、4種類すべてでFru-Theがテアニンを上回りました。テアニンは濃度を上げても作用がほとんど変わりませんでした。一方、Fru-Theは濃度が高いほど作用が強くなりました。たとえば、鉄イオンを還元する力を測る試験では、2ミリモル濃度でFru-Theの値がテアニンの2.44倍でした。また、非常に反応性の高い「ヒドロキシルラジカル」を消す力も、Fru-Theのほうがはっきり強く現れました。ただし、DPPHという試薬を使う試験では、Fru-Theの改善はわずかで、全体として低い水準にとどまりました。

ACEに対する試験では、Fru-Theは濃度が上がるにつれて酵素の働きをより強く抑えました。酵素の働きを半分に抑える濃度は約1.4ミリモルでした。これに対し、テアニンは10ミリモルでも13%ほどしか抑えませんでした。

結合の仕組みを調べた分析では、Fru-TheがACEと自然に結びつくことが示されました。その結びつきは、体温に近い37℃で最も強くなりました。また、Fru-Theが加わるとACEの立体構造が大きく変わることも観察されました。コンピューター上の予測では、Fru-TheはACEの中で物質が反応する部位のアミノ酸や、その中心にある亜鉛イオンと結合し得る形をとりました。テアニンよりも結びつきやすいと見積もられ、実験の結果と一致していました。

茶の加工で働きを高める手がかり

この研究は、茶の加工中に自然に生じる反応によってテアニンがFru-Theに変わると、試験管内での抗酸化作用やACE阻害作用が高まることを示しました。著者らは、この結果が茶の加工を通じて機能性を高めるための基礎になるとしています。

ただし、これらはすべて試験管内やコンピューター上での結果です。著者ら自身も、消化や吸収、安全性、体内でのACE阻害、血圧への影響などはまだ確かめられていないと述べています。

原著論文の著者・所属:Fan Li(College of Biological and Food Engineering, Anhui Polytechnic University, Wuhu 241000, China)、Jiao Zhou(College of Biological and Food Engineering, Anhui Polytechnic University, Wuhu 241000, China)、Minmin Zhang(Wuhu Food and Drug Inspection Center, Wuhu 241000, China)、Guoqiang Zhang(College of Biological and Food Engineering, Anhui Polytechnic University, Wuhu 241000, China)、Wenting Sun(College of Biological and Food Engineering, Anhui Polytechnic University, Wuhu 241000, China)、Huifang Ge(National Key Laboratory for Tea Plant Germplasm Innovation and Resource Utilization, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Renjie Zhou(College of Biological and Food Engineering, Anhui Polytechnic University, Wuhu 241000, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fan Li, Jiao Zhou, Minmin Zhang, et al. Enhanced Antioxidant and ACE-Inhibitory Activities of L-Theanine Following Formation of the Amadori Compound N-(1-Deoxy-D-Fructose-1-yl)-L-Theanine (Fru-The). Foods 2026-10-10. DOI: 10.3390/foods15203601. 原著ライセンス:CC BY.