著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Current Biochemistry
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肥満は、体格指数(BMI)が30を超えることを特徴とする代謝の異常で、2型糖尿病、脳卒中、心血管疾患などのリスク上昇と関連するとされています。食事中の脂肪は、膵臓から分泌される「膵リパーゼ」という酵素によって分解され、体に吸収されます。この酵素の働きを抑えれば脂肪の吸収を減らせるため、膵リパーゼは肥満対策の主要な標的の一つです。この酵素を阻害する医薬品としてオルリスタットが使われていますが、長期使用では脂肪便、下痢、腹痛などの副作用が報告されており、植物由来の候補を探す研究が注目されています。
研究チームが注目したのは、バンレイシ(シュガーアップル、Annona squamosa)の葉とモリンガ(Moringa oleifera)の葉です。どちらも先行研究で肥満対策に関わる可能性が報告されてきた薬用植物です。複数の植物抽出物を組み合わせると、単独で使うより強い作用(相乗効果)が得られる場合があることから、著者らは両者の抽出物を混ぜたときに、膵リパーゼ阻害作用や抗酸化能がどう変わるかを評価することを目的としました。
何を調べたか
研究チームは、乾燥させて粉末にした2種類の葉を70%エタノールに浸し、超音波をあてて成分を抽出しました。得られた抽出物を、バンレイシ単独、モリンガ単独のほか、バンレイシとモリンガの比率を3対1、2対1、1対1、1対2、1対3とした組み合わせで用意し、いずれも同じ濃度(1ミリリットルあたり1ミリグラム)にそろえて比較しました。
調べた項目は大きく三つです。一つ目は、植物に含まれる代表的な成分群であるフェノール類(総フェノール量)とフラボノイド類(総フラボノイド量)の量です。二つ目は抗酸化能で、不安定な分子(フリーラジカル)を消す力をみるDPPH法と、鉄イオンを還元する力をみるFRAP法という性質の異なる二つの試験で測りました。三つ目が、試験管内で膵リパーゼの働きをどれだけ抑えるかという阻害率で、比較対象として医薬品のオルリスタットも測定しました。さらに、これらの値の間にどの程度の関連があるかを統計的に分析しました。
主な結果
論文によると、すべての測定項目で最も高い値を示したのはバンレイシの葉の単独抽出物でした。抽出物1グラムあたりの総フェノール量は95.15ミリグラム(没食子酸換算)、総フラボノイド量は47.57ミリグラム(ケルセチン換算)、抗酸化能はDPPH法で395.10ミリグラム、FRAP法で476.30ミリグラム(いずれもトロロックス換算)でした。膵リパーゼの阻害率は64.15%でした。一方、モリンガの葉の単独抽出物は、抗酸化能と膵リパーゼ阻害率(42.36%)で最も低い値でした。混合物では、バンレイシの割合が増えるほど値がおおむね高まる傾向が報告されています。
組み合わせの効果は項目によって異なりました。著者らは、DPPH法による抗酸化能と膵リパーゼ阻害については相乗効果がみられた一方、総フェノール量、総フラボノイド量、FRAP法による抗酸化能については、組み合わせると打ち消し合う方向(拮抗的)の傾向があったと報告しています。混合物の中で膵リパーゼ阻害率が最も高かったのは1対1の組み合わせで、61.99%でした。ただし、いずれの抽出物もオルリスタット(88.08%)より阻害率は低い結果でした。
関連の分析では、DPPH法とFRAP法による抗酸化能がそれぞれ膵リパーゼ阻害率と統計的に有意な正の相関を示しました。これに対して、総フェノール量や総フラボノイド量と阻害率の相関は正の方向ではあったものの、有意ではありませんでした。著者らはこの結果から、膵リパーゼ阻害には特定の成分群の総量だけでなく、複数の成分とその相互作用が関わっている可能性を指摘しています。
この研究が示すこと
この研究は、試験管内の実験として、今回調べた抽出物の中でバンレイシの葉の単独抽出物が最も高い抗酸化能と膵リパーゼ阻害作用を示したこと、そしてモリンガの葉と組み合わせた場合の影響は測定項目によって相乗的にも拮抗的にもなりうることを報告しています。また、抗酸化能と酵素阻害の強さの間に相関がみられたことから、著者らは抽出物の働きに複数の成分が関わっている可能性を示唆しています。これらは酵素を用いた実験室での結果であり、植物抽出物の組み合わせを考えるうえでの基礎的な知見といえます。
原著論文の著者・所属:Elramda Nafis Zada(Department of Biochemistry, IPB University, Bogor, 16680, Indonesia)、Hasim(Department of Biochemistry, IPB University, Bogor, 16680, Indonesia)、Didah Nur Faridah(Department of Biochemistry, IPB University, Bogor, 16680, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Elramda Nafis Zada, Hasim, Didah Nur Faridah Potential Combination of Annona squamosa Leaves and Moringa oleifera Leaves as Pancreatic Lipase Inhibitor. Current Biochemistry 2026-10-22. DOI: 10.29244/cb.13.2.74089. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。