著者の所属・活動拠点の国は、コートジボワール、セネガルです。
掲載誌:American Journal of Food and Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ブラックベルベットタマリンド(学名ディアリウム・ギネエンセ)は、西アフリカの森林に自生するマメ科の樹木です。コートジボワール北部のコロゴでは、その果実が季節ごとに盛んに採取されて市場で売られ、農村の人々にとって重要な収入源になっています。地元ではお菓子や伝統的な飲み物として親しまれていますが、収穫後に傷みやすく、工業的な加工はほとんど行われていません。
果肉の全体的な成分はある程度知られているものの、粉末にしたときに食品の原料としてどのように振る舞うかについてのデータは限られていました。そこで研究チームは、コロゴの市場で売られている熟した果実の果肉について、栄養成分を詳しく調べるとともに、食品加工に関わる性質(技術的機能特性)を評価しました。
何をどう調べたか
研究チームは2026年6月、コロゴ市内の三つの市場で、それぞれ無作為に選んだ3人の卸売業者から、傷みのない熟した果実を1キログラムずつ購入しました。果肉を種から外して室温で3日間乾燥させ、すりつぶしてふるいにかけ、粉末にしました。
この粉末について、色、酸の強さ(pHと、酸の量を示す滴定酸度)、水分、糖、灰分(燃やした後に残る無機物の量)とミネラル、たんぱく質、脂質、繊維、ポリフェノール類、ビタミンAとCなどを測定しました。さらに、粉末が水や油をどれだけ抱え込むか(吸水性・吸油性)や、水を吸ってどれだけ膨らむか(膨潤性)といった、食品の食感や安定性に関わる性質も測りました。三つの市場の試料の間に差があるかどうかも統計的に比べています。
主な結果
論文によると、果肉は強い酸性で、pHは3.25〜3.40、滴定酸度は100グラムあたり2.13〜3.17グラムでした。水分は約16.7〜18.7%と少なく、糖は乾燥重量100グラムあたり33.17〜36.93グラムと豊富でした。糖全体に占める還元糖(単純な糖のなかま)の割合は60〜75%で、単純な糖が糖の大部分を占めると報告されています。ただし、還元糖はまとめて量を測ったもので、個々の糖の種類までは調べられていません。計算上の炭水化物は乾燥重量の92%を超えていた一方、たんぱく質と脂質はわずかでした。
ミネラルではカリウムが最も多く(1キログラムあたり約495〜576ミリグラム)、カルシウム(約82〜84ミリグラム)、鉄(約30〜66ミリグラム)などが続きました。ビタミンCは100グラムあたり8.33〜10.00ミリグラムで、市場間に統計的な差は見られませんでした。ポリフェノール類やフラボノイド類は、三つの市場のうち「グラン・マルシェ」の試料で最も多く含まれていました。
粉末の性質については、吸水性が1グラムあたり1.76〜1.91グラム、吸油性が2.16〜2.78グラム、膨潤性が27.10〜31.13%と報告されました。また、pHと還元糖などを除くほとんどの項目で市場による差が見られ、著者らは産地や収穫時の熟度、売り場での扱い方の違いなどが影響している可能性を挙げています。
研究が示すこと
著者らは、この果肉が糖やミネラルを含む栄養源として微量栄養素の不足に対処するうえで役立ちうると考えています。また、油を抱え込む力や膨らむ力が高いことから、食品の乳化を安定させたり、焼き菓子のやわらかさを保ったり、なめらかさを高めたりする素材として、水となじみやすい性質は生地の水分調整に使える可能性があると論じています。ただし今回の研究は粉末の性質を測定したもので、実際の食品に配合して確かめた結果ではありません。
身近に売られている野生果実の成分と加工特性を具体的な数値で示したことは、地域の資源を地元の食品づくりに活かす道を考えるための基礎データになるといえます。
原著論文の著者・所属:Haffiata KONÉ-SORO(Institut de Gestion Agropastorale , Université Peleforo GON COULIBALY , Korhogo , Côte)、Monty Abibata CAMARA(Institut de Gestion Agropastorale , Université Peleforo GON COULIBALY , Korhogo , Côte)、Yves Bléouh Jean NYAMIEN(Institut de Gestion Agropastorale, Université Peleforo GON COULIBALY, Korhogo, Côte d’Ivoire)、Kisselmina Youssouf KONE(Départment Génie Chimique et Agroalimentaire , Institut National Polytechnique Félix Houphouët-Boigny , Yamoussoukro , Côte)、Mady CISSE('Ivoire; Départment Génie Chimique et Biologie Appliquée , Université Cheikh Anta Diop , Dakar , Sénégal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haffiata KONÉ-SORO, Monty Abibata CAMARA, Yves Bléouh Jean NYAMIEN, et al. Physicochemical, Nutritional Characterisation and Technofunctional Properties of Ripe Black Velvet Tamarind (Dialium guineense Willd) Pulp Marketed in Korhogo, Côte d’Ivoire. American Journal of Food and Nutrition 2026-10-19. DOI: 10.12691/ajfn-14-4-3. 原著ライセンス:CC BY.