著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Abdi Masyarakat Indonesia

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

活動のねらい

インドネシアでは、子どもの発育不全(スタンティング)がいまも大きな公衆衛生上の課題とされています。論文は、その背景として栄養摂取の不足、とくに動物性たんぱく質や微量栄養素の不足が関わっていると述べています。著者らが用いた国の資料では、2024年のインドネシアのスタンティングの有病率は19.8%と報告されています。

研究チームが活動の場としたのは、北スマトラ州ランカット県スタバット郡クワラ・ビンガイ地区です。この地域には、魚のグルクマ(サバの仲間、学名Rastrelliger属)とモリンガ(ワサビノキ)の葉という身近な食材があります。しかし、どちらも栄養のある食品としては十分に活用されていないと著者らは指摘しています。論文によると、この二つの食材は、関係者との話し合いを通じて「よく知られ、研修のために手に入る食材」として選ばれました。地域での生産量や流通量は、今回の活動では調べていません。

この活動は、地域の家庭福祉向上グループ(PKK)のメンバーを対象とした社会貢献活動です。目的は、グルクマとモリンガの葉を使って幼児向けの栄養あるおやつ「スティック」を作ることを通じて、参加者の知識と実践的な技能を高めることでした。具体的には、幼児の栄養や動物性たんぱく質、二つの食材の活用法についての知識を深めること、材料の準備から揚げ、包装までを実際に体験すること、包装とラベル表示の基本を知ることの三つが掲げられています。論文は、この取り組みが臨床的な効果を検証する研究ではなく、幼児の栄養状態の変化も評価していないことを明記しています。

どのように進めたか

活動は2026年7月1日の午前から昼過ぎにかけて行われ、グループのメンバー30人が参加しました。進め方には「参加型学習と行動(Participatory Learning and Action)」という手法が使われました。これは、参加者が説明を聞くだけでなく、自分の手で取り組みながら学ぶことを重視するやり方です。

当日の流れは次のとおりです。まず事前テストに答えてもらい、幼児の栄養と栄養問題の予防について対話形式の講義を行いました。続いて講師がスティックの作り方を実演し、参加者がグループに分かれてチームの支援を受けながら実習しました。実習では、材料の準備、魚の下処理、生地づくり、モリンガの葉の追加、スティックの成形、揚げの工程を行いました。最後に、できた製品を食品用の容器に詰めてラベルを貼り、話し合いと事後テストで締めくくりました。

知識の測定には、チームが講義内容をもとに作った20問の選択式質問票を使いました。1問正解ごとに1点で、満点は20点です。同じ質問票を活動の前後に使い、点数の変化を比べました。著者らは、この質問票が正式な妥当性・信頼性の検証を経た測定道具ではないことも断っています。調理の技能については、実習中の様子を観察記録で確認しました。

主な結果

論文によると、参加者30人の知識テストの平均点は、活動前の13.07点から活動後の18.90点に上がりました。上昇幅は5.83点です。これは活動前の平均点を基準にすると44.6%の伸びにあたります。著者らは、この44.6%が「満点に対する到達率」ではなく、「最初の平均点に対する増加の割合」であることを強調しています。

実習では、参加者が材料の準備、生地づくり、スティックの成形、揚げ、包装という主な工程に、チームの支援を受けながら取り組んだことが観察されました。活動の成果として、包装されたグルクマとモリンガの葉のスティックが実際に出来上がっています。ただし、技能は一人ひとりの点数としては記録されていません。そのため論文は、技能がどれだけ向上したかを数値では示しておらず、参加者全員が支援なしで作れるようになったとも結論づけていません。

著者らは、結果の解釈に限りがあることも詳しく述べています。評価は1回の活動の前後で比べたもので、比較のための別のグループは設けていません。そのため、点数の上昇は活動直後の知識の変化を示すものであり、長期的な行動の変化を示すものではないとしています。また、作ったスティックの栄養成分は検査されておらず、幼児が好んで食べるかどうかの試食評価も行われていません。包装やラベル表示は学習の一環として扱われたもので、販売価格や売上などの経済的な効果も評価されていません。

この報告が示すこと

この報告は、身近な食材を題材に、栄養の講義と実演・調理実習を組み合わせた1日の取り組みを記録したものです。その中で、参加者の知識テストの点数が上がり、グループで製品づくりを体験できたことが示されました。著者らは、こうした組み合わせが、幼児の栄養に向けた食品加工について参加者の知識と技能を高めうると述べています。同時に、得られた結果はあくまで活動の学習成果の目安であり、スタンティングの予防や栄養状態の改善を直接示すものではないという線引きもはっきり示しています。

原著論文の著者・所属:Reisy Tane(Program Studi Magister Keperawatan, Fakultas Keperawatan, Universitas Sumatera Utara, Indonesia)、Nur Ulina Warnisyah Sebayang(Program Studi Agribisnis, Fakultas Pertanian, Universitas Sumatera Utara, Indonesia)、Hizkianta Sembiring(Program Studi Ilmu Keperawatan, Fakultas Keperawatan, Universitas Murni Teguh, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Reisy Tane, Nur Ulina Warnisyah Sebayang, Hizkianta Sembiring. Optimalisasi Gizi Balita melalui Diversifikasi Pangan Lokal: Edukasi, Pelatihan Produksi, Pengemasan, dan Pelabelan Stik Ikan Kembung Daun Kelor pada Kelompok Pemberdayaan dan Kesejahteraan Keluarga di Kelurahan Kwala Bingai, Kecamatan Stabat, Kabupaten Langkat, Sumatera Utara. Jurnal Abdi Masyarakat Indonesia 2026-09-09. DOI: 10.54082/jamsi.3232. 原著ライセンス:CC BY.